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魔導生物技術研究所


「え、昼ちょっと過ぎたくらいだってのに、もうすぐ着くのか。朝早くに出たってのもあるけど、順調だったな」


「そりゃあね、探索を魔法と魔導具の両方で念入りにやりながら来たし、数は少なかったけど近寄る魔獣は全部ユージ君が遠距離で倒しちゃうんだもん、順調にもなって当然だよ」



 今朝早くにナーキスを出発したオレ達は、間にちょいちょい休憩を挟んでたんだけど、それでも昼過ぎには領都に近いティトールの街の、すぐ手前まで来ていた。


 ここに来るまで、魔導レーダーユニットの実働試験は何も問題無し、工夫を凝らしたおかげで魔力消費は予想してたより更に少なくて、オレもトリィもルーナも大成功だって大喜びしたんだ。



 んで今は、オレとルーナとエリナ騎、そしてアリスにハウザーさんとイレーヌさんにミトリエの、合計七人と一騎だけ街道の途中で別れて、アリスが普段住んでるとこに向かってる。


 まぁ、ここまで順調だったんだし戦力バランス的には、エリナもトリィの方に行ってほしかったんだけど、一騎くらいは直掩に付けとくべきだって、オレの能力を知ってもトリィがそう主張したんだよ。



 そうそう、せっかく友達になったんだからって、昨日の夕飯後にトリィとロレットさんにはこっそり身バレしといた。


 しっかり防音された代官屋敷の執務室でなきゃ、何事だって外から衛兵さんが飛び込んで来そうなくらい、大声でビックリしてたのが面白かったって思ったのは、二人にゃ内緒だ。


 それからはもう大興奮の質問責めで、あんまり夜遅くなると明日に響くからって短く話を切り上げたけど、ロレットさんにはあっちの世界での植物とか農業の話を、トリィにはもちろん科学技術で造られたロボットとかの話をして、かなり喜ばれた。



 だもんで出発前はロレットさんが盛大に嘆いてたし、ついさっき他のみんなと別れる前にもトリィがものスゴく残念がってたよ。



「それで、あの街から少し離れたとこに建ってるのが、“魔導生物技術研究所”なんだよね」


「あぁ、そう聞いてるぜ。でも大げさな名前の建物なのに、誰も中に居ないなんて妙だな」


「誰も居ないって、ここ研究所なんだよね。しかも魔導生物だなんて、ボクでさえすっごく気になるのに、なんでなんだろ」


「ひょっとして、アリスが出掛けるから他のみんなは休みで居ない、とかか?」


「それはちょっとおかしいよ。アリスさんて上級貴族のお嬢様なんだから、あちこち出掛けるなんてしょっちゅうあるはずだもん、彼女が何か研究してるかどうかは知らないけど、責任者が居なきゃ止まっちゃう研究所なんて聞いた事ないし、変だよ」



 んー、そう言われてもオレだって場所の名前くらいしか知らねぇし、でも探索魔法の範囲内にはもう敷地含めて全部捉えてるこの研究所に、誰一人居ないってのは事実だしなぁ。



「もしかしてさぁ、普段からアリスさん達しかここには居ないのかな」


「そりゃどうだろ。でもそんな事言ったらそれこそ、上級貴族のお嬢様としては、なぁ」


「結局、ボク達は招待されてるだけで、何も知らないし教えてもらってないんだから、あんまりこの事には触れない方がいいのかもね」



 なんだかなぁ、まるでボッチなアリスを詳しく知りたくて、遠巻きに探ってるみたいな感じだ。



「ところでユージ君、さっき言った魔導生物って、一体どんな生き物なんだろうね」


「ん、それはちょっとオレも予想出来ねぇな、生物って聞くだけなら何か育ててそうなんだけど、頭に魔導って付いてるから、ホントに生き物かどうかも分からねぇんだよ」


「別な世界の技術を知ってるユージ君でも、全然予想出来ない物かぁ」



 そりゃ単純に生物を研究してるってんなら、オレにだって多少は予想出来るけど、魔法が普通にある世界でわざわざ魔導なんて頭文字に付けてるなら、バイオ系とか飼育や生態系なんかの研究じゃない、そんな気がするんだ。


 第一、この世界での生物のカテゴリーって、そんなにしっかり区別されてるかさえ怪しいもんだ。


 なにせ魔獣だって、生き物の枠内なんだからさ。



「ま、オレ達が今ごちゃごちゃ考えたってどうしようもねぇんだ、アリスがきちんと話すまでは、下手に突っ込まないでおこうぜ」


「そだね、そうするよ。それに今一番気になるのは古代の魔導具だし、目の前で見られるだけでも幸運だと思わなきゃね」


「だなぁ、そいつも何かヤバいブツでなければいいんだけど……」


「もう、そんな事言ったら古代の遺物は全部危険、って話になっちゃうよ」


「ははっ、確かにそうだな」



 さてと、何のかんの話してる内に着いたし、さっさと古代の魔導具とやらの調査を済ませるか。


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