魔導レーダーユニット 後編
オレが思い付いた方法は、こうだ。
まず一度探索魔法を発動したら、一つ目の魔晶にその結果を記録する。
次に、もう一度探索した結果を、今度は二つ目の魔晶に記録して、その間は一つ目の記録を幻視魔法で表示する。
これを交互に繰り返せば、探索の魔導具は連続発動しなくて済む分魔力消費が抑えられるし、魔晶の記録をずっと表示してれば、探索魔法が止まってる間の穴だって無くなるはずだ。
「なるほどね、でもそれなら後一回分の工程が欲しいな」
「どういう事だ?」
「魔晶は新しく記録する前に、一度中身を消さなきゃいけないんだよ」
ふむふむ、そういう一手間は必要だけど、それでも一時的な記録装置には十分使えるな。
「だったら魔晶は三つに増やして、記録、読み取り、消去で一回分の手順にすればいいか」
「なんて、なんて素晴らしいんだっ! これはもう、単純な探索の魔導具じゃないぞっ!」
「どうしたんだ?」
「今の手順を考えてみてくれ! 必要なのは探索、記録、結果表示の三つの魔導具だけどそれらをこうして組み合わせたら、別々に登録して普及させた時の何倍も、革命的な道具になるんだよ!」
「あぁなるほど、そういう事か」
そう言われると、一つずつ登録するのとは別で、組み合わせた結果を一纏めの魔導具として登録するってのも、ありな話だな。
「だったら探索の魔導具から、別の名前に変えるか」
「「例えば?」」
「んー……例えばそうだなぁ、魔導レーダーユニット、とか」
「魔導具という意味の先頭部分は分かるけど、レーダーとユニットというのはなんだい?」
「レーダーは周囲を探る道具、ユニットは複数の何かを纏めた時の単位、それぞれそういう意味なんだ」
でもそうか、ユニット扱いも含めて考えると今のところオレ達は、鑑定に探索と記録に表示までの全部で六つ、魔導具を造ったって事になるな。
「おぉっ! そう聞くと響きも良くて、より格好いいなっ! 素晴らしい命名だ!」
うーん、元ネタは異世界発だからあんまり誉められるのも、アレだなぁ……。
「それにしてもユージ君は、よくそんな仕組みを思い付いたよね」
「思い付いたのは二人のおかげさ。魔法と魔導具の違いを考えてみたら、頭の中だと魔法が途切れても結果は覚えてるんだし、その役割を記録の魔導具で代わりにさせれば、ってな」
「ユージの役に立てて、僕は嬉しいよ! あぁ、鑑定の魔導具も魔導レーダーユニットも、早く登録されて売り出されないかなぁ!」
「なんだよ水くさいな、この二つだったら新しくルーナに造ってもらったら渡すし……」
「いや、それは駄目だ。ユージ、友達の為にと思ってくれるのは嬉しいけど、一個人が造って誰かに贈った後で登録された魔導具と、最初にきちんと協会へ登録してから売り出された魔導具では、世間の見る目が違うんだよ」
被せ気味にそう言って、また語り始めたトリィの言い分は、聞けば納得の内容だった。
造った人物から友人関係伝いで誰かに贈られた、なんて噂が立った魔導具は、その後ちゃんと協会に登録しても、なかなか世間に認められにくいそうだ。
その理由は、馬鹿らしいくらいに簡単。
魔導具は高価だから、購入するのはほとんどが王族や貴族に資産家で、こういう連中がその噂を聞き付けたら、“自分には贈られてない”とかって、 自尊心 を傷付けられた的な被害妄想を爆発させて、正式登録された物でも見向きもしなくなるんだ。
けど、そんな奴らでも買わなくなると客がゼロになっちまうから、面倒事を起こさない為にも必ず協会を窓口にするべきなんだとさ。
「なるほどな、じゃあさっさと協会に持ち込んで登録しちまおう、早い方がトリィの為になる」
「それなんだが、遅くなってしまうのを承知の上での意見がある。この国ではなく北の隣国、ロジェード公国で登録してくれないか?」
おっ、なんでまたそんな手間かけて――
「ロジェード! ボクはその意見に賛成っ!」
「ははは、レウルーナ殿はかの国をよくご存知のようだ。ユージ、ロジェードは近隣諸国で一番魔導具開発が盛んでね、その内訳にはもちろん 紋繰騎 だって含まれてるんだ」
「なにっ!?」
「あの国は面白いぞ、なにせ他国では決して見られないなんて謳われる、紋繰騎の中古市場があるんだ、行っても損は絶対しないよ」
「マジかっ! なら行くっ!」
――おいおい、国家の主軸戦力で値段も高い紋繰騎が、まさかの中古販売されてるだなんて、とんでもねぇな!
「あれっ、そういや紋繰騎好きなら知ってておかしくないっつっても、なんでトリィは隣の国に詳しいんだ?」
「僕は元々ロジェードの出身でね、ロレットと結婚してクーブリック王国に移り住んだから、詳しくて当然さ」
「そういう事か。なら、紋繰騎に囲まれて暮らせる国から離れたんだ、趣味的にゃ大打撃だったろ」
「そうなんだよっ! 解ってくれるかい、ユージ!」
「分かるぞっ! その気持ちはよぉーっく分かるっ!」
そうかそうか、そいつはさぞ辛かったろうな。
まだどうなるか分からないけど、もしラクスター侯爵の協力が得られるならトリィも里帰り扱いで連れてって、魔導具の登録と中古市場巡りに付き合ってもらおう。
「ふぅっ……! それにしてもこの魔導レーダーユニットは、本当に素晴らしい物だ。これを工夫して使えば、街全体を守る手段にもなるし、馬車に積んで巡回騎馬隊へ同行させれば、魔獣や魔物に対して今まで以上の警戒を行える。ユージ、レウルーナ殿、本当にありがとう」
おぉ、特に何か言ったわけじゃないのに、もうそんな使い方を考えてるのか!
警戒レーダー網に、AEW……いや、載せるのが馬車だからLEW、早期警戒車両ってとこか。
このアイディアに紋繰騎用の魔導レーダーユニットも加えれば、かなり心強い戦力になるな。
「えぇとその、どういたしましてです、トリアーボさん。それじゃあユージ君、さっきの提案通りに仕上げるから、終わったらまた呼ぶね」
「その時は、僕も呼んでくれるかい?」
「もちろんですっ! 三人で考えて改良したんですから、むしろ居てもらわなきゃっ!」
「そうだぞトリィ、今さら仲間外れになんかしねぇし、お前だって逃げられると思うなよ?」
「あっはははっ! それは実に光栄な話だよ! 改めてありがとう、二人ともっ!」
うんうん、こういうノリの開発チームって、いいもんだなっ!




