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模擬戦の理由 冒険者の流儀


「ったくよぅ、なぁんでユー坊は装備有りの模擬戦より、無手のケンカの方が強いんだよぉ。……いってて、こんな程度で身体中痛くなるなんざぁ、オイラも年かねぇ」


「何言ってるのよ、あれだけ二人してはしゃいでたら、そうなるのは当たり前でしょっ」



 とか言いつつ、ちゃんと起き上がって身体動かしてる時点で、十分若いと思うけどなぁ。


 オレなんて、わざと神体能力封印してはいるけど、チート無かったらもう身動き一つしたくないほど疲れて、ぶっ倒れてるんだぞ。


 ただまぁ、あんまりにも思い通りに戦えないっつーか、むしろもう一方的に叩き潰され続けてたもんだから、頭にきて途中から模擬戦投げ捨てて、子供同士のケンカみたいになっちまったけどさ。


 なんでだろうな、不思議と疲れちゃいるけど気分はいいんだよ。



「それで、ユーちゃんは少しでもすっきりしたかしら?」


「それどういう事?」


「だってねぇ、あの 装身具アクセサリー 欲しがってた時の君は、すっごく嫌な気分だったみたいなんだもの、気になるわよ」



 なるほど、シェミナさんから見たあの時のオレって、そんな感じだったのか。


 でも実際、言われるまでもなくやな気分だったし、それが無関係な人にまで読まれちまうくらい出てたんなら、反省しなきゃな。



「先に言っとくけど、あたしはあれの持ち主の事は何も知らないし、もしユーちゃんが話したいって言ったとしても、聞くつもりはないわよ」


「え、なんでそんな……」


「その人との思い出とか縁からくる、悲しさとか辛さとか悔しさはね、本人にしか理解出来ないのよ。周りがどんなにあれこれ聞いても言っても、それだけはどうにもならないから、その人自身が心に折り合いをつけるしかないわ」


「…………」



 それならオレは、どうすりゃいいんだろう。


 アルゴーさん達の最期は知ってるけど、本人達には一度も会った事すらない。


 それでも、アリスがあんなに泣きそうなのを我慢して感謝してくれたのも、知ってるんだ。


 ハウザーさんの報告を聞いた時、オレは自分が使える魔法の中で、死んだ人を蘇らせる手段がないか、探したんだよ。



 でもその答えは、無し。



 その瞬間、この世界そのものな女神様のアルフェでも不可能な事はあるって思い知らされて、アリスやハウザーさん達には、ただ謝るしかなかった。


 それから何回もアルフェからの連絡はあったけど、蘇生魔法について自分から触れる気にさえなれなかったし、身バレした後だってアリスから神様の力で蘇らせてくれなんて、一度だって言われなかった。


 多分アリスは、オレから言い出さないなら不可能な事なんだって、理解してたんだろうな。


 けどオレだけがさ、もうどうしようもない、取り返しのつかない事なのに、心のどこかで引っ掛かってたんだ。



 ……ホントは、悔しいんだよ。



 どれだけ特別で凄い身体と力を持ってたって、生きてる人は少し助けられても、亡くなった人達はもう助けられないから、その事で辛い思いして生きなきゃならない人達も、オレにはどうにも出来ないんだ。


 それなのにみんなは、たまたま特別なものを手に入れて、偶然居合わせたからそうしただけの、こんなどこまでもただの人間でしかないオレに、感謝してるって、お前はホントに凄いって、そう言ってくれる。



 だから余計に悔しくて、辛いんだよ。



 そんな時に偶然起きた奇跡で、アルゴーさん達の遺品が手に入ったってのに、ちょっと前までアリスに渡すって決めてたのに、どうすれば……。



「死んでしまった人は、もう生き返らせるなんて出来ないけどね、その事に今生きてるユーちゃんが引っ張られちゃ駄目よ」


「そうだぜぃ、ユー坊。オイラ達は冒険者なんだ、そういう事はよくある話だけどなぁ、だからこそ今生きてる奴ぁそいつの分もずうっと、生きて生きて生き抜いてかないとならねぇのさ」


「でもね、どうしようもなく悲しかったり辛かったり悔しかったなら、せめてそれだけは晴らしてあげたいの」


「ま、普通は酒でも飲んで騒いでそいつを見送るのが、冒険者の流儀って奴なんだけどよぅ、ユー坊はまだ酒飲んだ事なさそうだって聞いたし、ならもう一つの流儀でってなぁ」


「そっか……ありがと、ウォーカーさん、シェミナさん」



 色んな若い奴の世話を焼いてきた二人なら、オレなんかよりよっぽど多く、そういう場面に何度も立ち会ったり向き合ったりしてきただろうに、それでもこんなに心配してくれるんだな。


 ……よし、ならもうアリスに渡すって一度は決めたんだ、きちんと最後までそれだけは貫き通そう。



「あらっ、もう大分暗くなってきちゃったわ! そろそろ帰って夕食の準備しなきゃっ!」


「えっ、もしかしてシェミナさんがパーティーみんなの飯作ってるのっ?」


「おぅ、その通りだぜぃ! シェミナの作る飯はなぁ、そりゃあ美味いんだぞぅ!」



 へぇ、そこまで嬉しそうに言うくらい料理上手なのか。



「ウチのメンバーはみぃんな、ほっといたら好きな物しか食べなくてねぇ、つい口出してたらいつの間にか、あたしが作るようになってたのよ」


「なんならユー坊っ、お前さんも食ってくかぃ?」


「いや、あんまり遅くなったらみんな心配するし、また今度お邪魔するよ」


「そう、それなら来てくれるのを楽しみにしてるわ。あ、そうだユーちゃんっ、今日買った装身具は必ず今日の内に渡すのよっ、女の子をあまり待たせちゃ駄目だからねっ」



 はぁ……ホント、どこまでも世話好きな人だよ。



「分かった、そうするよ」


「本当に素直でいい子ね、気を付けて帰るのよ」


「あ、ちょっと待った」



 ここまでアレコレ付き合わせて、疲れさせたまんま帰らせるのは悪いし、ちょっと魔法でお礼代わりだ。



「おっ、どうしたぁ?」


「【治癒】【状態異常全回復】【浄化】……うん、これでよし」


「あらまっ! ユーちゃんありがとうっ!」


「くっはぁ! 色々魔法使えるって言葉通りだなぁ、ありがとよぅ、ユー坊! ……ってお前さん、自分にゃ使わなかったのかぃ?」


「いいんだ、これでも二人のおかげですっきりしてるからさ」



 せめて代官屋敷に帰るまではこのままでいたい、そういう気分なんだよ。



「若いからって、あんまり無理しちゃ駄目なんだからねっ、今日は贈り物渡したらゆっくり休むのよ」


「うん、それじゃ二人共、気を付けて帰ってね」


「おぅ! またなぁ、ユー坊!」



 さてと、オレもそろそろ帰るか。


 でも屋敷に着いたら確実に、色々と根掘り葉掘り聞かれるんだろうなぁ。


 なにせ、今ここで魔法使って綺麗にしたって、 紋装殻クレッシェル は傷だらけで、服だってあちこち破れてるんだ、一体どこで魔獣とか魔物と戦ってきたんだ、なんて騒がれるのかもしれない。


 それなのにホント、気分だけはすっきりしてる。



 冒険者の流儀か、そういうのに浸るのもたまにゃ悪くないかな。


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