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初の模擬戦


「どうしてこうなったんだろ……」


「すまねぇなぁユー坊よぉ、こうなったシェミナはオイラにも止められないんだよなぁ」



 口には出さないでおくけど、申し訳なさそうに縮こまっても、ウォーカーさんの立派に鍛え上げられた肉体には、全っ然似合わないからねっ!


 だからもうオレも諦めてるんだし、そんなに気にしないでほしいなぁ。



 屋台広場での妙な出会いから少し後、何故か乗り気なシェミナさんに押し切られて、オレとウォーカーさんとシェミナさんの三人だけでナーキスの外に出て、二対一の模擬戦をすることになった。


 しかも、オレは午前中の件があったから用心しろって事で 紋装殻クレッシェル と武器を持たされてたけど、ウォーカーさん達はわざわざ泊まってる宿に戻って、しっかり装備を整えてから来たんだ。


 もちろん最初は困って断ろうとしたし、ウォーカーさんだって止めさせる為に説得してた。


 けどその時、シェミナさんが何かを耳打ちした途端、ウォーカーさんが何故か説得を諦めて、終わった後でちゃんと説明するから付き合ってくれって、頭を下げたんだよ。


 せめて、自前の装備持ってなけりゃ言い訳して断れたんだけどなぁ、またもシェミナさんのパワフルさにやられた気がする。



「さて、ユーちゃん! 始める前にルールを決めようねっ!」


「へいへい……つっても、お互い相手を殺さず大ケガも避けるのと、シェミナさん達とオレで二対一って以外に、何決めるんだ?」


「ユーちゃんだけは、魔法使っての攻撃も許可するわよ。あたしから言い出したんだし、人数考えてもその方が公平でしょっ」


「いや、それだと流石に公平じゃないと思うぞ、自慢じゃねぇけどオレ魔法は色々使えるし……」


「ふぅん、なぁるほどぉ……面と向かって初めて解ったがよぅ、ユー坊は冒険者ってのを、その戦い方をきちんと理解してねぇ。それどころかなぁ、今までは圧倒的な力任せで一方的に勝ってきたんだろぅ、まるで知らない世界にいきなり放り込まれた、そんな感じだなぁ」



 “知らない世界にいきなり放り込まれた”なんて言われて、思わずギョッとした。


 確かにオレはそうだけど、そしてウォーカーさんはその事を何も知らないで、冒険者の世界って意味で例え話を口にしたんだろうけど、まさに今の状況にはピッタリだし、何より今までの戦い方がその通り過ぎて、何も応えを返せない。



「どうやら図星ってとこかぃ、でもま、そういう事ぁ誰にだってあり得るからなぁ。たまたま運良くオイラ達は腕ぇ磨けたけど、だからこそほっとけねぇよなぁ、シェミナぁ」


「あらまぁっ、そういうつもりじゃなかったんだけど、やっぱりあなたは頼りになるわねっ」


「よせやぃ、ユー坊の前で 惚気のろけ るなんてぇ、照れるじゃねぇかよぅ」



 って、今度はオレそっちのけで、二人してイチャイチャし始めたよ……。


 あーもうっ、そっちこそほっといたらどこまで本気で幸せオーラ撒き散らすか分からねぇし、こっちだってそれ見せられてリア充爆発しろとか呪い叫んだり、口から砂糖吐く趣味はねぇっ!



「それでっ、他には何かルールあるっ?」


「おっとぉ、いけねぇ。いんやぁ、特に問題ないぜぃ」


「そうね、それじゃあそろそろ始めましょ」



 気持ちの切り替え早いのはいいけど、模擬戦っつってもお互い武器は実戦用の本物なのに、なんでこんな軽いノリなんだかなぁ。


 まぁ、それとは別の意味で軽いってんなら、二人の持ってる武器にもそれぞれ違う意味でそう言えるけどさ。


 ウォーカーさんは少し長めの片手剣を二本、両肩越しで背中に吊るしてる。


 一本はメインでもう片方はサブウェポン扱いなのか、それとも両方同時に使っての二刀流みたいな戦い方するのか、今は全然読めない。


 ただ、どっちにしろウォーカーさんの体格と、筋肉モリモリなその身体で出せるはずの力なら、軽々と扱ってかなりヤバい速さの手数で攻めてくるだろうな。


 けどもっとヤバそうなのは、シェミナさんだ。


 本人の身長より長い柄の先に大小二つの刃と突き刺す槍が付いてる、両刃斧かハルバードみたいな巨大武器を、まるで重さが無さそうな風に笑顔で軽く扱ってるのが、正直ちょっと怖い。


 あんなの普通は武器として使うどころか、持ち運ぶだけでも相当苦労しそうなのに、一体どうなってんだよこの人。


 そんな、両方とも外見とは真逆な武器をそれぞれ扱う、見た目詐欺な夫婦とこれから戦うとか、ホントにどうしてこうなったんだろ……。


 でもまぁ、もうやるって決めたんだし、オレものんびりしてないで構えるとするか。



「ん……ねぇユーちゃん、君もしかして剣使うのに、慣れてないのかしら?」


「だなぁ、もうちょいしっかり握って脇締めねぇと、一回打ち合っただけで手からすっぽ抜けちまうぜぃ」


「えぇと……こう?」


「そうそうっ、上手よぉ」


「おぉ! いいねぇ、一度聞いただけで様になるたぁ、素質あるなぁ!」



 二人とも嫌味とかじゃなくて、本気で心配してレクチャーしてくれてるのが流石にはっきり判ったしな、アドバイスにきちんと従って損はないさ。



「こりゃあ、残りの面子も引っ張ってくればお互いにいい訓練になったし、ちと失敗したかねぇ」


「他のメンバーって、ウォーカーさん達は二人組なんじゃないの?」



 オレ達が様子見してたあの時、確かに複数の冒険者が居たのは見てたけど――


「ありゃあ、ひょっとしてユー坊、サウンダースって名前は聞いた事ないかぁ?」


「いや、オレは初耳だけど、ウォーカーさん達って実は有名なの?」


「少しは名前が知られてきたかなぁって思ってたんだけどねぇ、ユーちゃんみたいにまだ知らない若い子もいるし、あたし達もっと頑張らなきゃいけないわよ、あなた」


「あーそのオレ、知らなくてなんかごめんね……」


「いいって! んな事ぁ気にしないでくれよぅ!」


――うーん、二人が少し落ち込んだ感じからして、どうやら冒険者界隈だと相当に有名っぽいな。



 つっても、その気落ちしてる雰囲気は悔しいってより、まだ努力が足りてない的な様子だし、ホントに面倒見がいい人達なんだなぁ。


 よし、決めた!


 ウォーカーさん達と模擬戦してる間は神体能力の向上を封印して、 紋装殻クレッシェル のブースト機能までしか使わないっ!


 最初は断ろうとしたし、ついさっきだって適当に魔法使ってさっさと終わらせようとか思ったけど、そんなの失礼だしつまんねぇからやめだ!


 この二人相手にそんな制限かけて、どこまで食い下がれるか分からないけど、せっかくいい機会を持ってきてくれたんだ、やれるだけやろう!



「んじゃ二人共っ、改めてよろしくっ!」


「えぇもちろんっ! よろしくねっ、ユーちゃんっ!」


「はっは! 気合い入ってる若いの相手は、やっぱり楽しいぜぃ! やるぜぇ、ユー坊っ!」


「おぅっ!」


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