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とある冒険者達との出会い


「あらっ、これ男の子には似合わないと思うんだけど、君も欲しいのかしら?」


「オレが使うんじゃないから、似合わなくてもいいんだ、悪いけどこれ譲ってくれないか?」



 屋台の前で男のオレと知らない女が二人して、同じ物に手を伸ばしながらやり取りってちょっと絵面が間抜けな感じだけど、相手は少しからかうような言い方してても雰囲気悪いってわけじゃないから、気にならない。



「んー? もしかして、訳ありかしら?」


「あぁ、そうだ」


「ん……なるほど、そっちの訳ありなのね。ならいいわ、譲ってあげる」



 なんだ、何か一人で納得して頷いてるけど、全然意味が分からねぇな。


 でも穏便に済んだし、まぁいいか。



「その代わり、ちょっとあたしに付き合って……ってよく見たら君、もしかして 紋繰騎クレストレース の上に立ってた男の子?」


「えっ、なんでそれ知ってんだ?」


「ほら昨日っ、ナーキスに入る前にあたし達がゴルウルフの群れと戦ってるとこ、君達は加勢しようか様子見してたじゃないっ」


「あっ、あー! あの時の強い冒険者さんかっ!」



 そうだっ、思い出したっ!


 この人、戦った後でオレ達に手を振ってた内の、一人じゃないか!



「あらやだっ! そんなに誉められたら、おばちゃん照れちゃうわっ!」


「えっ、おばちゃん?」


「ん?」


「いやいや待て待て、そんな見た目若いのにおばちゃんって、冗談だろ?」


「んもぅっ! この子ったら、嬉しい事言うわねぇ!」



 いや、嬉しいも何も実際パッと見はおばちゃんどころか、どう見ても十代半ばか後半くらいで、リッシュとかアリア達に近い若さだぞ。


 ただなぁ、そのくらいの年頃の女の子が背伸びして見せてる、みたいな様子がこれっぽっちも無いっつーか、むしろ貫禄みたいなのを感じるのが、逆に謎だ。



あ、もしかしてファンタジー世界特有の長寿な種族とか――


「こんな男の子にそこまで誉められたら、おばちゃん大サービスしちゃうわよっ! ほらっ、付いてきてっ!」


「おっ、おいちょっ! 待て、待ってくれっ!」


――うわっ、なんだよこの人の妙な力の強さはっ!



 見た感じ、特に装備とか魔法で身体強化してるわけじゃなさそうなのに、なんでこんなグイグイ引っ張られるんだ!?



「ん? もしかして、まだ買い物するのかしら?」


「あ、あぁそうだ」


「あらそうなの、それじゃあたしが手助けしてあげるから、ササッと買っちゃいましょっ。それで、お相手の年齢は?」



 な、なんなんだこの、問答無用って感じで押しまくるパワフルさ、オレが答えなきゃ何回でも聞き返してきそうだぞ、これ……。


 まぁでも、みんなの年齢くらいなら教えても大丈夫だろ、正直一人で悩んでたらどんだけ時間あっても足りないからな。



「えぇと……十三才が一人、十五才が一人、十六才が一人、十七才の双子が一組、十八才が一人、二十才が一人、二十才代が一人だ」


「あらまぁ、ずいぶんと多いわねぇ。それだけの女の子にプレゼントするのに、男の子一人で選ぶなんて大変だったでしょう。任せてちょうだいな、あたしがしっかり教えてあげるから、ねっ」



 えっ、今オレみんなの年齢だけ言ったのに、この人なんで相手が女の子だって判ったんだ?



「うーんそうねぇ、十三才と二十才代の子にはこれとこれ、十五才から十八才の子達にはこれとこれとこれっ、それからあれとこれねっ、二十才の子には……あっ、これがいいわっ」


「えっ? えっ? えっ!?」



 おいおいおいおいっ、なんだよこの人っ!


 選ぶのすっげぇ速いから雑かと思ったら、どれもこれもみんなが身に着けたら似合うかなって、オレが思った物ばっかじゃねぇか!


 え、なんだよもしかして、アルフェみたいに心が読めるスキルとか持ってるのか!?



「どうかしら、おばちゃんすこぉし張りきり過ぎちゃったけど、気に入った?」


「あ、ありがと……えっと……」


「あっ! ごめんねっ、まだ名前も教えてなかったわ! あたしはね、シェミナっていうのよ!」


「そっか、オレはユージっていうんだ。でもシェミナさんはさ、なんでこれがいいって思ったの?」


「それはもちろん、ユーちゃんの気持ちが向いてる物が一番いいって思ったからよ」



 マジかよ、さっき相手が女の子だって読まれたのもそうだけど、この短時間でそこまで判るのか。


 オレが読まれやすいのか、それともシェミナさんが恐ろしく鋭いのか、でなきゃどっちもなのかはっきりしないけど、それで嫌な気分になったわけじゃないんだし、それに買い物が早く済んで助かったんだから、この後ちょっと付き合うくらいなら大丈夫だろ。


 もしヤバそうなら全力で逃げて、トリィとロレットさんの力を借りればいいもんな。



「それで、シェミナさんはこの後何か用事あるんでしょ、少しだったら時間あるし、プレゼント選んでもらったお礼代わりに、オレで良ければ手伝うよ」


「そう、ユーちゃんはとっても優しい子なのね、それじゃお支払いしたら行きましょ」


「べ、別に優しいってわけじゃないよ」



 うっ、いきなり言われて面食らったからそう返したら、またパワフルさを感じる無言のいい笑顔で応えられた。


 ただニコニコ笑ってるだけなのに、反論は許しません的なこのプレッシャー、ホントなんなんだろ――


「おぅ、シェミナぁ! ここに居たのかよぅ!」


――えっ、もしかして知り合いなのか?



 後ろから声掛けられたけど明らかに男だし、シェミナさんを見て呼んだって事は、冒険者仲間かもしれないな。



「おんやぁ、手ぇ握ってる隣の坊主は……」



 おっと、先に気付かれたけど別にやましい事してるわけじゃないし、挨拶して――


「あらっ、おかえりなさい! あなたっ!」


「えっ!? あなたぁ!?」


「ん?」


「おぉっ?」


――まさかシェミナさんって、既婚者っ!?



 ビックリしたから振り返って見たら真後ろに立ってたのは、オレよりデカくて筋肉モリモリな身体つきで、冒険者っぽい服を盛大に盛り上げてる、かなり厳ついおっさんだった。


 こういうのって年の差婚とか……いやいやっ、それより何よりホントにシェミナさんって、一体いくつなんだよっ!?



「なんだぃ坊主、ひょっとしてシェミナに捕まったばっかりかぃ、そいつぁ運が悪かったなぁ」


「あらやだっ! 運が悪いだなんて、あなたったらユーちゃんに失礼ねぇ!」


「けどよぅシェミナぁ、この坊主がオイラの知ってる情報通りの男ならなぁ、いつもみたく困ってる若いのってわけじゃないぜぇ」



 なんだなんだ、口挟む間もなくどんどん意味不明な話が勝手に進んでるけど、相手の男の人がオレを知ってるって、どんな情報が流れてるんだ。


 でも一つ分かったのは、どうもシェミナさんは困ってる若い奴を見つけたら、ほっとけなくて何かと世話焼いてる人らしい。


 なんだよ、オレが優しいとか言っといて、自分の方がよっぽど優しいじゃねぇか。



「それよりあなたっ、まだユーちゃんに名乗ってないでしょっ」


「おっとぉ、そいつぁ悪かったなぁ。オイラはウォーカーってんだ、お前さんはユージってんだろぅ、よろしくなぁユー坊」


「えっ、オレの事どこまで知ってるのっ!?」


「ユー坊は今、結構有名だぜぃ。“エッジシューター”って二つ名持ちで、上級貴族お抱えの護衛冒険者、 紋繰騎クレストレース 五騎との決闘を無傷で勝って、相手した全騎を賭けの賞品として貰い、二つ名の由来になった大型魔獣三体との戦闘じゃ、強力な魔法でトライデントリザードを一撃必殺だった、ってなぁ」



 誰がアレコレ喋ったかは予想つくけどっ、でもなんだよその二つ名っ!?


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