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抗う者


 あぁん? どっか見覚えが、だって?


 んなわけねぇだろ、今まで散々アレコレ見せられて、嫌ってほど頭ん中に刷り込まれたじゃねぇか。


 それを今更、なぁに他人事みたいに言ってんだ!



「ところでロレットさん、あのライスだけど育て方はきちんと教わった?」


「えっ? えぇ、あちらで苗を購入した際に一通りは教わりましたけれど、それがどうかしました?」


「あっちだともしかして、凄く浅い池みたいな畑に植えてたんじゃないの?」


「はい、仰る通りでした! 確か、タンボーと呼ばれてたかと……」



 タンボーじゃねぇよ、そりゃ田んぼだっ!


 ってか、ちょい間違えちゃいるけど、稲そのものに育て方と田んぼって呼び名まで、こっちに誰かが伝えたんだな。



「……まぁそれは今重要じゃねぇ、こういう畑で育てる場合の手順、言える?」


「は、はい。どこでも良いから耕した畑に、苗を植えたら適度に水を与えてやるだけで良い、と」


「ふーん、【鑑定】……陸稲、長粒種、ただし栄養不足で生育不良か……」


「あ、あの、ユージさん?」



 はぁ、こうなったのも久しぶりだし、こりゃもうちょい喋らせとく方が――


『人間って本当に凄まじいわねぇ』


『おぉ、なんだよアルフェ……ってなんだこりゃあっ!?』


――おいこりゃどういうこった、オレいつの間にか幽体離脱してるじゃねぇか!?



『だってねぇ、神体に動作不良の兆しありってアラートシグナル出たんだもの、慌てて来たのよ』


『え、なんだよその動作不良って』


『自分がどうなってるか、知らないなんて言わせないわよ?』


『あぁ、アレってそういう扱いになるのか』


『そんな呑気な事言ってる場合じゃないわ、自分の身体を見てみなさいよ』



 身体ねぇ……んー、神体は何ともないけど、幽体離脱してる方が半分真っ黒だな。



『分かったかしら、これが勇司君の今の状態よ。たった一つしかない精神に、かなり強引な刷り込みを施して、意識が二つあるって錯覚させてるの』


『そりゃ知ってるよ、なにせそのプロセスを生身で体験したんだからな』


『危険だと思わないの?』


『こんなの、なんてこたねぇよ。さっきの様子なら、もうちょい喋らせてやれば落ち着くはずだ』


『んもぅ、なんでこんなに楽観視出来るのかしら』



 そう言われたって、アレもオレだしなぁ。



『つまり、邪○眼みた……』


『やめろよぉ! ありゃ断じてそんなんじゃねぇっ!』


『でも実際そのまんまじゃない』


『うっせぇ!』



 もし自分の中二病妄想だったとしても十分こっ恥ずかしいってのに、それを他人に強制実装されて、しかもその 発動条件トリガー が第一次産業なんだぞ!


 そんなのもう恥どころじゃねぇ、もっとおぞましい何かだっ!



『……なら、どうしてそのままにしておくの?』


『どうしてって、そりゃオレがロボットフリークスなのは、アレのおかげっても言えるからさ』



 さっきアルフェが言ってた、一つの精神に強引な刷り込みを施して意識を二つに錯覚させるプロセス、あれって結構しんどいからそれを乗り切る為にずっと、物心ついた時から大好きだったロボット物のアレコレ思い浮かべたり、自分で造りたい物とか考えてたからな。



『そうやって普段はロボット好きで強化した精神で、自分の中のおぞましい何かを抑えてるの? なによ、やっぱり邪……』


『やーめーろってーのっ! お前なぁっ! 女神がイジメなんて、カッコ悪いぞこの野郎っ!』


『はいはいごめんなさいね、ママが悪かったわ』



 ったくよぉ……。



『それにしてもアレよねぇ、こんな事してまで働き手が欲しかったのかしら』



 オレが生きてた時の日本は超少子高齢化社会で、そういう仕事はロボット導入しての自動化や、工場化にバイオテクノロジー全力解禁しても、人手不足だったからな。



『まぁ、人手欲しがってたのは第一次産業だけじゃなくて、社会全体がそうだったんだけどさ』


『でも、望まれて産まれてきたのに外野は言いたい放題に反対してて、そういう連中が法を振りかざして貴方達の自由を奪った挙げ句、その結果がコレなのよ?』


『そう言われてもよ、オレからすりゃ産まれる前からそう仕組まれてて、進むレールが用意されてたってだけだからな』


『で、勇司君はその用意されてたレールに全力で逆らってた、と。青春っていいわねぇ』



 別にそんないいもんじゃねぇと思うぞ、ただ単に用意されてた物を選ばなかったってだけだしな。


 それに今はもう、そういう柵から完全に解放されたんだ、ならそれこそ出会った時のアルフェが言ったように、好き勝手自由に生き抜くだけさ。



『それより幽体離脱しっぱなしだけど、これ大丈夫なのか?』


『安心して、今は普段の思考加速と違って速度制限無しの精神加速だから、どこまでも限りなく時間停止に近い状態よ』



 ふーん、やっぱ神様ってのは究極のチートだな。



『あぁそうだ、いつもここぞって時に助けてくれたり、今日もオレの代わりに怒ってくれてありがとな、アルフェ』


『……勇司君のそういうとこ、ちょっとズルいわよ』



 なに照れてるんだよ、いつもは遠距離連絡だけだから、一度は面と向かってお礼言っときたかったってだけだぞ?



『まぁいいわ、特に問題ないなら私は帰るけど、何かあったらまた来るから、それじゃね』



 おぅ、またな。


 さてと、そんじゃ中途半端に発散させちまった分の続きを、思う存分喋らせるとするか。



「ライスを買った相手自体は置いとくとして、育て方について嘘は言ってないけど、必要なとこが抜けてるのは気に入らねぇな」


「必要な部分、ですか?」


「あぁ、どんな生き物だって食べる事は重要だろ、それは草花とか作物でも同じだ」


「はい、それは確かに……」


「それを前提に考えると、耕した畑ならどこでもいいってわけじゃないし、植えたら適度に水与えるだけってわけにもいかないんだ」



 もしそんなお手軽栽培で済むんなら、極端に言えば例え砂漠に植えたとしても、ちゃんと水あげてりゃ育つって話になるからな。


 もちろんそんな事あり得ねぇから、肥料が必要になる。


 でも、今目の前に植えられてる稲は、畑を耕す段階からその辺が足りないせいで、生育不良を起こしてるんだ。



「ロレットさん、どっか空いてる畑用の土地ってある?」


「はい、土を休ませる為に空けた所が、幾つかあります」


「じゃあそこ、後で詳しい手順は伝えるから、今植えてる分が育って収穫したら全部種に回して、次に繋げよう」


「えぇっ!? 次の苗を購入しなくてよろしいのですかっ!?」


「あぁ、苗売ったのってそういう商売する奴なのか、こういう小規模な畑とか趣味ならある程度は有効かもな」



 収穫を一世代限定にする遺伝子組み換えなんて、この世界だと不可能だろうし、意図的な生育不良で大半をダメにさせて、新しい苗を買わせたり育て方のアドバイス料をせしめるつもりか。



「新しい苗は必要ないし、あっちから売り込みに来たら断ればいいよ、理由は育てられなかったから諦めるって言えばいいさ」


「ユージさん、貴方は一体……」


「オレは 紋繰騎クレストレース が大好きで世界中を歩き回るただの旅人で、今は雇われ護衛冒険者だ。さ、育て方の手順教えるから、何か書くもの用意してよ」


「わ、分かりましたっ! すぐ用意致しますっ!」



 苗を売った奴の事は何も知らねぇし、そのアイディアを責めたり否定する気もないけど、オレがここに来ちまったからにゃ、ロレットさんからこれ以上の金をもらうのは、諦めてくれ。


農司君「お米さんご登場の理由? そりゃ当然、オレのたmぐはっ!」


勇司君「うっせぇ! てめぇは黙ってろ、この中二農っ!」


えぇもちろん、お米さんご登場の理由はそれだけじゃありません。

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