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中間の街ナーキスまでの旅路


「しっかしまぁ、行きはアリスが乗る馬車一台だったのに、帰りは馬車一台に大型の運搬台車四台なんて、えらく大所帯になったもんだ」


「そりゃ仕方なかろう、 紋繰騎クレストレース は対大型魔獣戦闘用で、短距離ならともかく長距離の荷運びなどで使うには魔力消費が多過ぎるからな。移動が長くなるなら、こういう乗り物の方がむしろ安く済むんだ」


「言われてみりゃ、確かにそうだな」



 オレ達は今、インガルとかその付近の森がある王家直轄領を抜けて、ラクスター領内にある中間地点の街、ナーキスに向かって順調に近付いてる。


 まぁ、先頭と最後尾には紋繰騎をそれぞれ一騎ずつ配置して警戒してるし、よほどおバカな盗賊とかこっちの都合お構い無しな魔獣にでも出くわさない限り、順調で当たり前ではあるんだけどな。


 それでも念入りに探索魔法で周辺索敵はしてるけど、周囲には味方の青反応に馬車と台車を牽かせてる合計二十頭のスロウホースを示す紫反応以外は、他の魔獣の紫反応や敵性対象の赤反応どころか、警戒対象の黄色反応も中立対象の白反応も見当たらない。


 つまり、この街道を進んでるのは今のところオレ達だけ、旅人とか冒険者とか行商人もいない。


 こっちの行列見たらビックリするだろう相手がいないのを、喜べばいいのか残念がればいいのか、って感じだ。


 ちなみに、大型の運搬台車の内三台にはそれぞれ一騎ずつ載せてて、リッシュとエリナとフィナが御者の代わりをしてるし、護衛役を交代する休憩の時に聞いたら、アリアとイリアも同じく御者は出来るんだとさ。


 ホント、この五人娘は多才だよ。


 それよりオレはって言えば、爺さんとルーナの持ち物を積んでる四台目の台車で、御者をやってる爺さんから馬の操り方を教わりながら、のんびり護衛冒険者としての役目を果たしてたりする。


 オマケに言うと、ルーナはこの台車で貫徹分を取り戻す勢いで爆睡中、イレーヌさんとミトリエは馬車内でアリスの身辺警護、ハウザーさんは油断なく周囲を探りながら馬車を操ってる。



「さてと、ナーキスまで後どれくらいか……【探索】……あん?なんだ?」



 ほんの僅か、一瞬だけ黄色反応が探索魔法の範囲内をかすって消えたけど――


「ユージさん! 右斜め前方、商隊らしき荷馬車の列と魔獣らしき複数の生き物ありっ!」


「なにっ!?」


――あの黄色反応はそれかっ!



「全車停止っ! アリア! その場で止まれっ!」


 こういう時は、棒立ちの騎体がいい物見台になるからな、 紋装殻クレッシェル の身体強化機能を活かして素早く台車を飛び移っていって、先頭にいるアリア騎の肩に乗っかるのが一番だ!



「よし、アリアはそのまま。……【遠視】……商隊を護衛してる冒険者が何人も戦ってる、相手は犬……いや、狼なのか?」


「……この付近で犬や狼に近い姿の魔獣なら、多分それはゴルウルフ。動きはとても素早くて、特に高く飛んだ後の真上からの飛び掛かりは要注意」


「ユージさん! 私達は出なくて大丈夫ですか?」


「あぁ、護衛の冒険者がしっかり戦ってるし、そのゴルウルフも数は多くなかったみたいだ……あ、最後の一匹が倒された。見た感じ、商隊にも冒険者達にも被害は無しだな」


「そうですか、良かった……」



 フィナは少し心配してたけど、あっちを守ってる冒険者達は強いらしいぞ、数は多くないって言ったけどそれでも人間より大きい魔獣を全部で八匹、あっさり倒したんだからな。


 おっ、なんかこっちに気付いた冒険者が一人、手を振ってる。


「……ユージさん、手を振ってどうしたの?」


「向こうの冒険者がオレ達に気付いて合図してるみたいだから、こっちも応えたんだ。アリアも手を振ってやってくれ」


「……ん、分かった」



 遠くからでもデカくて目立つ紋繰騎だし、手を振ってやれば必ず見えるだろ。


 おぉ、更に気付いた冒険者とか商隊の人達も、思いっきり手とか持ち物振って応えてるよ。


「……こういうの、なんだかいいね」


「そうだな。よし、そろそろ行こうか。報告ありがとな、アリア」


「……ん、みんなの役に立てて嬉しい」



 ふぅ、でもホント何事もなくて良かったよ。


 急いでたから台車を飛び移ったけど、戻りはスロウホース達をビックリさせないようにゆっくりと、そしてみんなを安心させる為に一人ずつ声かけしながら、ハウザーさんのとこまで報告しに歩いてく。



「お疲れ様です、ユージ殿。こちらからも様子は聞こえておりましたが、特に問題は無かったようですな」


「うん、商隊にも護衛の冒険者達にも、被害は無しだよ。……もしかして、こっちが紋繰騎で警戒してるから、あっちに向かったのかな?」


「ゴルウルフの群れがどの位置に居たか不明ですので何とも申せませんが、奴らの嗅覚や先ほどからの風向きなどを考えますと、風上に居た商隊だけに気付いて襲ったのやもしれませんな」



 あー、そういや相手は犬とか狼みたいな魔獣だし、獲物を探すならまず頼るのは自分の鼻で、耳とか目を使うのはもっと近付いてからだよな。


 ハウザーさんは元冒険者だって言ってたし、そういう経験が豊富なとこもどんどん見習おう。



「今のところ、探索魔法の範囲内には他の魔獣は引っ掛かってないし、ナーキスの街までもう少しだけど、油断しないで行こう」


「承知致しました、引き続き警戒と護衛を宜しくお願いします」


「はいよー」



 ん、爆睡してたはずのルーナが起きたみたいだな。


「ユージ君っ、魔獣が出たらしいけど、大丈夫なのっ?」


「おぅ、ここから離れたとこを進んでた商隊を襲ってたけど、護衛の冒険者が全部退治してたし、もう大丈夫だ」


「そっかー、それ聞いて安心したよ」


「もう少しでナーキスに着くけど、まだ寝とくか?」


「うぅん、もう目が覚めちゃったし、ずっと爺ちゃんに御者してもらっちゃってたから、今度はボクが代わるよ」



 うん、貫徹ハイ状態からは抜け出して、まともな思考が戻ってきてるし、任せてもいいか。



「よし、それじゃ全車出発!」


「はーい!」



 ちょっと立ち止まったから重さのせいで走り出しは遅いけど、台車は全部不具合とか出てないな。



「にしても、きちんと整備された道ってわけじゃないから、台車自体が重くて跳ねなくても、振動が結構腰にクるなぁ」


「ユージ君はまだ若いんだから、お年寄りみたいな事言わないでよー」


「そうは言ってもこれが現実だし……おっ、あれがナーキスの街かぁ」


「えっ、どこどこっ!」


「あっちだ、あっち」



 指差す先は少し右に曲がってる街道の向こうで、さっきの商隊が進む進路と交差する辺り、遠視魔法だとバッチリ見えるけど、肉眼だけだとどれだけ見えるかな?



「あっ、あれかぁー!今日はゆっくりして、美味しい物たくさん食べられるといいねっ!」



 へぇ、この距離でもルーナには見えるなら、平気で徹夜とかするけど視力は問題ないのか。



「まだ明るい内に到着出来そうだし、明日ものんびり休めるから、期待していいかもな」


「やった!」


 インガルじゃずっと 士導院しどういん から動けなかったけど、爺さんやルーナやフィナ達からは、平民がよく利用する街中の大衆食堂とか屋台売りの食い物の話を聞いてて、実は密かに期待してるんだよな。


 それに、出会ってから今日までみんなにはホント色々世話になってるし、丁度いい機会だからここで何かプレゼントも買う予定だ。


 さぁて、色んな意味でいい物に巡り会えるのを期待しながら、ナーキスに行こう!


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