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インガルへの帰還


 そうしてみんなでしばらくワイワイ騒いだその後は、片付けの為に活動禁止中の 士導院しどういん から騎体を十騎と、非番だったり別な仕事してた衛兵隊の 騎装士スキナー さん達を十人、引っ張り出す事になった。


 その上、インガルの冒険者ギルドからは魔獣の解体に詳しい人とか査定する人、そして一番偉い支部長さんまで含めて何人も駆け付けてしばらく大騒ぎしてた。


 けど、ここでもまたフィナが活躍してくれたおかげで、まだ冒険者登録してないオレの素性を探られる事は無かった。


 んで、夕暮れ時の今ようやくこうして、簡単に解体したトカゲ共を運んでもらってる。


 そうそう、オマケだけど衛兵隊長のガルダンテさんは、知らせを受けてすっ飛んで来た後、ベルドさん達の報告を聞いてしばらく呆然としてた。


「フィナとリッシュは、もう 駐騎棟ちゅうきとう に戻ったかな?」


「多分まだだと思いますよ、だってあの数のスロウホースをまとめて預けられる馬小屋なんて、どこにもないですもん」


「あー、そりゃ確かに面倒だ。でもさ、もしかしたら全部、士導院に連れてってるかもしれないぞ」


 捕まえた数は全部で九十八頭、その内六割がこっちの取り分だから、分けるにしても充分な広さが無いと手間と時間ばっか食うから、もしかしたら訓練場に集められてるかもしれない。


 ちなみに馬寄せは、特定の動物限定で発動するテイムスキルの一つで、今回の対象はスロウホースだけど本来は馬全般に対して有効で、使うと魅了と調教の効果を発揮するそうだ。


 そのおかげで、リッシュ一人に百頭近い群れが大人しく従ってくれたんだから、ホント凄いよな。


「それよりユージさん、かなり無茶しましたね」


「ん? オレ無茶してたか?」


「そうですよ、今ここで細かく話すのは避けますけど、フィナ隊長が色々と誤魔化してなければ、今頃はずっと質問責めされて身動きとれなくなってるはずです」


 そうは言われても、さっさとやらなきゃこっちが殺られる状況だったし、手段を選んだり誤魔化したりするヒマ無かったんだよなぁ。


「あ、別に責めてるわけじゃないですよ。ユージさんが居なければ、昨日も今日も命が危なかったんですから、私達も本当に感謝してるんです」


「わかったわかった、どういたしましてだ。もう持ち上げられるのはお腹一杯だし、勘弁してくれよ」


「そうですねぇ、どうしましょうか……」


「おいおいエリナ、お前これ以上オレを誉め殺すつもりかっ!?」


「ふふふっ、冗談ですっ。私は末っ子で、いつもからかわれてたから、つい……」


 ったく、その仕返しは自分の家族にしてやれよ。


「だからって、からかわないでくれよなぁ。でも、エリナは末っ子か、上に何人いるんだ?」


「姉が三人と兄が二人、そして最後に私です」


「へぇ、全部で六人か。そりゃ賑やかそうだ」


「ユージさんは、あんまり驚かないんですね」


「昨日言ったろ、兄弟姉妹は山ほどいるんだ、六人くらいじゃビックリしないさ。【探索】……よし、周囲に異常なしだ!」


 こうやってオレが、この世界で紋繰騎に乗ったりお喋りしたり魔法使ってる間も、ホームのみんなとか他の兄弟姉妹は今日も元気にやってるだろうし、こっちはこっちで好きに生きるさ。


「のんびりお喋りしてるかと思ったら、ユージ殿は探索魔法まで使えるのか! 上級貴族のお抱え冒険者じゃなければ、是非ともウチで働いてほしいくらい優秀だな!」


 あちゃ、ちょっと手の内晒し過ぎたな。


 ベルドさんとしては気を遣って、ラクスター家お抱え冒険者って付け加えてるんだろうけど、優秀って単語に反応したらしくて、むしろ周囲から感じる視線が明らかに増えてるよ。


 エリナと呑気にお喋りしてるように見えたのは悪いけど、個人情報の漏洩はやめてほしいなぁ。


 さっきみたいに握手求められるのもアレだけど、だからって優秀さを知る為にみたいな理由付けられて、稽古とか模擬戦とか最悪は決闘とか、そんなの挑まれるなんてまっぴら御免だぞ。


「そうは言っても、衛兵隊ってずっと紋繰騎担当ってわけにいかないんでしょ?」


「はははっ、それはもちろんだ。騎体があろうとなかろうと、俺達はインガルとそこに住む人々を守る、衛兵隊だからな」


「流石にそれはちょっとなぁ……紋繰騎大好きなオレとしては、どんなに誇れる仕事でも趣味は犠牲に出来ないし、むしろ衛兵隊の人達の方が優秀だと思うよ」


「ユージ殿にそう言ってもらえて、嬉しいよ」


「オレはホントの事を言っただけさ。もうすぐ南門に着くし、この後も安全に注意して行動するよ」


 お、良かった良かった、オレ達のやり取り聞いて注目する視線がグッと減ってるし、ベルドさんが街中に入る為に指示出し始めたから、それどころじゃなくなった。


「んー、なんか門の辺りに人が集まってるぞ」


「それは多分、衛兵隊が複数の大型魔獣を討伐したって話が、住民に広がってるからでしょうね」


「うんうん、オレにとっちゃホント都合がいいな」


 探索魔法で捉えた南門の周辺にある、衛兵隊の人達以外らしい大量の白い中立反応が全部住民なら、さっきフィナが活躍してくれた内の一つは、有効だったって事だ。


 その場に居たベルドさん達はかなり渋ってたけど、トカゲ共を退治したのは衛兵隊で、オレ達四人は協力者って形にして、目立たなくて済むようにしっかり根回ししてくれたんだよ。


「ユージさんって、やる事が凄かったり派手だったりするのに目立つのは嫌がりますよね、どうしてですか?」


「どうしてってそりゃあ、オレの趣味は 紋繰騎クレストレース を見て聞いて知る事だし、自分で思いっきり動かしたり、今よりもっといい騎体を手に入れるのがホントにやりたい事で、目立つのはその邪魔になるからだよ」


「大きな手柄を立てて、フィナ隊長のお家みたいな貴族になれば、いい騎体が手に入るかもしれませんよ?」


「んで自由と引き換えに偉くなったせいで、乗れない騎体をたまに眺めるような毎日を過ごすのか?そんなの御免だね、やなこった」


「はぁ……そこまで趣味を大事にする姿は格好いいですけど、フィナ隊長が聞いたら泣き崩れますから、絶対に言わないでくださいね」


 そりゃな、フィナの爺ちゃんが手柄立てたから男爵の地位もらったんだ、それをオレの趣味で否定する気は無いし、自分の考えを他人に強制するつもりなんてもっと無いから、安心してくれ。


「あぁ、ちゃんと分かってるよ。それよりこれから衛兵隊の凱旋だ、打ち合わせ通り門の手前でオレ達は左右に別れて向かい合わせで一時待機、行列が通過した後に入るぞ」


「はーい」


 そうだなぁ、今回の出撃で特にフィナとリッシュには苦労かけたし、後で飯奢るとか他にも何か労う方法、用意しとくか。


 あ、二人だけ特別扱いしたら雰囲気悪くなりそうだし、それに苦労って意味ならアリア達とか爺さんやルーナにハウザーさんも……。


 えぇい面倒だ!


 少しは金に余裕出来たんだし、この際だからみんなに何か買ってプレゼントする!


 今はごちゃごちゃ悩むより、さっさと凱旋済ませてみんなのとこに帰ろう。


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