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色んな意味で紋装騎の現状を知る


「さてと、それはともかく動作確認終わったし、次はどうする?」


「そうだな、リッシュの嬢ちゃんには、こいつの右手首をバラしてもらおうか。ワシは右肩の魔力路を交換するから、その間にあっちの三騎を損傷軽い順に鑑定して、結果を記録しといてくれ」


「はいよ、任せとけ。リッシュもお疲れさん、また後でな」


「はい、また後でお願いします」


 んじゃ次の騎体は四番目に倒した奴、主な損傷は右肩装甲上部と両肩の関節だ。


 お、決闘見てたからか、もう両肩の装甲外し始めてるな、 騎装士スキナー 五人娘の中じゃ一番小柄だけど、そんなのハンデにもならないって様子で気楽に作業してるのがいいな。


「よぉエリナ、調子はどうだ?」


「あ、ユージさん。ついさっき手を付けた所だから、まだなんとも言えないですよ」


「ははっ、そりゃそうだ。にしても、昨日聞いてちょっとビックリしたけどさ、騎装士ってみんな修理とか整備の補助出来るんだな。もしかして、そういう勉強とか訓練もここで習ってたのか?」


「確かに 士導院しどういん では整備も指導されますけど、その前から実地で覚えるんですよ。ゴロンゴさんやルーナちゃんみたいな腕のいい 造師ビルダー って少なくて、何時でも人手が足りませんから」



 うーん、つまり 紋繰騎クレストレース 関連全体の現状をまとめると、こういう事か。


 開発と製造を兼ねる造師もそうだし、それ以外の役割を割り振れる人手や優秀な人材が不足してて、そのせいで必要な技術も伸び悩んでる。


 けど魔獣は人間の事情なんかお構い無しだから、未熟な技術でも乗り切る為にコストが嵩む。


 この世界での国家戦力主軸な紋繰騎だけど、それでも出せる金や物には限界があるから、今ある問題が解決されなくて人手不足も解消出来ない。


 これまさに、悪循環だよなぁ。



「……なるほどな、エリナや他のみんなも現場叩き上げの腕前って奴か、女の子にこう言うのはなんだけど、カッコいいし尊敬するよ」


「えっ! そんなユージさんこそ、ほんとに格好良くて尊敬してますっ!」


「そうは言われてもオレは紋繰騎初心者だから、色々教えてくれると助かるぜ。ところで昨日って言えば、エリナってミトリエと仲いいんだな、やっぱ同じ騎装士だからか?」


 夕飯では席が隣合ってて楽しそうに話してたし、それにルーナも加わって賑やかだった。


「ミトリエちゃんって私と歳近いし、話しやすくて一緒に居ると楽しいんですよ」


「そっか、昨日はルーナも混じってもっと楽しそうだったな。あ、首周りに不具合見っけ」


 逆に言えば、両肩と首以外に不具合とか損傷は無いし、さっきの騎体と比較しても、倒れ方が違えばこれだけダメージに差が出るってことか。


「えっ、もしかして鑑定魔法使いながら、お話してたんですかっ?」


「それ言ったらエリナだって、話しながらバラし続けてたじゃないか。今見つけたとこは記録だけ付けとくから、両肩優先でよろしく」


「はい、分かりました!」


「それとな、今ルーナが整備とか修理に役立つ魔導具造ってるから、完成したらみんなで試してみようぜ、んじゃまた後でなー」


「えぇっ!? ……ユージさんもルーナちゃんも、すご過ぎですよぅ」



 さてさてと、次は同時に倒した内の軽傷な一騎、両肩と右膝以外に不具合なければいいけどな。



「って、おいおいもう終わってるのかよ、アリアとイリアは仕事早いな」


「……ん、いらっしゃいユージさん」


「……私達はこれから、エリナとリッシュを手伝いに行こうとしてた」


「そうか、でも少し待っててくれ。今からパッと鑑定魔法で確認するからさ」


「「じゃあ、見てる」」



 この二人、どっちも口調に同じ独特の間合いとテンポ持ってるけど、双子ってみんなこんな感じなのかね。



「うん、バッチリ修理終わってるな。さっきエリナにも言ったけど、修理とか整備出来るって、やっぱみんなカッコいいし尊敬するよ」


「……褒められるのは嬉しいけど、出来るのは当たり前だから」


「……私達はみんな、ずっと一緒にやってた」


「そういや五人で二騎を使ってたって、ハウザーさんが言ってたな。オレのワガママで一人一騎になっちまったし、大変だろ?」


「「そんな事ない、むしろ嬉しい」」



 ん? 嬉しいって、どういう――



「……今までは、隊長と誰か一人の組み合わせ」


「……だから、私達も一人ずつしか動けなかった」


「「でもこれからは、二人一緒に動ける」」


「もしかして一人だけ出てるのって、なんかマズかったりするのか?」


「……ん、お互いの痛みとか疲れが伝わるから、残ってる方が変に思われる」


「……特に、残ってる方の仕事が楽だと、みんなから不思議に思われるから」



――なんだっけこれ、確か双子は特別な何かを持ってるって、元の世界でも言われてたよな。



「なるほどなぁ、そんな時周りから元気そうに見えるのにって言われるのは、相手に悪気なくてもいい気分しねぇもんな」


「……ユージさんは、疑わないね」


「……どうして?」


 それはオレも知りたいんだよな。


 何でか知らねぇけど相手を見るだけで何となく、言ってる事が嘘かホントか判るんだ。


「どうしてって聞かれても、嘘吐いてないって判るからとしか言えねぇし、二人と同じだよ。って右足首と左のふくらはぎに不具合出てるな、やっぱ一騎分の余計な重さが負荷になってたか」


「「鑑定魔法とユージさん、どっちもすごい」」


「今ルーナが鑑定の魔導具造ってるから、それが完成したら魔法はすごくなくなるし、オレは最初からすごくないさ」



 身体も魔法も、女神様からの貰いもんだしな。



「「謙虚なユージさんも、好き」」


「昨日も言ったけど、そんな簡単にそういう事言うなよ。こういうのはもっと大切な相手に伝えてやれって、なっ」


「「……」」



 なんだ、二人して困り顔で黙ったまんま見つめ合ってるけど、変な事は言ってねぇぞ、オレ。



「んじゃ、オレは最後の一騎見終わったら戻るから、二人は爺さん達の手伝い頼むぜ」


「「分かった、また後で」」



 さぁて、残りは見るまでもなく大被害な奴、損傷箇所は両肩に左股関節に背面全体と、マジであのクソ野郎はバカな事しやがったもんだ。



「みんな、ただいまっ!」


 おっ、フィナが実騎訓練から戻ったか。


 って、それより鑑定の続き続き……あー、首と右肘にも損傷あり、左の上腕と手首も不具合、丸っと無傷な右足が奇跡みたいな満身創痍だし、全部バラして組み直すのと新品一騎造るの、どっちが早いかってレベルだなぁ。


「ユージ殿、ただいま戻りました。替えの衣服と身の回り品はお部屋に置きましたので、後でご確認ください」


「ハウザーさん、おかえり。買い出しありがとね、ってその格好はもしかして……」


「はい、私も手空きの時は修理や整備を補助しておりましたから、多少は手伝えます」



 普段はずっと執事服だから、オールバックなまんまの髪型と作業用の服との違和感パネェな!


 つか、執事さんまで整備と修理に参加するとか、ホントどんだけ金食い虫なんだよ、紋繰騎。


はい、というわけで今回はサブタイ通りに紋装騎の現状を知るお話でした。


各騎体の損傷や不具合を知り、紋装騎の業界(?)全体の問題を知り、騎体運用にはお金がかかる世知辛い現実を知って、勇司君が何を考えてどう行動していくのか……。


この先も、どうぞお楽しみに!

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