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整備と修理と斬新なアイディア


 なんつーかあれだ、 騎装士スキナー と 紋繰騎クレストレース が揃ってるこの雰囲気、やっぱワクワクするな!


「おーい!そろそろ一騎目の動作確認、始めるぞ!」


「おう!今行く!」


 昨日は既に動いてるとこしか見られなかったけど、今日は騎装士が乗り込むとこからバッチリ見られるぜ!


「えっとその、ユージさん。そんなに夢中で見られると、何だか恥ずかしいです」


「良かったねー、リッシュちゃん。普通なら、 紋纏衣クレスキン 姿の女性騎装士を無遠慮にジロジロ見るなんて、いやらしいとか言われたりするもんだけど、ユージ君からはそんな下心なんて欠片も感じないよ」


「そりゃ当たり前だ! いいか、紋繰騎を操る騎装士に敬意をもって接するのは、礼儀だ! 下劣な性欲向けるなんて、例え女神様が許したってこのオレが許さんっ!」


「そう思われるのは嬉しいですけど、何だか複雑な気分です。私、魅力ないのかな……」


 あん? なんでそうなるんだ?


「いや、リッシュは十分可愛いぞ」


「ふぇっ!?」


「昨日といい今日といい、ユージ君って……」


「お喋りはそのくらいにして、さっさと 騎導きどう せんか!」


「は、はいっ」


 ほうほうなるほど!


 あの金具は騎体に何かの理由で接続して、ハーネスの方はやっぱ身体を固定する為に使うのか!


「 騎導紋ガイスト の接続、完了したよ!」


「よーし、騎導しろ!」


「はいっ! 騎導!」


 おぉぉーっ!


 胸部ハッチ開きっぱなしだからコックピットが隅から隅まで丸見えだし、せっかくだから鑑定しとくか!


(【鑑定】……すっげぇーっ!)


 魔法の目で見た紋繰騎の中は魔力の通り道があちこちに走ってて、それが騎体の各部に向かってるのがよく分かるし、所々に動力源らしい魔力の塊が分散配置されてて、ちゃんと途切れないようにされてるんだな!


 とは言っても、全部問題ないわけじゃない。


「爺さん、あそこの魔力が通ってるとこ、なんかちょっと流れが悪いぜ」


「なんだ、鑑定魔法使っとるのか、こりゃ手分けして作業する方が楽で良いな!」


「えっ、普通はこういう事しないのか?」


「鑑定魔法を使える人って少ないし、そこまで出来るなら他の魔法も上手だもん、紋繰騎の修理とか整備なんてやらないよー」


「じゃあ、いつもはどうやってるんだ?」


「通常の手順で騎導させ、一定の動作を確認し、その動きや出る音で判断しとるぞ」


 ちょ、それじゃ音も動きも無い不具合は、そのまま放置してるって事だろ!


 しかもそれ、人によって差が大きいから最悪の場合、同じ問題が一斉に起きるじゃねぇか!


「待て、待ってくれ……もしかして、紋繰騎ってどこでも同じ方法で確認してるのか?」


「うむ、ワシが知っとる限りどこも同じだが、問題ないぞ。紋繰騎はそう難しい構造ではないからな、不具合が出とるとこから先を全部取っ替えて、外した物は鋳潰して造り直せばいい」


 うわぁ、テクノロジーのハイローどころの話じゃねぇぞ、それ……そうか、ハウザーさんが色んな意味で高価って言ったのは、こういうとこか。


「よし、まずは上半身の基本動作からだ!」


「はい、基本動作始めますっ」


 おっと、あまりの酷さにガックリして不具合見逃すなんて、鑑定魔法に期待してる爺さんとルーナや、紋繰騎に命預けてる騎装士に失礼だ。


 ふむふむ、頭部は問題無し、左腕も良し――


「右肩、さっき言った魔力の通り道に不具合ありだ」


「うん、後で魔力路の交換しとくね」


「右手首、異音出とるな」


「はーい、分解検査箇所その1、っと」


――マジかよ、オレには左手首の音と同じに聞こえたぞ、プロってやべぇ。


「確かに鑑定魔法でも右手首の異常は見えたけど、目と耳だけで魔法と同じ精度叩き出すって、とんでもねぇなぁ」


「そりゃ、年がら年中ずぅっと 紋繰騎こいつ ばっかり相手しとるからな、よっぽど特殊な騎体でもなきゃ大体は同じ設計に同じ構造だ、造りたての新品覚えとけば違いなんぞすぐ判るわい」


 その歳になるまで一体何騎見てきたのか、想像するだけで気が遠くなりそうだ。


「お、背中と腰までは問題無しか。派手に叩き付けられたんだし、異常出るかと思ったんだけど、人が乗ってる部分だからか結構頑丈だな」


「なら、その分楽になるね! 胴体の部品が一番大きくて重いし、分解だけでも大仕事なんだよー」


 部品点数は少な目だけど、その代わりデカいパーツが集中してるとこだし、触らなくていいなら作業も捗るから、ホッとしても仕方ないよな。


「よし次、両足だ!」


「はい、動作確認続けますっ」


「先に言っとくけど、立たせない方がいいぜ。右膝、左太腿、左足首に異常有りだ」


「むぅ、可動部の損傷は関節だけではなかったか。よし、確認終了だ! 止めていいぞ!」


「はいっ、停止しますっ」


 ふぅ、いいもん拝めて大満足だけど、鑑定魔法の連続使用時間は自己新記録更新しちまったし、なかなか手間かかるなぁ。


「わぁっ! いつもの三分の一くらいの時間で動作確認終わっちゃった! 鑑定魔法使ってもらうと、手早く済むから助かるよー!」


「いつもはこれの三倍以上かかってるのか、それであの高精度なんだから頭が下がるぜ」


「なぁに、こんなもん慣れだ慣れ。だがな、やはり寄る年波にゃ敵わん。長引くと疲れて後の仕事に障るようになってきとるし、手分けしてくれて助かったぞ」


「なぁ、鑑定魔法を使える魔導具って……」


「んなもん無いわい。考えてみろ、鑑定魔法は対象を見た結果を使い手の頭に送るんだぞ、それを魔導具から人の頭に送るなんぞ無理だ、古代の魔導具でもそんなのは不可能だろうよ」


 んー、でも魔導具に刻んで魔法を発動させる為の実行式はあるし、古代の魔導具にだって魅了っていう人の脳に作用する物もあったから、何とかなりそうなもんだけど、って結果を見る、か――


「あっ、そうか! それなら鑑定結果を目で読めるようにすればいいんだ!」


――魔法が意外と便利だから、元の世界の科学技術を忘れてたけど、モニター画面を魔法で実現すれば、誰でも鑑定魔法を使える魔導具が出来るじゃねぇか!


「なにっ、そんなこと出来るのかっ!?」


「多分な。幻視の魔法で鑑定結果を見せれば、誰でも読める情報を得られるはずだ。けど問題は、どうやって魔導具を造るか分からな……」


「あぁっなるほどっ! そうだよ、今までなんで思い付かなかったかなぁ、ボク! ごめん爺ちゃん、ちょっと魔導具造ってくるっ!」



 えっ、ルーナって魔導具造れるのか!?



「やれやれ、修理をほっぽらかすくらいだから、ありゃ終わるまで戻ってこんな。すまんが、大目に見てやってくれ」


「いや、鑑定の魔導具があれば便利だし、文句は言わねぇさ。それよりルーナは 造師ビルダー なだけじゃないんだな、すげぇ才能だよ」


「いんや、どっちかつうと才能より努力だ。生まれつき魔力量が少なくてろくに魔法が使えん事を、魔導具造って補っておったからな」


 そうか、無いなら造れって考えで動くタイプなんだな、いい職人じゃねぇか。


 でもそうすると、単に人質扱いなだけだったのがちょっと不思議だな。


「クソ野郎一味に利用されなかったのか?」


「自分で言うのはあれだがな、ワシゃ造師として多少名が通っておるから、その影に隠れとったようなもんだ。今にして考えりゃ、それだけはルーナにとって幸運だったのかもしれん」


「そっか、まぁそれはもう終わった事だし、これからは自分自身と世の為人の為に、いい魔導具造ってくれるとありがたいな。オレも必要な物とか金は出来るだけ出すからさ」


「改めて、ワシらを救ってくれたのがお前さんで本当に良かったと、そう思うわい」


 オレとしては、助けられるからやっただけって感覚だけど、絶望したアルゴーさん達の最期を知ってるだけに、爺さんは大げさだなんて、軽くは言えないな。


はい、というわけで遂に勇司君お待ちかねの、実騎の整備と修理が始まりました!


決闘中は出来るだけ丁寧に壊して無力化してましたけど、やはりと言いますか巨大兵器なので不具合や損傷はあちこちに飛び火するんです。


今回動作確認したのは反則負けした一騎、投げ飛ばされて一回転した後に地面へ叩き付けられましたので、遠心力が加わってより強い衝撃を受けた脚部のダメージが大きくなっています。

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