遅い新時代
「れいわ・・・か?」
元号の改元は様々なことを表している。それを思えば俺は泣かずにはいられなかった。
「聞いてるのにゃ。てっ、なんで泣いてるのにゃ」
不思議そうにキャシーは聞いてくるが、ちょうどそこへウルが入ってきた。
「おい、どうした」
「にゃ、にゃ、にゃあは関係ないのにゃ。本当なのにゃ。潔白なのにゃ」
キャシーはへたり込んでしまったが、ちょうどそこへ警部補が戻ってきた。
「な、なんなんだ」
俺が免許証を渡すと警部補も理解したらしい。こうして俺は新しい元号を知ることになったのである。
・・・・・
令和二年一月七日
残念ながら、この街の日本人たちが令和元年という年を過ごすことはできなかった。今ではあの若い男は内務省で保護し、帰ることができない日本の情報を共有すべくいろいろとやっているようだ。
そして七日もたつと正月と改元のお祭り騒ぎも収まっていつもの静かな街に戻っていた。俺はそんな丸々一週間の疲れから海辺の公園にある長椅子で地平線の向こう側を眺めていた。
「あれ、どうした」
背後に気配がしたので振り返ると後ろには朝まで夜勤だったウルが立っていた。俺は少し端に避けて座るように促す。
「夜勤だったろ。大丈夫なのか」
「体力が有り余ってるからな。二日でも三日でも丸々起きてられる。夜行性って言ったって夜に一番活動できるって意味で、昼間ずっと寝てるわけでもない。」
「そうか」
隣に座ったウルとはすでに五か月ウルといるが知らないことばかりだ。だが、新しい時代となった今、俺は覚悟を決める。
「なあ」
「うん?なん―「結婚しないか」―はっ?」
俺とウルの目が合う。目を点にしたかと思うと、動揺してうつむいてから再びこちらを見る。
「私が言おうと思ってたのに―――」
「お、ちょっと」
俺はそのままウルにのしかかられる。確かに遅かったかもしれない。本来であれば年が変わる前にこういうべきだったのだ。だが、これで俺たち二人も新しい形で一緒に暮らしていけるというものだ。