3 それぞれの選挙運動 その2
その6 有識者会議
その喫茶店に集まったのは、
孔子くん、老子くん、ニーチェくん、聖徳太子くん、空海くんの五人だった。
呼び掛けたのは孔子くんだった。
「今日、集まってもらったのは委員長選挙のことだ。」
「この前、手を挙げた何人かが、盛んに選挙運動をしているようだね。
このクラスは、トップになりたい奴が多いものね。
で、どうすればよいだろう、というのが今日の目的かな」
「さすが、聖徳太子、分かりが早い。このまま、今、選挙運動を熱心にやっている中の誰かが委員長になる。それでいいのだろうか、と思ってね。このクラスの中で、そういうことを一緒に考えてくれそうだな、と思える君たちに来てもらった」
特に始皇帝。あいつだけは委員長にしたくない、孔子くんは思った。あいつが委員長になったらクラスの秩序が乱れる。
聖徳太子は、友達であるゴータマ・シッダルタくんを尊敬していた。
今、ここにいる空海くんもそのはずだ。でもゴータマくんは、A組になってしまった。
A組も今、B組同様、委員長の選挙運動が盛んに行われているようだ。
アレキサンダーくん、シーザーくん、ジンギスカンくん、ルイ14世くん、劉邦くん、曹操くん、源頼朝くん。
A組も相当なメンバーが揃っている。
ゴータマくんも、
僕もそろそろ、自分の考えを周りに伝えていきたい、と思っている。と、言っていた。
ゴータマくんの考え方は素晴らしいと、聖徳太子は思っていた。
ゴータマくんの考え方はもっと世の中に知られていくべきだ。そうすれば世の中は上手くいく。
その7 番外 静御前ちゃん
あーあ、今年も義経くんと別のクラスか。なかなか同じクラスになれないな。つまらない。
静御前ちゃんは、自分の部屋で物思いにふけっていた。
北条政子ちゃんも、頼朝くんと別のクラスになってしまってがっかりしていたな。
頼朝くんと義経くんは、異母兄弟。
北条政子ちゃんは、将来、義理のお姉さんになるかもしれない人だから仲良くしなきゃ。
静御前ちゃんは、そんなことを思って顔を赤らめた。
さ、今日も練習に行ってこよっと。
静御前ちゃんは、躍りが上手かった。
その8 番外 紫式部ちゃんと清少納言ちゃん
紫式部ちゃんと清少納言ちゃんは、放課後連れだって帰っていた。
実はふたりは、相手のことがあまり好きではない。
でもこのクラスでは他に親しい女生徒もいないので、とりあえず一緒にくっついている。
「光源氏くんは、委員長に立候補しないのね」
「うん、彼はそういうことにはあまり興味がないみたい。色々な才能持っているから、がんばってみたらいいのに、と思うんだけどね。やっぱり彼は女の子のほうが関心が強いわね」
「彼、ほんとにハンサムだものね。藤壺ちゃんも紫の上ちゃんもA組になったから、さっそくB組の女の子たちに色々声をかけているわね。紫式部ちゃんは妬けないのかな」
「うーん、昔からのくされ縁で私は、光くんについては、何だか母親みたいな気持ちになってしまっているの。
ところで清少納言ちゃんは、今も色々書いているの」
「うん。このクラスのことも色々と書き始めているのよ。」
「清少納言ちゃん、文章上手だものね。またいつか読ませてね。私も何か書いてみようかなあ」
「そうしなよ。私、紫式部ちゃんとても文才があると思う。想像力もなかなかのものよ」
「ありがとう。私が書くとするなら小説かな」
その9 番外 モナリザちゃん
モナリザちゃんは、美術室で絵のモデルをしていた。
描いているのは、A組のレオナルド・ダ・ヴィンチくん。
多彩な才能を持つ少年である。
「A組もB組も委員長の選挙運動で騒がしいね。モナリザ」
「そうみたいね。あなたは興味ないの、レオくん」
「ええ、今は、あなたの美しさに夢中です。」
モナリザは微笑んだ。