決心
「行ってきま~す」
よし、今日も天気が良い。自転車に乗っていると風が心地良い、6時30分に家を出るのはちょっと辛いけど、朝の空気は澄んでいるような気がして好き、まだ誰も息をしていないような、全てが生まれ変わったみたいな気持ちになる。今までこんな時間に自転車に乗った事なかったから、分からなかった。
ガラガラな電車も好き、得した気分になれる、やっぱり県外の学校にして良かった。自分の事を知ってる人が居ない学校に行きたいって言った時は、友達も先生もママも反対した。それでもリセットしたかった、自分が選んだ事だから文句なんて言えない、頑張るしかない。
下りる駅に近づいて来るとやっぱり混んで来るんだ、この辺りでは一番大きい駅だから人も多くて当たり前か、よし着いた、自転車乗って頑張りますか!自分に言い聞かせるようにドアから飛び出した。
学校が近づいて来たら胸がキューって変な感じ、何だろう昨日の事を思い出したからだ。海斗君とあやの事、あやにそれとなく聞いてみようか、それとも見なかった事に・・・。
考えていても仕方がない、聞いちゃえばいいじゃん、そうだよ聞いちゃえ。
私は何で気になるんだろう・・・二人が初日なのに仲良く帰ったから、楽しそうだったから?分からない・・・。
それでも見上げれば桜が綺麗、それでいい。
そういえば、今日は海斗君中校庭で練習してないんだ。
「おはよー」
私に言ってるの?そっと振り返ったから一也じゃん
「なぁ~んだ一也かぁ、ビックリしたよ、って言うか、その格好って事は朝練?」
「なぁ~んだの前に、おはようでしょ、挨拶は大事だぞ」
「そうだね、おはよう一也」ニコッもおまけ。
「仕方ない一也君が歩きだから私も押して行きますか」
「別にいいけど、七海の自転車より走った方が早やいし」
確かに、でも私の事バカにして。
「ひどーい、 でももう部活参加してるんだ、すごいねやっぱり」
「一応特待だから」
一也は少し偉そうに言ったけど本当に凄い人なのかも。
「あれっ海斗君は一緒に朝練やってないの?」
「海斗は朝練さぼり」
「嘘!海斗君もさぼったりするんだ」
ビックリしたなぁ初登校の日から一人で朝練してた海斗君がさぼりなんて、信じられない。昨日も放課後練習してなかったし。
「ねぇ一也、昨日も部活あったよね」
「あったよ、何で?」
「昨日の帰りに海斗君見かけたから、昨日と今日も休みなんだぁって思って」
「さぼりたかったんじゃねえの、俺部室で着替えてから行くから、先に行ってて」
珍しくぶっきらぼうに、私の事を見ないで一也が答えた。
海斗君の事聞いたのがまずかったかなぁ
私は階段を上がり、踊り場の窓から外を眺めた、桜が昨日より散ってしまった。昨日はあの校庭に海斗君が居たんだ、上手だったなぁ。
「まだここかよ、教室にたどり着かないのかよ」
「げっはや」
「早くねえよ、お前が遅いんだよ」
何時もの一也だ、さっきは私の気のせいかも、
「みんなは?」
「だから教室にまだたどり着いてません」
ってちょっともがいてみせた、あっよろけてしまった、私を誰が支えてくれた。
「お嬢さん危ないですよ」
「結香!」
「おはよう、何してんの!危ないよ」
「ごめん、一也とふざけてた」
「一也居ないよ」
「あれっさっきまで居たのに」
「おはよう結香」
あらためて結香に挨拶したけど、一也は私を置いていっちゃうなんてあり得ない。もうっ。
ちゃっかり座ってるよ一也の奴め
「一也おは」
「結香おは」
「朝練キツい、ねむい、腹へった」
「なんだそれ」
「そうだ七海、昨日、マネージャー見学17人きてたぞ、学年で二人って言ってたから早く見学行った方がいいぞ、先着じゃないと思うけどさ」
「ほんとに?そんなに見学者居たの?」
「まぁ今年は俺がいるから俺目当てだろうけど」
「一也じゃねえだろ海斗だろ?」
「結香ちゃーん、一也君は傷ついた」
「本当の事言っただけだよ」
一也は心臓を押さえて倒れた、ハハハッ三人で笑ったけど、早くまゆに話さなくちゃ、その事ばかり気になっていた。
「まゆも海斗もまだ来ないね」
「だなぁ、もう来るだろ、結香も海斗かよ」
「そう、私も海斗派だから」
「なんだよ~結香は俺だと信じてたのに」
一也はまた心臓が痛くなったらしい。
「おはよう」
声の方を見たらまゆじゃん、
「おはよう、ねぇマネージャーになりたい人一杯みたいだよ、昨日見学一杯来たって一也が言ってた」
「そうなんだ、じゃ早く見学行かないと」
「あのね、私もマネージャーになりたいの、一緒に見学行かない?」
「遊びじゃないんだよ、いい加減な気持ちなら止めろよ」
えっ、海斗君・・・
「そんな事思ってないよ、ちゃんと考えたんだから」
何でいつもいつも私にばかり意地悪言うんだよ、泣きそうになったじゃん。
「七海は本気だよな、ちゃんとやれるよな」
一也が優しい事言うからまた泣きそうじゃん。
いつの間にか教室にいて、話を聞いてる海斗君に負けないんだから、私は絶対にマネージャーなる。決めた、海斗君がビックリする位凄いマネージャーになってやる。