シャンブロウ
キャプテンとクルーたちで惑星ミノウスの繁華街を歩いていた。
「酒が久しぶりに飲める!」
男たちはウキウキしてみんな笑顔だった。
私は下戸だから、あんまり付き合ってられないというのが本音だったけれど、チームワークをわざわざ崩すこともないから、黙って最後尾をついていった。
ギャー!
物凄い叫び声がした。
「あっちだ」
誰かが言って、みんな繁華街のはずれの路地に駆けつけた。
「うわあ」
ミノウス人の男が血相を変えて飛び出してきた。キャプテンが彼を抱き止めて、「どうした?」と聞いた。
「しゃ、シャンブロウ・・・」
「シャンブロウ?」
そのまま気絶したミノウス人の男を介抱しながら、クルーたちは顔を見合わせた。
「シャンブロウ・・・なんだっけな?どこかで聞いたことがあるんだが」
「女の化け物のことですよ。髪が生きていて意志があり、ひとの生気を吸いとる」
「そんなのがいるのか?」
「正確にはSFの登場人物です」
唯一女性の私にみんなの視線が集中した。
「女、恐い」
「うるさい!」
ほっといてちょうだいよ。普段から色気がないのなんのかんの言っておいて、こういうときもそんな態度?
「キャプテン、どうします?」
「怪物退治」
「あー」
酒は後回しかよとみんなの心の声がした。
「各自、光線銃の出力設定を上げておけ。仲間は撃つなよ」
「アイアイ」
路地裏の奥にじりじり進んでいくと、何人か人が倒れていた。
正直怖かったが、男勝りで通っているので率先して前に出た。
バッ!
「きゃああ」
何か、ネットのようなものが顔をめがけて飛んできた。
バシュ。
間一髪、キャプテンがネットもどきを撃ち落とした。
「ライオンのたてがみ、だな」
うごめいている糸状の塊にクルーたちは光線銃を浴びせた。
「ホームズに出てくる話ですね?」
「そう。殺人事件が起きていると思っていたら、奇妙な生物の仕業だったって話」
たしかにライオンのたてがみに似ていないこともなかった。
「口直しに酒を飲みましょう」
「そうだな」
しかし、酒場に入ったとたん、クルーたちは回れ右して逃げ出した。
「シャンブロウ・バーだ!」
ミノウス人の女たちはみんな、髪が豊かで、その・・・みんな怪物みたいだったのだ。
その後、宇宙船で旅行中、暇があると、私は長い髪をおろして、クルーたちを脅かすのがやみつきになったのだった。