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ミズバショウ

 夏も終わり紅葉が少しづつ目立ち始める。

 いつも通りの病室に寄った時、誰もいなかった。

 サラが退院した、めでたい事だ。

 でもそこで問題が発生した。

「連絡先知らない……どうしよう」

 もしかしてこのままもう二度と会えないんじゃ……そんな不安が頭の中でグルグル。


 最後の検診に向かった。彼女のいない病院。

「少しキモいな俺」

 流石にサラに執着しすぎているかもしれない。

 でも、このままお別れは少し腑に落ちない。

 そんな中検診は終わり帰ろうとした時後ろから誰かに抱きつかれる。

「リョーヤ君! 久しぶり!」

 その声が聞こえた時後ろにいる人物が誰かわかった。

「さ、サラ……ひ、ひ、久しぶり」

 あの指切り以降あまりサラに触れていない。なのに急にこんな大きいボディタッチ。頭が爆発しそうだ。

 腕をほどき前にまわってくる。

 今まで病院の服しか見てこなかったから初めて見るサラの私服にドキドキしてしまう。

 かわいい。

「何も言わずに急に退院しちゃったから、もう会えないかと思ってたの」

「俺も、不安だった」

「ごめんね、連絡先交換してなかったよね」

 そう言ってスマホを取り出す彼女に合わせて自分もスマホを取り出す。

「よし、これでオッケー」

 スマホの画面を覗きながら必死に操作している様子がまたかわいい。

「それより、退院したはずだろ? 何でまた病院に?」

「定期検診だよ、まだ完全に治ったわけじゃないからね」

 そう会話しながら画面に映るサラから送られてきた『よろしく』のメッセージにいとおしさを感じる。


 話しながら駐輪場へいき止めてあったバイクに跨った時、後ろに重みを感じた。

 サラが乗った。

 てっきり自転車とか出来ていたのかと思っていたが、徒歩だったようだ。

「リョーヤ君ってバイク運転できるんだね、かっこいい」

 このままどこかに連れ去りたいと思った。

 でも、今の俺にはそれが出来ない。

「言ってなかったけど、俺、バイクで事故って入院したんだ。だから後ろに人を乗せれる自信が……」

「大丈夫だよ、リョーヤ君のこと信じてるから。それに、もし事故で死んじゃっても大好きな人の隣なら別にいいかな」

「それって……」

 その言葉に嬉しくて動揺したと同時に口から出そうになった『俺の事好きなの?』と言う言葉を抑え込み黙ってヘルメット予備のを渡した。

 あたりはすっかり暗くなっていた。

「そうだ、俺のオススメの夜景を見に行こう」

「いいねそれ」


 坂道を登っていき山の駅まで行く、その近くから見える景色は高校の時からのお気に入りだった。

 街全体を見渡せる最高の場所。道路の端っこにあるからほかの誰かがいることは少ない。

「綺麗……」

 こんな時かっこいい紳士なら、『君の方が綺麗だよ』とでもいうのだろうか。

 夜景を見ているサラとは裏腹にそんな妄想ばかりをしてしまう。

 暗くて見えずらいが足元に咲く花が俺の足を撫でる。

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