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エゾギク

 出会ったあの日から俺は1日も欠かさずサラに会いに行った。

 1日中部屋で喋る時もあれば一緒に散歩したりもした。

 逆に起きた頃には既に横に座って本を読んでいる時もあった。

「いびき、凄かったよ」

 と言われた時は恥ずかしくて少し拗ねてしまった。次はこっちが寝てるあいだに忍び込もうと考えたが半分犯罪な気がしたので辞めた。

 お互いのことを沢山話した。サラは俺よりも2コ年下で来年には成人式を迎えるらしい。本来なら大学や仕事などをして休日はお洒落して遊んでると思うのに。それでも笑顔で過ごす彼女を見て俺は沢山励まされた。病名を聞いた時少し暗い顔で誤魔化された。だからなのか彼女から俺の怪我に関する質問はなかった。

 そんなこんなであっという間に月日が経った。

 ・

 ・

 ・

「リョーヤ退院おめでとう!」

 病院の玄関を出た瞬間クラッカーを鳴らして出迎える友人ケイスケ。

「恥ずかしいから本当にやめてくれ」

 周りの人たちの視線が突き刺さる。

「よし、今から飲みに行くぞ」

 出迎えの車に乗り込んだケイスケは当たり前のように後部座席に座らせようとする。

「まだ松葉杖なんだよ、そんな余裕あるか」

「へー愛しのサラちゃんとは毎日イチャイチャしてるのにー?」

「お前、何でそれを!?」

 意地悪く笑うケイスケを殴ろうと手を伸ばすも足がいうことを聞かず転けかける。

「何年の付き合いだと思ってんだよ、そんな事より車出すから今から飲みに行くぞ、高校の友達も呼んだから」

 その日の夜は朝まで飲んだ。

 久しぶりに会う友達と積もる話が山になっていた、次の日はぐっすり眠った。

 そしてその次の日は家族と久しぶりにご飯に行った。


 数日ぶりに病院に行く。

 定期検診という理由もありながら本当はサラに会いたくて心がはちきれそうだった。

 それでもここ数日は家の用事やらなんやらで中々出歩けなかった。

 久しぶりに通る廊下、その部屋の前で立ち止まった。

 中から聞こえてくる声、それの主はサラだが、明らかに普段のサラとは違う。

「うっ……あぁーー!」

 苦しんでいる。

 やっぱり重い病気だったんだ。

 中には看護婦さんや医者がいるのがわかった。

 今はまだ入れない。

 その日はそのまま帰った。


 次の日に改めてサラのところへ訪ねた。

 扉をノックして返事が聞こえて開ける。

「あ、リョーヤ君久しぶり」

「うん、久しぶり」

 笑顔でこっちを見てくるサラに安心と同時に心が痛む。

 こんな笑顔も昨日みたいに崩れるんだ。

 彼女は今でも無理をしてるのかもしれない。

「私ね、もうリョーヤ君が来てくれないんじゃないかって不安だったんだ」

 その言葉を聞いた時、俺は少しの後悔をしたと同時に改めて確信した。

 俺はこの子が好きなんだ、心の底から。

「ごめん」

「謝らなくても――」

「これからは出来るだけ沢山会いに来るよ」

「……。……うん、約束だよ」

 そして指切りをした。

 この時初めて彼女に触れた。

 その肌はとても冷たかった。

 ・

 ・

 ・

 それからは1週間に3回以上はサラに会いに行った。

 彼女は笑顔で迎えてくれた。

 足も治ってきた時にはボールで遊んだりした。外出の許可が出た時は近くの公園まで散歩したりした。


 俺の生活はサラ中心になっていた。彼女を考えない日なんて無かった。

 この日、サラから貰った花はいろんな色があって鮮やかだった。

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