一人用のマフラーなんだけどな
「んじゃ、適当に電車に乗ってぶらつこうぜ」
「んしょっと、うん、そうしよっか」
あれから朝食を食べ終わった俺達は制服から私服に着替えなおし出かけようとしていた、家の周りの店はほぼ毎日ぶらついている為特になにかあるわけでもなく飽きたため電車でどこか遠い所に行くか、そうなっていた、ちなみに今は家の前にいる
「っにしても、寒いな~・・・」
「寒いなら手、繋ご?」
「・・・おう」
両手を擦り合わせ温めていると妹は靴を履き終わったのか俺の前に来ては両手を出してきた、そして俺はその手を、片手を掴んだ
「?両手じゃないの?」
「両手じゃないのって、お前両手で手繋いだら歩けなくなるだろ」
「・・・あ、そっか、そういえばそうだね」
人差し指を顎に持っていっては瞬きを二回してはあははと顔を赤くし笑った、そんな妹に俺もつい苦笑い
「あっ、ねえねえ兄」
「ん?どした?」
「この靴どうかな?この前友達と遊びに行った時に買ったんだけど、似合う?」
「俺にファッションセンスを求められても・・・」
「男の子にファッションセンスなんて求めないから大丈夫、兄に聞いてるのは似合ってるか似合ってないかだけだから」
どう言えばいいのかわからず困っている俺に妹は靴を見せてくる、そこで俺が思った事は
「妹だけじゃねえけど他のみんなも同じ靴、というかブーツ?とか履いてるよなぁ、ちなみになんていえばいいのかわからねえからとりあえず似合ってるって言っとくけど」
「えぇ・・・なにその答え・・・、まぁ、いっか・・・って、うん、そうだね、みんなが履くブーツとかは大体同じだね、流行り物とかってあるし、まぁ私は流行り物とかはあまり履いたりしないんだけど」
「ふ~ん、まぁ似合ってると思うぞ、お前は大体なんでも似合うしな」
俺はそう言っては妹の手を引っ張り歩く事にした、ここでこうやって会話をしていてもいいがそれはそれで時間の無駄に感じるしそんな会話は家の中でもできる、そう思ったからだ
「・・・なんか誤魔化されたような気がするんだけど・・・?」
「それはお前の思い込みだって、それよりどこ行く?まだ9時だから後一時間くらいしないと店とか開かねえぞ?」
「それなら電車とかで時間潰せると思うから大丈夫でしょ、それより兄早く駅まで行こう、寒いよ」
「・・・確かにそうだな、って、そうだ、忘れてた」
「?」
俺はここでふと思い出した事があり鞄の中からある物を出した、それはマフラーだった
「さっききっと寒いからって事で持ってきてたんだよな、ほら」
「っん・・・」
そして俺はそのマフラーを妹の首に巻き付けた、これでだいぶ違うだろうと思った、本来なら俺が使うべきだがそこは兄として譲ってやろうと思った
「どうだ?これでだいぶ違うだろ?」
「・・・私だけ使うのはなんか嫌だ」
妹はそう言ってはマフラーを少し解いては俺の元へ近寄りマフラーを俺にも巻いてきた、だがそのマフラーは二人用とかじゃなく一人用の為かなり苦しい
「・・・妹、このマフラーは二人用じゃなくて一人用なんだけどな・・・」
「私だけ使うのはなんか不公平・・・だからこうしたの、ダメ?」
「…いや、駄目じゃないけどよ、歩きにくすぎるだろ」
「でも温かいでしょ?」
「!まぁ、うん」
俺はそんな妹の返答にどうでもいいかと思い苦笑いしながら駅へ向かった