俺という存在
一つ昔話をしよう。
と言ってもたかだか数年前の事であるが。
ある火の魔法の名家に一人の男の子がいた。
少々小生意気だがどこにでもいるような子供だった。
けど、彼には一つ問題を抱えていた。
それは、火属性ではなく他の属性の魔法に秀でていたこと。
通常なら落ちこぼれの烙印を押されてしまうが、そうはならなかったんだ。
何故か。
答えは極めて単純で他のやつらよりも才能があったからだ。
しかも正式な一族ではなく妾の子ということもあり当主も扱いに困る存在だった。
まぁ、自身の子供なんだ。そりゃ大いに困ったことだろう。
そんなわけでとても複雑な立場にいたんだ。
その才能があるが故に悲劇が起こった。
とはいえそれは当然の結末とも取れる。
分家の奴等がその子を秘密裏に葬ろうとした。
卑しい子供のくせにというのが奴等の言い分だろう。
その感情は解らなくもない。
でも、彼等は行動に移してはならなかった。
思っているだけなら何も起こることはなかった。
けど彼等は行動に移してしまった。
その子の母親を殺してしまうということを。
それを切っ掛けにして更なる悲劇が起こってしまった。
それは身内だけで止まらずに一部国をも巻き込んだ争いにまで発展しまった。
いや、争いなんという優しいものではないな。
ただ、一方的な殺戮と言うべきだろう。
まぁ、それから色々とあって数年後渦中の男の子、つまり俺こと一条由宇が日本に帰郷するところから始まるわけだ