鏡よ、鏡
「鏡よ、鏡。世界で一番美しいのは誰?」
『それはあなたです』
「鏡よ、鏡。世界で一番可愛いのは誰?」
『それはあなたです』
「鏡よ、鏡。世界で一番カッコいいのは誰?」
『それはあなたです』
「鏡よ、鏡。世界で一番性格がいいのは誰?」
『それはあなたです』
「鏡よ、鏡。世界で一番醜いのは誰?」
『それはあなたです』
「鏡よ、鏡。世界で一番性格ドブスなのは誰?」
『それはあなたです』
自分で質問しておいて、私は鏡を割りそうになる。それも鏡が淡々と答えるものだから頭にくる。
そして、ため息をついた。
「ねー、鏡。普通の会話って出来ないわけ?」
話しかけても鏡は答えない。このやりとり、正直いい加減飽きた。
私の目の前にあるのは、魔法の鏡だ。
魔法の鏡のやつ、話せるバリエーションが少なすぎるのだ。
一応、本当のことは言っているのだけど、どれにでもあなたですとか言われるのはさすがに飽きる。
それと、自分で言っておいて申し訳ないのだが、醜いこととか性格悪いのとかに同意されるのはやっぱり何度言われてもいい気分ではない。
だけど、仕方ない。
私以外の人間はこの世界から滅びてしまったのだから。
私は、この世界に残った最後の人間だ。
比較対象がいないのだから、世界で一番美しいのも醜いのも全部私ということになる。
「あー、もう少し話せるバリエーションが多ければ退屈だけはしないですむんだろうけどなぁ」
私は再びため息をつかずにいられない。
「ま、話し相手が誰もいないよりはマシか……」
そして、鏡を見て呟いたのだった。




