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1日1エッセイ  作者: ツクツクホウシ
5/7

2026.2.19 不審者って恐ろしい。

 ふと、小学生の思い出が蘇った。


 一人で歩く帰り道、歩道橋に差し掛かるところで、後ろから小柄な禿げたおじさんがやってきた。急いでいるのか、キビキビとした足取り。


 近づくにつれ、何かブツブツ言っているのが聞こえてきた。


「あの野郎、殺してやる、くそやろう」


 そういうことを、かなりの勢いでブツブツ言いながら、やっぱりキビキビ早足で、こちらに向かって歩いてくるのだ。


 私は震え上がった。小学校の、三年生くらいだったと思う。世間知らずだが、まったく何も知らないわけでもなく、想像力のたくましい時期。


 当時、メガネをかけた名探偵の漫画にはまっていた私の頭によぎるのは、もう殺人を犯した、ないし、今から犯そうとしている危ないオジサン、そういう想像だった。


 まあ実際に何があったのかはともかくとして、通常の精神状態でなかったことは確かだろう。そこで、かつての私はかなり賢明な判断をした。


 当時の私はこう考えた。まず、刺激してはいけない。どうやらあの人が言っているのは別の人のことのようだから、刺激しなければ殺される(本当にそういう思いだったのだ)ことはない。


 だが、この場から離れるに越したことはない。


 そんなわけで、私は刺激しないようにだんだんと歩く速度を上げていき、おじさんの視界から消えたあたりで一気に走り出した。


 この事件、と言ってもその後特に物騒なことはなかったのだが、これはかなり強く印象に残っている。


 それからこれは中学生の時だ。


 友人と二人、朝の8時頃、登校中に、そこはかなり人通りも車通りも多い通りだったのだが、目の前を歩くこれまた男性が、妙にフラフラしていることに気づいた。


 私は相手を刺激しないよう(またこの配慮だ)、声の大きさに気を使いつつ酔っ払っているのだろうか、などと友人と話した。


 まあ、どうやらその爽やかな朝の時間帯から、その男性はしたたかに酔っ払っていたらしい。薬物の可能性もあるかも、とひそかに警戒する私たちの前でふらふらと壁の格子につかまり、立ち止まってしまった。それ以上歩いていられなくなったのだろう。


 恐る恐る横を通る時、気付いた。スーツのズボンの股の辺りが、濡れている。この男性、酔っ払いまくってどうやらやらかしてしまったらしい。


 ともかく速やかに横を通り過ぎ、無害だった酔っ払いの恐怖から解放され、私たちは一息ついたのだった。


 と、このような、なかには忘れられたものもあるだろうが、学生の登校中の怖い体験はかなり覚えている。


 それは主に不審者への恐怖である……いかのおすし、だとか、幼い頃から教育され、教え込まれた恐怖である。


 登下校での些細な大冒険。ミッション・わりとポッシブル、とでも言おうか、そういう私の内面だけでの緊張が、静かに、私のなかで一つの経験として息づいている、そんな気がする。

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