妹が私の婚約者との子供ができたと嬉しそうに告げた瞬間全てがどうでもよくなり聖女の地位も王妃の座も全てあげることにしたが彼女が得られたのは心が壊れてしまうような事実だけだった
聖女になりたいのか、王妃になりたいのか、あるいは両方か。どちらにせよ妹はフラウから立場を奪いたくて、ついに姉の婚約者の王子を諭して奪い取ることにしたらしい。
浅ましいとしか思えない。なんでこんなにつまらないものが欲しいのか、さっぱり理解できなかった。
「お姉様、ごめんなさい?私が将来の王妃だったみたいです」
首の取れた蝋人形がそばに転がっているのを横目に、フラウは興味をなくした瞳で妹を見る。
「なんですの、その目は!悔しいとか、ありませんの?」
フラウは妹が王子を欲しがったことも理由の一つとわかっていた。しかし、胡乱な目で見ていたら目が気に入らないのか罵倒を繰り返す。
「王子と関係を持ったの?」
やたらお腹を摩るから、ぴんときた。妹は顔を赤くさせて自慢げに見せつける。全く羨ましくなんてない。
「ふふ、わかってしまいますのね?」
妹がこうなってしまっては、助けるすべはない。今まで諦めていた相手へ想いを伝え、嫁げる可能性が出てきたおかげで目が爛々と動く。
姉は次の日、王に会い妹のやらかしを告発して、王は息子のやらかしに諦めた瞳を浮かべて役目から解放してくれることになった。
「今までありがとう」
「いいえ」
お礼を言われたその足で彼の元へ行く。
妹は入れ違いで王に呼ばれて、息子の王子もそばに立たせた。婚約させるのだろうと、野心と恋心でときめきが止まらない愚か者に国王は告げる。
「私の息子は八年前にすでに亡くなっている。聖女の力で肉体だけ動くようにしてもらっていた。王位継承争いで国を割らせないように」
王の言葉に妹は初め、わけもわからずにキョロキョロしたがおふざけではないと知ると、王子を見てから自らの腹を見る。腹に子供がと消えかけそうな声を発した。だが、王は首を振る。
「あり得ない。生きてないものに生命は生み出せない」
「え、え、わたし、わた、し、に、死人と?え、あ、し、死んでる人、と」
でも、お姉様とは婚約していたじゃないかと心で辛うじて思った。その答えは。
「そなたが婚約したがるのを阻止するためだ。聖女は誰とでも婚姻できる権利がある。そなたの両親が野心を持ち、聖女の妹などという価値の高い肩書きを持っていれば、息子との婚姻を結ぼうとするのは目に見えていた」
先に自分が婚約しておけば、死者と婚約して結婚して……その先の悲劇を与えずに済むと自分の幸せを見送り、妹を守るためにその地位に立ち続けていたと語る。
その事実に、妹の心はバキッと折れた。姉に何もかも劣るコンプレックスを持ち続けて、ようやく姉から奪ったものが。
「わ、わたし、わ、ち、ちがっ!い、い、いっ!いやあああああ!!!」
妹は腹に宿るものがないと知るよりも、存在しないものと過ごした時間を思い出して心を完全に壊した。
それを王は静かに見ると、二人を幽閉先に連れて行くよう目で指示。すでに遠くで想人と過ごしているのだろう、恩人の聖女の幸福を祈った。
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