表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水鏡は半拍遅れて笑う-異世界最強の環の守護者、涙鍵の恋と逆ハーレム-  作者: NOVENG MUSiQ
第1章 返シテから返シタへ ― 水鏡と井戸が呼ぶ旅立ち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/72

第5話 予言の断片は、笑いながら刺さる

 翌朝、湖面が異様に澄みすぎていた。夜の偏りが残っている。私は舟の代わりに倒木を浮かせ、エイリクにロープを預けた。

 湖の中央、水が自ら割れて縦の亀裂を作る。そこに石板があった。表面は濡れているのに、拭っても消えない文字が読める。

 ——守護者は世界の継ぎ目を縫っていた。最後の縫い目は、彼女自身で塞がれていた。

 夜菜「過去形……?」


 水は記憶する。ここで誰かが未来を過去形にして、沈めた。

 石板の縁に、細い刻み。同心円の水文が連なる。ミズガルズ・リングの意匠と同じだ。


 エイリク「顔、怖いよ」

 夜菜「怖い顔の種類は多い。これは“予想が当たったかもしれない”顔」

 エイリク「当たったときは喜ぶものでしょ」

 夜菜「当たってほしくない種類のやつ」


 彼は私の足元の倒木を器用に支え、冗談を投げてくる。会話の温度が、冷たい読みを中和する。

 石板の下部に、夜に井戸で見たのと同じ濡字が現れた。

 ——返シテ。


 夜菜「誰に何を」

 エイリク「君が“世界の縫い目”なら、返されるのは君ってことにならない?」


 嫌な比喩が、上手だ。

 私は石板を湖底に戻す。本のしおりみたいに、未来へ差し込んでおく。取り出すのは、もっと強くて冷静なとき。

 岸に戻ると、村の長が深く頭を下げた。声を取り戻した村は、笑い方をぎこちなく練習していた。


 夜菜「井戸は共同管理に。日ごとの水番と、夜の見回りを交互に。水は偏ると、祈りが腐る」

 長「従おう。……森の魔女」

 夜菜「魔女の定義は後で再審議したい」


 エイリクは笑い、村の子どもが私の髪の色をこっそり真似した。笑い方は、ゆっくり常温に近づいていく。

 その夜、私は指輪を外さずに眠った。夢の中で、水が過去形で私の名を呼ぶ。呼ばれるたび、銀の光輪が瞳の裏に広がった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ