第48話 熔環綴、獲得——そして出立
祭壇の赤は音階を変え、熔譜台の譜線が丸く渦を巻いた。カラドリスは翼で円を描き、硬質の声を落とす。
カラドリス「名ヲ与エル。【熔環綴】——放熱ハ壊ス為デハナク、噛ミ合ウ為ニ落チル。君ハ命令ヲ使ワズ、ifデ縫ッタ。ヨシ」
メリン=アークフォイル(雷)は天井陰で青を瞬かせ、スワン(氷)は縁で短く翼を打つ。
スワン「非常口は美しく“一度”。以後は式で」
メリン「命令形ナシ、条件文ヨシ」
トキ「胸の圧、安定。味覚はゆっくり復帰。鍵氷は無傷」
ハヤブサ「媒体差の置換、収束。氷→時間遅延、雷→電位遅延、炎→温度差運用。既出ルール適用の統一語彙で、重複の説明は省略可能」
零雅「刃を出さずに来た。火がない場所で、刃を研ぎ直す」
カケス「矢は“道”を刺すために。次は外さない」
アジサシ「索は干して、軽く。日常の吊り橋を」
ゲンボウ「風は味方。平地ほどよく読める」
エイリク「平和な日常回、予約は今も有効?」
夜菜「予約、受理。ただし“返す規範”の範囲内で」
私は祭壇の縁に指で短く記す。『返シタ:熔岩の請求/受領:熔環綴・協調』。匂いは桂皮と鉄、そこへ柑橘白皮が少し。胸の空洞に新しい句点が灯る。半拍は私の編集権の内側で呼吸し続け、未払いの残量はゼロに近い。
エイリクが半拍遅れで笑い、金輪を一度だけ明滅させた。
エイリク「君の“返す”は、僕の居場所を増やす」
夜菜「未払いが減るほど、場所は増える。だから——帰ろう」
踵で三度。地を蹴る音が揃い、神殿は礼儀正しく背後へ沈む。導体街からの同行者たちに手を振る孤児の小さな影、その頭上に白い祝灯が点々と続く。
私はミズガルズを撫で、罅の乾きを確かめる。一本のまま、澄んだ線。
夜菜「従えず、従わせず——連れて行く」




