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水鏡は半拍遅れて笑う-異世界最強の環の守護者、涙鍵の恋と逆ハーレム-  作者: NOVENG MUSiQ
第4章 熔環は返し方で冷める ― 溶岩の神殿へ

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第43話 灰誓書、燃やさない誓いを燃やす

 祭壇前の広間は炉の息で脈を打ち、床の赤い文様は、私たちの靴音に半拍早く同意してから静まる。壁に薄く浮いた指示は——灰誓書(はいせいしょ)の提出。燃やしたくないものを、灰にして持参せよ。

 喉の奥で焦げ砂糖が広がり、胸の空洞は冷蔵庫めいた冷たさを保つ。私は火帳の余白へ短く線を引いた。『既出ルール適用:燃やすのは“記録の湿り”。原本は渡さない』。

 夜菜「書く。『半拍』『未使用の涙』『非常口の記録』」

 エイリク・モルグストランドが眉を動かす。

 エイリク「本当に? 非常口の記録まで」

 夜菜「“一度きり”は美しく脆い。既に使った。記録が湿って腐る前に燃やす。規範そのものは残す」

 トキ・ノクトウィンが私の手首で脈を取り、呼吸四拍を目で示した。

 トキ「良好。吐く長め。迷いは湿気になる」


 私は【霙綴】で文を短く刻み、句点に温度を落とす。記録は紙片に、紙片は灰に。切り口が刺さらないよう、【熔環綴】で縁を丸めた。灰は壺に移し、床の小さな地絡へ返す。━━"ぱち"。

 灰が沈む音を皮膚が先に聞いた。

 零雅「半拍は燃えない。燃えるのは“記録の湿り”だけ」

 梟雪が壺の縁を覗く。

 雪「灰って、軽いのに、温かい」

 夜菜「温度は言語。意味が残っていれば十分」


 壁に濡字が灯り、——返シタ。胸の空洞から余計な甘さが抜け、ミズガルズ・リングの罅は“乾いた線”のまま澄む。

 ハヤブサ・アステリオンは粉で床に式を引いた。

 ハヤブサ「媒体置換の系、整った。氷→時間、雷→電位、炎→温度差。命令形は使用禁止。次は“条件文の署名”」

 私は頷く。非常口の記録が灰になった分、足取りが軽い。合図は三回。踵で地を軽く叩くと、広間の息が一拍だけ静止して、すぐに私たちを通した。

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