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水鏡は半拍遅れて笑う-異世界最強の環の守護者、涙鍵の恋と逆ハーレム-  作者: NOVENG MUSiQ
第4章 熔環は返し方で冷める ― 溶岩の神殿へ

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第38話 火祀門、傷の持込は仕様変更で

 火祀門(かしもん)は肉のアーチだった。石と肉の境目が曖昧で、触れると体温が返ってくる。濡字は冷酷に簡潔——『傷一つ、提出』。

 トキ・ノクトウィンが私の手首で脈をとる。

 トキ「泣けないぶん、傷の記憶が“乾きすぎる”。代用は匂いで補完できる」


 私は鼻腔の奥で配合を組む。樟脳二、焦げ砂糖一、柑橘白皮〇・五、そこへ石松香を微量。皮膚の内側に“火傷の記述”だけを作り、【霙綴】の句点で縁を丸める。

 夜菜「『原本は提出しない』——雷章と同じ。今回は“仮傷”で課金だけ払う」


 アジサシが門の外に索の輪を置く。

 アジサシ「過徴収なら引き戻す」


 門の肌は一瞬だけ(あま)く曇り、私の掌に礼儀の火花が触れて離れる。━━"ぱち"。

 ハヤブサ「徴収対象をΔTに限定。既出ルール適用で通過、良」

 私は曇りに指で一語、『返シタ(仮傷)』。返したのは請求の形式だけ。本物の傷は私の編集権の下にある。

 門の裏側には、赤い通路が胃袋のように収縮していた。歩く速度を上げるほど、壁が“赦して”くれる奇妙な優しさ。私は足を遅くする。やさしいは、たいてい早い。早いは、たいてい飲み込む。


 零雅「刀は出さない。だが、飲み込む喉だけは裂ける」

 夜菜「裂かないで、狭める。縁だけ固く」


 私は掌で通路の縁に【雷環綴】の図形を熱用に再配置し、【熔環綴】のプロトタイプで“飲み込みの縁”を丸く固めた。噛みやすさは通行の自由に似ている。飲み込みやすさは支配に似ている。門は前者にだけ協力させる。

 通路が解像度を落とし、匂いから甘さが一匙抜けた。私は胸の空洞に“抜けた甘さの温度”を保存する。泣けない代わりに、嗅覚で領収書を取るのは、もう癖だ。

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