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第8話:潜入

任務当日。まだ日が低い朝、道路をタイヤが滑る。

秋野「いい?今向かってる所に着いたら、相手が来るまで待ち伏せ、来たら殺して変装」

シン「任せてください!!」

黒澤「いやぁあのシンが大役とはねぇ。いつの間にそんな出世したの?」

シン「へへへへへ」

秋野「否定しろ。身長で選んだだけね?」

黒澤「あぁそんなこったろうと思った」

シン「え?」

秋野「てか黒さんいつ殺し課来るの?」

黒澤「いつ移るって言ったんだよ」

秋野「もったいないよ?まあまあ強いのに」

シン「秋野さんが人を褒めた…ってことは熱あります?」

横腹を肘で突かれた。

秋野「まあまあね??まあまあだよ?」

黒澤「褒めるならしっかり褒めてくんないか?」

シン「というか確かに黒澤さん強いのになぜ送迎課に?」

黒澤「死ぬわけにはいかなくなったのさ」

秋野「なんで?あ〜、嫁さんか」

シン「嫁さん??結婚してたんですか?!」

黒澤「そのとおり〜指輪気づかなかった?」

薬指を見せる。

シン「武器かと思ってました…」

黒澤「ハハッ。あぁそれと、もしかしたら近々赤ん坊ができるかもしれなくてね」

シン「おめでとうございます!!!」

秋野「おめでと〜そりゃ死ねないか」

緊張感はまるで無く、大任務へと向かっていった。



日は高く、空ももうオレンジがかっている。

秋野「…やっと来た。あいつらだ」

喫煙所の中で小声で話す。

秋野「さっき言ったとおりにね」

シンは静かに頷く。

─半透明のドアが開き、変装相手たちとその同僚が和気あいあいと入ってきた。

シン(4人…人数不利!)

同僚「あ、すんません隣失礼しますね」

秋野「どうぞどうぞ」

タバコを吹かしながら会話をする。

相手4人が座った瞬間─

─ザシュ!!

通常、喫煙所では聞かない鈍い音がその場にいた全員の耳に響いた。

秋野の隣に座った相手の首には、深くナイフが刺さっていた。

同僚「!?!」

聞き取れない声を発していた。

相手たちは武器を取り出すまもなく、3回の銃声と共に倒れた。

秋野「よし、ようやく任務が進行したね」

あまりに一瞬の出来事だったがため、シンは絶句し固まっていた。

秋野「レベチすぎた?悪いね笑」

相手のポケットやら何やらを漁る。

シン「すっっっげー!!今どうやったんですか?!」

秋野「魔法だよ」

シン「マジすか…?」

秋野「うんマジマジ。それより早く行くよ」

血で塗れた床を避けつつその場を後にする。

シン「はい!あ、後で魔法の動画撮らせてもらっていいですか?」

秋野「撮ってどうすんの?」

シン「メディアに晒してぼろ儲け〜!」

みぞおちを肘で突かれる。

シン「すみません…てか、防犯カメラとか大丈夫ですか?」

秋野「ここらのカメラは機能してないからモーマンタイ」

相手から奪った鍵をくるくる回しながら、ピッと反応した車に向かう。



秋野「ついた、ここがアジト。君は無口にするんだからね、わかった?絶対に喋るなよ?」

シン「モーマンタイ!!」

秋野「無理そう」

立派な敵アジトの正門に着く。

警備員「会員証の提示を…あぁ、南さんとコウさんですね。どうぞ」

秋野(南)「どうも」

秋野からはシンの知らない声が発された。

窓を閉じ、ゲートが開く。

シン(コウ)「なんですかその声?」(小声)

秋野「俺は姿だけでなく声も変幻自在なのさ」

いつもの不敵な笑みを浮かべ、車を停める。

モーマンタイで侵入に成功した。

同僚1「おいお前たち。どこに行っていた?休憩時間はとっくに過ぎてるぞ!」

秋野(南)「すまん、一服してた」

同僚1「ハァ…とにかく早く交代しろ」

「管理室」と刻まれたカードキーを渡される。

秋野(南)「どうも」

同僚1「コウ。お前煙草吸わないんだから無理についていかなくていいんだぞ」

シン(コウ)「…」

秋野(南)「いいだろ別に」

同僚1「本来真面目のコウが、お前に巻き込まれて不真面目に見られるのは可哀想だろ」

秋野(南)「あーあ早く交代しないとな」

同僚1「おい!」

駆け足でその場から離れる。


カードキーをドアに差し込む。

ピピっと音が鳴り、ドアの鍵が解かれる。

秋野(南)「失礼、遅れました」

中にはたくさんのモニターが設置されていた。防犯カメラの映像、なにかの数式…

そしてキーボードにボタンやスイッチ。

同僚2「おう。早く席着け」

秋野とシンは並んで座り、モニターを眺めていた。

シン(なんの数式なんだろう…)

秋野(俺ら除いて8人か、余裕だね)

同僚3「こちらコーヒーです」

2人の前にコーヒーが置かれた。

秋野(南)「いつもありがとう」

同僚3「お気になさらず」

シン(俺コーヒー飲んだらお腹壊すんだよな…)

秋野はコーヒーを嗜んでいた。目線をシンに送る。

シン(飲めってことか、耐えてくれ!俺のお腹!)

口にコーヒーを運ぶ。

シン(苦すぎじゃね?)


30分後。シンは冷や汗をかいていた。

秋野が(どうした?)と書いた紙を机の下から見せた。シンは自分のお腹をさする。

秋野(トイレの場所分かる?)

シン、小さく首を横に振る。

2人は立ち上がり、ドアに向かう。

同僚4「どこへ行く?」

秋野(南)「あぁちょっとお手洗いに」

同僚4「片方ずつ行け。お前たちの管轄ががら空きになってしまう」

秋野(南)「えー俺もコウも限界なんですよ」

同僚4「ダメだ」

シン(やべー!俺だけじゃトイレにたどり着けないし、うろちょろしてたら怪しまれるし…)

秋野(南)「一瞬ですよ俺トイレ早いんで」

同僚4「そういう問題ではない」

秋野(南)「……じゃ先にコウどうぞ」

シン(マジか)頷く。1人で廊下に出る。

シン(やべーよこの状況も俺のお腹も)

とりあえずお腹が限界なので勘に任せて右に向かう。

同僚5「お疲れ様です…コウさん?お腹さすってどうしたんです?」

シン(コウ)「…」

同僚5「…トイレなら逆ですよ?」

シンは無言で振り返り、道を戻る。

同僚5「…………」


シン(神様お願いします目の前にトイレが現れるかお腹の痛みが消えますように俺何か悪いことしたっけって人の命奪ってるじゃん終わったでも神様からしたら人より地球のほうが大事なんじゃないかそれなら地球温暖化とかいろいろ起こしてる人間消してるって俺それいいことしてるよね)

俯いて思考に気をそらしているが限界が近づいていた。ふと前を向くと──

─「TOILET」

神が降臨したようだった。


シン(コウ)は無表情だが、心なしか満足気に見えた。


数時間後、外は真っ暗に。

同僚4「交代時間だ!」

1人が大きく声掛ける。

同僚6「お疲れ様でした〜」

同僚7「おつ〜」

秋野(南)「お疲れーっす」


冷たい風を浴びながら外へと出る。

秋野たちの車はゲートを通り抜けた。

秋野「おつかれ」

シン「はぁ〜〜お疲れ様でした」

秋野「トイレ大丈夫だったんだね笑」

シン「はい、なんとか…これから神様への信仰をもっと深くしようと思いました」

秋野「なんでトイレから神様に…?そういやトイレ行くまでに人に会った?」

シン「あ、会いました。お腹さすってたからか察してくれて、道は逆ですよって教えてもらいました!」

秋野「なるほどねー…」

シン「どうしました?俺ちゃんと無言無表情でしたよ?」

秋野「いや別に。明日もそれでね」

シン「任せてください!」


?「……はい」

そのとき、携帯を耳に当て窓から秋野たちの車を見送る者がいた。

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