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第2話 踏み出した一歩

第2話です、遅くなり申し訳ございません。

 **


 目を覚ませばそこは異世界だった‥‥‥‥‥とかいうわけでもなく、オレは何故か変な真っ白な空間にいる。


 オレは確か、浜宮を庇って車にはねられて、それで‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。

 それでどうしたんだ?まさか死んだのか?でも今は普通に体があるぞ?五感も神経も肉体にもどこにも異常はないように思うけど‥‥‥。



「ふむ、混乱しておるようだな、人の子よ」


 え、だれ?


 声のした方に恐る恐る視線を向けると、そこには、白銀の髪にエメラルドのような瞳、神々しいオーラの青年がいた。

 思わずその場に平伏した。

 強制的な力が働いたわけでもなく、恐れをなして縮み上がったわけでもなく、ただそうすることが当たり前だとそう感じた。


「よいよい、楽にせよ。私がそなたを呼び寄せたのだからな。そなたはいわば客人だ。客人が気張っているのはこちらも本意でないのでな。‥‥‥‥まあ、それはそうとして、そなたさては記憶を勝手に封印したであろう?」


 え、記憶を封印?どういうことだ?

 ていうか封印の仕方も分からないのに、どうやってやるんだ?


「いや、知りません‥‥‥‥。でも、そうなるとオレがなぜこの空間にいるのかの説明がつきませんよね」


「そうか。まあ、そなたの状況は良く分かった。精神状態を考えるとそなたはこのままの方が良いかもしれぬな‥‥‥‥、でもそうすると後々面倒くさいことが起こりそうだ‥」


「どうかしましたか?もしかしてオレ、貴方に何かしましたか?というか、ここはどこですか?」


「いやしておらん、安心し給え。あと、ここは神界と現象界の狭間だ。‥‥‥おや、そういえば名乗られた記憶がないな。そなた、名は何という?」


「オレは藤上 陽輝です」


「陽輝か‥‥‥‥よい名だ。申し遅れたな、私はウェルバス。この世界の宇宙そのものを司る神だ」



 『神』


 その一言でようやく腑に落ちた。

 彼にはなんとなく違和感を感じた。まるで、人間じゃないような違和感が。

 気高く美しい佇まい、思わず自然に平伏したくなるような神々しいオーラ、古風な口調、神御衣のような服装‥‥。全てが人間離れしていた。


 そうか、『神』。それならすべてに納得がいく。


 ていうかオレ、神と普通に話していたのか‥‥‥‥。なんかすごいな。


「ウェルバス様、なぜ私はこのような空間にいるのでしょうか?状況と言動から判断するとウェルバス様が私をここへ招待したのですか?」


「そうだ。そなたは不慮の事故で亡くなった。齢16歳であり、生きたい未来があったのにも関わらず。だから、そなたにはもう一度生きる機会を与えようと思う」


「え‥‥‥‥どういうことですか?」


「要は、そなたを別の世界にこの記憶を持ったまま転生させるのだ。そなたの世界の言葉で言うと‥‥‥‥"異世界転生"というのか?‥‥兎に角、それをする。これは決定事項だ。何か文句があれば今のうちに聞いておいてやろう」




 ‥‥‥‥‥‥‥‥え、オレが異世界転生???



 良いのか??ずっと憧れだったものがこうも簡単に成されてしまって。


「いいんですか、オレなんかが‥‥‥‥‥‥‥‥。誰か他の人でなくても良かったですか?」


「そなたが良かったのだ。だから、安心しろ。‥‥さて、そろそろ時間だ、行くとしよう」


 ウェルバス様がそう言って柏手を打つと、一筋の光がオレの目の前に現れた。


「あの光に向かって進めば、大きい銀色の扉がある。それを開けて進めばそなたは生まれ変わるはずだ。

 よいか陽輝、これからそなたは生まれ変わり、藤上 陽輝としての人生をここで終える。‥‥‥だがな、『自分は藤上 陽輝であり、多くの人からの愛情を貰って精一杯生きた』ということだけは、決して忘れてはならぬぞ」


 その言葉がずしんとした重みを伴ってオレの心の中に入る。嫌悪感はないが、それが本当だとは何故か無条件には信じられなかった。


「はい、分かりました。ありがとうございました、ウェルバス様」


「ああ、達者でな、陽輝」



 その言葉を聞いたが最後、オレは二度と振り返ることなく前に進んだ。

 やがて、大きな銀色の扉の前まできた。


 扉は、派手な彫刻も、眩いほどの光もないが、厳かで上品な雰囲気を纏ってそこに在った。



 これを開けて進めば、オレは異世界転生できる。



 そう考えると今世に未練を感じる。もっと話したかった、夢をかなえたかった、楽しい思い出を作りたかった──────浜宮と。


 でも、もうやめだ。


 愚かで意気地なしの藤上 陽輝はもう終わりだ。





 さよなら、藤上 陽輝(オレ)。さよなら、皆。‥‥‥‥‥‥‥‥さよなら、浜宮 晃成。




 オレは力いっぱい扉を押し開け、先に広がる銀色の世界に飛び込んだ。

読了ありがとうございました。

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