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第1話 薄幸少年の終わりと始まり

新連載始めました、よろしくお願いいたします。


※注意※

この小説はBL(ボーイズラブ)を主題としたものです。無理な方は閲覧をお控えください。


主人公(受け)が基本的に情緒不安定&不幸体質です。そしてヒーロー(攻め)が人によってはクズに見えます。

それでも大丈夫な方はどうぞ。

 **



陽輝(はるき)‥‥‥‥いや藤上(ふじうえ)、俺と別れてくれ」


 アイツが放ったその言葉は、ナイフのような鋭さでオレの心を抉った。


 声の主はオレの彼氏─────たった今元カレになった浜宮 晃成(はまみや こうせい)で、眉目秀麗、成績優秀、スポーツ万能という正しく『完璧』な人間だ。


 晃成とオレが付き合い始めたのは3年前、中学2年生のころで、入学式で一目見て以来ずっと好きだったけど、男だから恋は叶わないと諦めていた時に向こうから告白された。


 それから3年間ずっと喧嘩もせずに穏やかに過ごしていたはずだ。



 なのに、なのに‥‥‥‥。




「‥‥ねえ、何で?オレの何がダメだったの?直すから、頑張るから‥‥‥‥‥オレを捨てないで」


 気づけばそんなことを口走っていた。そして、無意識に声は震えていた。




 少しの沈黙が流れた後、晃成は口を開いた。


「好きな人が、できたんだ。今までにないくらい、とても愛おしいんだ。‥‥別に藤上がダメだったわけじゃない。ただ、俺はあの子が良かったんだ。‥‥‥今までありがとな、これからは普通の友達に戻ろうぜ、俺たち」




 なんだよ、それ。

 勝手すぎるだろ。


 そもそも友達でいた時間より恋人でいた時間の方が長かったのに、今更どうやって接すればいいんだよ。


 もうわからない、わからないよ‥‥‥‥。

 でもせめて、相手がどんな人かを知りたい。


「分かった‥‥‥、でもこれだけ教えて。‥‥誰が好きなの?」


「‥‥‥‥鳴海 果莉那(なるみ かりな)だ」


「‥‥‥‥‥‥‥そっか。応援してるよ」


「ありがと、藤上。やっぱお前は最高の友達だよ。これからもよろしくな」



 鳴海 果莉那、か。あまり話したことはないが、こちらも晃成と同じで『完璧』な人間で、悪い噂は一度も聞いたことがない。



 ─────────そうだよな、そりゃあそうだ。


 オレみたいな、可愛げもないくせに無駄に女々しい、めんどくさい男よりも、鳴海みたいな美人の方がいいに決まっている。



 ‥‥‥結局オレは誰にも愛されないんだ。


 **


 ──────数日後



 ある日、晃成から突然電話がかかってきた。


「‥‥はい、もしもし」


「もしもし、藤上、大事な話があるんだけど」



 その一言にもしかしたら───と淡い期待を抱いたが、次に放った一言であっさりと打ち砕かれてしま

 った。



「俺、鳴海と付き合うことになったんだ。藤上には色々迷惑かけたから一番最初に報告しようと思ってさ」


「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥そっか」




 何で、何で、何で何で何で何で何で何で、何で!!

 何で‥‥‥‥。


 どうしてオレをそんなに傷つけるの?オレは晃成に何か恨まれるようなことをしたのか?

 何で‥‥‥‥‥‥‥もう全部何が何だか分からない。晃成は全く悪気がないのかも、何を考えているのかも、全部が。



 それだけされても尚、こちらの傷を抉る晃成を憎らしいとも、恨めしいとも思えなかった。

 電話越しで、声の弾み具合だけでわかる、晃成の嬉しそうな表情が頭によぎって、耐えきれずに半ば強引に電話を切った。


 **



 ──────さらに数日後





 鳴海と晃成が付き合ったという話はすぐに校内に広まった。

 他の人たちから色々噂されているが、すべてに共通して言えるのは「二人はお似合い」ということだ。この話に関する噂で悪いものは一つもない。


 未だに引きずってちゃんと祝えていないのは多分オレだけだ。



 こんな自分が大嫌いだ。晃成に振られたあの瞬間に、大人しく本音を殺していればよかったのに。

 でも多分、この先もずっと引きずって、結局一生祝うことはないんだろうな、と考えながら帰路に就く。


 ふと前を見ると、晃成が一人で帰っていた。

 以前なら当たり前のように話しかけて、当たり前のように一緒に帰っていたけど、もう今は無理なんだろう。

 これから卒業までずっとこんな日々が続くのか、辛い‥‥‥‥‥‥‥。


 **


 学校の最寄り駅の前の横断歩道は、車がとても多く事故が起きやすい。

 そのため、いつもなら近所の人が車に横断中だと知らせる旗を掲げてくれるのだが、今日はなぜがいなかった。

 まあ特に気にすることでもないかと思っていた。


 信号が青になった。オレの前には晃成がいて、いつものように歩いていた。


 すると左から、有り得ないくらいうるさい、車のマフラー音が聞こえてきた。信号は赤のはずなのに、減速する様子がその音からは全く感じられなかった。

 嫌な予感がした。



 次の瞬間、車は横断歩道よりも奥の方の踏切に現れた。スピードを落とすこともなく、むしろ上げながら近づいてくる。

 その走行するであろう道には晃成がただ一人で歩いていた。





 このままでは、晃成が死んでしまう。


 そう理解した瞬間、オレは走っていた。そしてありったけの力を込めて前にいた晃成を突き飛ばした。



 そこで一安心して足を止めてしまったのが良くなかったのだろうか。

 真横から車が来た。多分時速100キロ以上のスピードで。オレは次に何が起こるのかを悟って諦めた。


 衝撃が体中に走った。ガシャン、ガシャンと割れた車窓のガラス片が舞う音が聞こえる。


 オレの体は宙に高く舞い上がり、デコボコしたコンクリートの上に、後頭部から強く叩きつけられた。



 そんなことがあってもなお、車は全くスピードを変えずに走り去っていった。


 全身が燃えるように熱い。意識は朦朧としていて、気を抜いたら気絶してしまいそうだった。



 そうだ、晃成は‥‥‥‥晃成はどうなった?


 霞の意識の中で前を見ると、そこには無表情で冷たい瞳の晃成が、傷一つ負わずに立ち尽くしていた。



 やめろ、そんな目で‥‥‥‥そんな目でオレを見ないで‥‥‥‥‥‥‥。



 ただでさえ晃成と別れたことによって狂いそうだった思いを、壊れそうだった心をかろうじてつなぎとめていた細い一本の糸がぷつんと切れた。



 オレは近くにあった、車窓の鋭利なガラス片を手に持ち、腹に思いきり刺した。




 ああ、やっとこれで‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥救われる。



 消えゆく意識の中で最後に見たのは、相も変わらず無表情で冷たい瞳の晃成________()()だった。


読了ありがとうございました。

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