揺らぐ絆、交錯する想い
エルザの突然の告白により、カインが激昂。セシリアの呆れ、パーティの雰囲気が悪化。決定的な衝突が起こる。
「レオン、私たち、結婚するべきじゃない?」
その言葉が酒場に響いた瞬間、場の空気が凍りついた。
「……は?」
俺は思わず聞き返す。
「だから、その……レオンとは相性がいいし、戦場でも信頼できる。だったら、自然な流れとして——」
「待ちなさい!」
突然、カインが立ち上がり、椅子を引き倒すほどの勢いでテーブルを叩いた。
「お前のような肉体脳にレオンは渡さない!」
「はぁ!? なんでカインがそんなことを——」
「理由なんかどうでもいい! そもそも、戦士と魔法使いでは根本的に合わないんだ!」
エルザは眉をひそめ、カインを睨み返した。
「何よ、それ! 私はレオンと信頼し合ってるの! それに、戦士と魔法使いが合わない? そんなの単なる偏見でしょ!」
「偏見じゃない。事実よ! 魔法使いは知性と計算が必要だけど、戦士は突っ込むだけ! そんな単純な思考じゃ、レオンの隣には立てないわ!」
「単純って……!」
エルザが拳を握りしめる。
「まあまあ、お二人とも落ち着いてくださいな」
セシリアが静かに口を開いた。
「ですが、エルザ、いきなり『結婚』は少し飛躍しすぎではありませんこと?」
「……それは……」
エルザが言葉を詰まらせる。リリスは腕を組みながら、にやにやと二人のやり取りを眺めていた。
「うーん、でもさ、これってアプリのせいじゃない? ほら、恋愛適性が考慮されてるって話だったし」
「それは……」
俺は言葉を濁した。
この状況、確かにアプリが関係している可能性はある。エルザが俺を意識しすぎるのも、カインが過剰に反応するのも、何かしらの影響を受けているのかもしれない。
「じゃあ、こうしましょう」
セシリアが微笑みながら提案する。
「この問題について、冷静に話し合う場を設けるというのはいかがかしら?」
「話し合う? 何を?」
「もちろん、私たちの関係についてですわ」
俺はため息をついた。そんな簡単に片付く問題じゃない気がする。
「……まあ、いいか。一度、ちゃんと話してみよう」
エルザとカインは互いに睨み合いながらも、渋々頷いた。
その後、俺たちは一旦席を移し、冷静になれるよう個室のテーブルへと移動した。
「まず……エルザ、本当に俺と結婚すべきって思ってるのか?」
俺はできるだけ穏やかに聞いた。
「そ、それは……」
エルザはもじもじしながら視線を逸らす。
「確かに、少し考えすぎたかもしれない……けど、私はレオンのことをすごく信頼してるし、一緒にいると安心できるの」
カインが鼻で笑う。
「そんな気持ちで結婚なんて言い出すなんて、浅はかね」
「なによ! カインはレオンのことどう思ってるのよ!」
カインは一瞬、言葉に詰まったが、すぐに冷たい表情で言い放った。
「レオンは私にとって、大切な仲間よ。だからこそ、くだらない感情論でパーティを壊されたくないの」
セシリアがゆっくりと紅茶を飲みながら、小さく頷く。
「確かに、今の状況では感情が先行しすぎていますわね」
リリスはくすくす笑いながら俺の肩を叩く。
「いやぁ、これは思った以上に面白いことになってきたねぇ!」
「お前は楽しんでる場合じゃないだろ……」
「だって、これからどうなるか楽しみじゃん? まさか本当に恋愛でパーティが崩壊するなんて、ドラマみたいだよ!」
俺は大きく息を吐き出した。どうやら、今すぐに解決できる問題ではなさそうだ。
こうして、俺たちのパーティは、大きな岐路に立たされることとなった。