表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マッチングアプリで最強パーティを作った結果!!!  作者: MMM
エルディア魔塔国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

412/526

北境イェブールの影-1

 ガラハッドの言葉――

「……何か異変が起きている」

 その一言は、ギルド本部の喧騒の中でも底冷えするような重みを帯び、場にいた全員の背筋をわずかに硬直させた。

 晩冬と初春の境目。季節の狭間にざわつく空気よりも、不穏な予兆は確実に濃かった。外の街路ではまだ雪解け水が石畳を濡らしているはずだが、この瞬間、レオンたちの胸に広がったのは春の兆しではなく、嵐の前の暗い雲の影だった。


 もちろん、こういう時に真っ先に口を開くのは――

「……ねぇレオン。こういうのって、また面倒ごとの匂いしかしないんだけど?」

 出た、リリスの悪い勘。だいたい当たるから余計に厄介だ。リリスの声は軽やかに響いたが、その裏に漂う緊張は、冗談の衣をまとった刃のように鋭かった。


「慎重に情報を集める必要があるな。魔物の増加、行方不明、負傷者……どれも偶然の域じゃない」

 レオンは依頼板を見つめつつ、冷静に状況を整理していく。その瞳は氷の湖面のように揺らぎなく、しかし深い底に波紋を隠していた。

 エルザは腕組みしながら、きゅっと唇を結んだ。

「北境……話を少し聞いたことがあります。魔物が増える時は、必ず背景に“何か”があります」

 その声は硬く、だが揺るぎない。まるで剣を鞘に収めたまま構えるような緊張感を帯びていた。

「そうよね。自然現象だけで説明がつくなら、こんなに一斉に活性化しない」

 カインはいつもの冷静な口調で言う。

「気象、魔力流、地脈――要因はいくつかあるけれど、全部に“煽り”が必要。誰かがやっているか、何かが動いているか……」

 その言葉は淡々としているが、まるで冷たい霧が床を這うように、場の空気をさらに重くした。


 セシリアは胸元で指を組み、静かに息を吸った。

「どちらにしても、人が巻き込まれるのは避けたいですね。早めに動いた方が良さそうです」

 彼女の声は春風のように柔らかく、しかしその奥には祈りにも似た切実さが宿っていた。

「いやぁ〜、ほんと面倒だよね。でもさ、わたしたち、結局こういうの放っておけないんだよねぇ」

 リリスが肩をすくめつつ笑った。

 陽気な声で話してはいるが、指先がわずかに緊張しているのをレオンは見逃さない。その笑いは、夜の焚き火に舞う火の粉のように一瞬の明るさをもたらすが、すぐに闇へと溶けていった。

(――また、嵐の前の匂いか)

 エルディア魔塔国の件、帝国との不穏な影……嫌でも思い出す。過去の記憶が、冷たい風のように背後から忍び寄り、未来の影と重なり合う。


 ガラハッドは腕を組み直し、低く続けた。

「今の段階で確実に言えるのは一つ。北境で何かが動いてる。そして、それは放置できる類いじゃない。……お前たちは、依頼をいくつか片づけながら待機していろ。すぐに本部からも追加情報が届くはずだ」

「了解しました」

 レオンは仲間たちと視線を交わし、短く返事をした。その声は短いが、確かな決意を含んでいた。


 こうしてレオンたちは、北境イェブールの影を意識しつつ、しばらく王都ルミナスを拠点に動くことになった。

 窓の外では、まだ冷たい風が街路を吹き抜けていた。だがその風は、ただの季節の移ろいではなく、遠く北境から届いた不穏なささやきのように感じられた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ