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マッチングアプリで最強パーティを作った結果!!!  作者: MMM
エルディア魔塔国編

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冒険者の炉火

 昼下がりの王都ルミナスは、季節の狭間に揺れる呼吸をしていた。

 晩冬の冷たさがまだ街の隅々に残り、屋根の端には氷の欠片がきらめき、街路樹の影には白い霜が薄く積もっている。だが、その冷気の奥底には、初春の兆しがひそやかに芽吹いていた。風に混じる陽気の匂いは、まるで遠い野に咲き始めた花の予告のように淡く漂い、人々の頬を撫でていく。

 陽光は確かに力を取り戻しつつあり、石畳の上に落ちる影を柔らかく溶かしていた。

 行き交う人々の歩みには、冬の重さを脱ぎ捨てるような緩やかな明るさが混じり始め、商人の声もどこか軽やかに響く。子供たちの笑い声は霜を砕く鈴の音のように澄み、街全体が静かに春を待つ鼓動を刻んでいた。

 レオンたちは、その柔らかな陽の下を並んで歩いていた。鎧の金属が陽光を受けて淡く輝き、仲間たちの影が石畳に寄り添うように伸びていく。

 レオンたちの視線の先には、王都ギルド本部――石造りの巨大な建物がそびえていた。白銀に近い輝きを放つその威容は、遠くからでもひときわ目を引き、まるで街の中心に立つ守護者のように堂々と構えている。


 赤いマントをなびかせるエルザが、肩をぐっと回しながらぼそりとつぶやいた。その声は冬の風に溶け、街路の石畳に淡く響く。

「久々に戻ってきたけど……やっぱり王都は風が冷たいわね」

 王都の風は、塔の影を抜けて吹き抜けるたびに、肌を刺すような鋭さを帯びていた。だがその冷たさの奥には、春を待つ街の鼓動が潜んでいる。

「肌に刺さるような冷たさですね。でも、空気は澄んでいて気持ちがいいです」

 セシリアが白い吐息をふわりと漂わせる。その吐息は陽光に透け、まるで小さな祈りの欠片が空へ昇っていくようだった。彼女の微笑みは冷気を和らげ、仲間たちの歩みに柔らかな光を添える。

「ま、でもこの寒さ、盗賊にはちと堪えるわねぇ。南の海風にあたったあとのこの冷気って、気持ちが切り替わらないというか」

  リリスが肩をすくめ、軽口を叩く。その声は街角の喧騒に混じり、冬の空気を少しだけ軽やかにした。

  レオンは笑いをかみ殺しながら応じる。

「今回のエルディア魔塔国は暖かかったからな。気温差で調子を崩すなよ」

「いやいや、あたしほどタフな女はいないっての、レオン?」

「はいはい……」

 仲間たちのやり取りは、冷たい風の中に温もりを灯す焚き火のようだった。

 その横で、カインは静かに歩を進めていた。裾の長いローブが風に揺れ、銀髪が陽光を受けてきらりと光る。表情は普段どおり涼しいが、黒杖の透明な球体にはまだエルディアで得た魔力の残滓ざんしが響いているのか、時折光を吸い込み、星屑が漂うように瞬いていた。それはまるで、カインの内に秘められた力が、季節の境目に呼応して煌めいているかのようだった。

 街並みの霜はまだ冬を忘れず、陽光は確かに春を告げている。冷たい風と柔らかな光の狭間を歩む彼らの姿は、次なる旅路の予兆を映す影絵のように、王都の石畳に刻まれていた。


 ギルド本部へ続く石の階段に差しかかったとき、レオンはふと足を止めた。冬の名残を抱えた風が頬を撫で、レオンは視線を上げる。

 そこにそびえるのは、王都の中心を象徴する堂々たる建物。陽光を受けた白亜の壁は、長き歴史を刻んだ威容を静かに誇示し、まるで帰還者を試すかのように立ちはだかっていた。

「……戻ってきたな」

 低く漏らした言葉は、石段に反響し、仲間たちの胸にも余韻を残す。

「うん。なんか、帰ってきたって感じがする」

 エルザが柔らかく答える。その声には、過酷な旅路を終えた戦士の肩の力が少し抜けたような、安堵の響きがあった。赤いマントが風に揺れ、陽光を受けて鮮やかに瞬く。それはエルザ自身の心の解放を映すようでもあった。


 重厚な扉の前に立つと、内側から冒険者たちのざわめきが骸骨のように響き渡る。

 金属のぶつかる甲高い音が混じり、酒場から漂う香ばしい匂いが鼻をくすぐる。剣戟の余韻と酒の香りが交錯するその空気は、まさに冒険者の巣窟の証。

 王都のギルド本部は、いつも活気に満ちていた。それはただの喧騒ではなく、幾千の冒険者が夢と危険を背負い、ここから旅立ち、ここへ帰還してきた証の響きだった。

 扉の向こうに広がるのは、戦いと友情、栄光と挫折が交錯する舞台。レオンたちの胸に、再び新たな物語が始まる予感が静かに灯っていた。


 扉を押し開けた瞬間、外の冷気を押し返すように、暖かな空気がどっと押し寄せてきた。それは焚き火のような熱気と、人々のざわめきが混じり合った生きた空気であり、旅の疲れを一瞬で溶かすような包容力を持っていた。

 酒場の方から、聞き覚えのある豪快な笑い声が響く。その声は木の梁を震わせ、杯の音をかき消すほどの力強さを帯びていた。


「おおい!レオンたちじゃねぇか!」

 あの声だ。振り向くと、そこに立っていたのは大柄な男――グラハム。腕には幾重もの傷跡が刻まれ、まるで戦場の記憶をそのまま刻んだ石碑のようだった。彼の笑みは豪快で、傷跡すら誇りに変えるような輝きを放っている。

 その脇には、同じように分厚い筋肉を誇り、同じような笑い声を響かせる二人が並んでいた。肩幅も声の響きも、まるで鏡写しのように揃っていて、仲間内で「三体のグラハム」と噂されるのもうなずける光景だった。

 三人が揃って笑うと、酒場の空気そのものが揺れ、暖かな空気がさらに厚みを増す。

 その場にいるだけで、彼らはまるで炉のように周囲を温め、冒険者たちのざわめきに力強い拍子を刻んでいた。

 レオンたちの帰還を告げるその笑いは、王都のギルドにとってもまた一つの季節の節目を告げる鐘の音のように響いていた。

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