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マッチングアプリで最強パーティを作った結果!!!  作者: MMM
エルディア魔塔国編

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333/522

カフェの午後、真実はまだ遠く-2

 ――鈴の音。

 音は小さく、しかし確かに空気を震わせた。

 入ってきたのは、白一色の服をまとった若い男だった。髪は淡い灰金色、整った顔立ちに笑みを浮かべている。だがその笑みは、どこか貼りついたような薄さがあった。まるで、鏡に描かれた笑顔がそのまま顔に貼り付いたような、温度のない表情。

「来た……!」

 ラヴィが小声でつぶやく。

「間違いない、あれがエイザ」

 レオンは男を観察した。身なりの整い方が不自然に上等だ。

 仕立ての良い上着に、指には金の指輪が三つ。手元の癖、歩き方――それは、金を持つ人間ではなく、金を“見せたい”人間の仕草だった 虚飾の鎧を纏った者の、演技の残響。


「エイザ、ね……」

 リリスが戻ってきて、二つのカップを置きながら囁いた。

「名前がエルザと似てるけど、雰囲気は真逆だね。こっちは“信用してはいけない方”の音」

「おい」

 エルザが眉間に皺を寄せたが、リリスは舌を出して笑っただけだった。その笑みは、緊張の糸に風を通す者の、軽やかな魔法だった。


 エイザは店の中央あたりのテーブルに腰を下ろし、周囲をさりげなく見回した。その視線には落ち着きがなく、何度も入口と窓を交互に確認している。まるで――待っている。その落ち着きのなさは、獲物を待つ者の静かな焦燥。


「誰かを待ってるね」

 セシリアが小声で言う。

「落ち着きがなさすぎるわ。あの手つき……」

 カインの視線がわずかに鋭くなる。

「詐欺師か、情報屋か」


 ラヴィはメモ帳を手に取る。ペン先が紙を走る音が、焙煎機の金属音に混じって微かに響く。

「この瞬間、取材開始!」

 リリスが小さく肩をすくめる。

「また勝手に始めたよ、あの子」

「止めても無駄だ」

 レオンはささやき、静かに椅子に背を預けた。

「それに……あの男の相手を確認する価値はある。見届けよう」


 店の中には、音楽もない。ただ、カップの触れる音と、人々の小さな話し声が、淡く空気を揺らしている。

 冬の日差しがガラス越しに傾き始め、外では鳩が屋根の上で羽を休めていた。


 時間が、ゆっくりと進む。

 ――そして。


 カラン。

 扉の鈴がもう一度鳴った。音は、先ほどよりも少しだけ重く響いた。

 入ってきたのは、一人の老女だった。年の頃は六十を越えているだろうか。

 灰色の髪を小さくまとめ、襟のついた上等な外套を身に着けている。だが、その歩みは慎重すぎた。

 目の奥には、どこか怯えと不安が混じっている。その瞳は、過去に何かを失った者の、静かな揺らぎを宿していた。


「……あれが?」

 ラヴィがささやく。

「うん。まさか本当に」

 エイザはその瞬間、笑顔を広げた。待ち人が現れた、と言わんばかりに手を振る。

 白い袖が、昼の光を反射してわずかにまぶしかった。その光は、まるで罠に差し込まれた祝福のように、静かに空気を染めた。


 老女は驚いたように立ち止まる。けれど、その笑顔に釣られるように、ゆっくりと歩み寄っていった。

 彼女の手には、小さな革の鞄。中には――おそらく、彼女にとって大切なもの。金か、希望か、それともその両方か。その鞄は、彼女の信じるものすべてを詰め込んだ、静かな祈りだった。


 リリスが息を呑む。

「……わかりやすいね。完全に騙されるタイプ」

 カインが低くつぶやいた。

「あの目の動き、もう術中よ」


 セシリアが唇を噛む。

「止めるべきかしら……?」

 レオンは答えない。視線の先で、老女が微笑もうとしている。

 その顔には、信じたいという一心がにじんでいた。その微笑が、哀しくも温かく見えたのは――冬の光のせいだろうか。


 老女の影が、テーブルの上に差し込む。

 エイザは立ち上がり、椅子を引いた。まるで紳士のように、丁寧な仕草で。

「どうぞ、お掛けください」

 そう言ったように、唇が動いた。


 老女は小さく会釈し、両手で鞄を抱えたまま、ゆっくりと腰を下ろす。その動きは、信頼という名の橋を渡る者の、静かな一歩だった。

 そしてその橋の先に、何が待っているかは、まだ誰にも見えていなかった。

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