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マッチングアプリで最強パーティを作った結果!!!  作者: MMM
エルディア魔塔国編

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332/523

カフェの午後、真実はまだ遠く-1

 昼下がりの光は、冬のくせにやけに柔らかかった。

 冷たいはずの空気が、どこか春の予感を含んでいるようで、石畳の街路に落ちる影も、角を丸めていた。


 エルディア魔塔国の首都リオフェール――その南区にある小さなカフェ《モルグの羽根》は、まるで時間の流れから切り離されたように静かだった。

 通りに面した外壁は淡い灰色。扉の上には黒い鉄の看板。羽ばたく鳥の意匠が刻まれ、その下に古い活字体で“モルグの羽根”と書かれている。まるで、空を飛び損ねた記憶が、そっと羽根を休める場所のようだった。

 扉を押すと、鈴の音が一つ、ひやりとした空気を震わせた。

 店内には、深煎り豆の香りと、遠くで焙煎機が鳴る金属の音。窓際に置かれた観葉植物の葉が、冬の光を透かして薄い影をテーブルに落としていた。その影は、静かな会話の余白のように、揺れながらそこに在った。


「ここよ、ここが例のカフェ!」

 ラヴィーレ・ナインズ――皆からはラヴィと呼ばれるその若い新聞記者が、わずかに背伸びをして、店の奥の席を指さした。

 栗色の髪が跳ね、帽子のつばの影から琥珀の瞳が光る。肩に下げた荷袋は今日も重そうで、まるで取材ノートのほかに、世界中の噂話まで詰め込んでいるかのようだった。その姿は、静かな店内に差し込まれた熱のように、軽やかに跳ねていた。


「ふむ……落ち着いた店だな」

 レオンが低くつぶやく。

 藍色の旅装の裾を払って椅子に腰を下ろすと、視線を店全体へと滑らせた。レオンの眼差しは、戦場で敵陣を見渡すように冷静だった。

 向かいに座るカインが、無言のままエクリプス・コアを膝に立てている。杖の透明な球の中で、魔力の粒がゆらゆらと浮かんでいた。その光は、静かな水面に落ちた星屑のように、脈打っていた。

「ま、せっかくだしコーヒーぐらい頼もうよ」

 軽口を叩いたのはリリスだった。紫のショートヘアが陽に透け、猫のような金の瞳が細められる。その瞳には、どこか楽しげな光が宿っている。

「どうせ張り込みなんだから、退屈な顔してたらバレるって。あたしが注文してくるね」


「待ちなさい、リリス。まだ――」

 エルザが制止するより早く、リリスはもうカウンターへ向かっていた。黒いレザーの装束の裾が軽やかに揺れ、腰の短剣が小さく鳴った。その音は、静かな店内に差し込まれた風のようだった。

「……まったく。あの調子じゃ記者より盗賊の方が向いてるわ」

 カインがため息を洩らすと、セシリアが穏やかな笑みを浮かべた。

「でも、あの子がいると空気がやわらぐでしょ?緊張しすぎてもいい結果は出ませんから」

「それは……否定できないわね」


 ラヴィはというと、すでにテーブルに広げたメモ帳に何かを書き込んでいる。ペン先が紙を走る音が、焙煎機の金属音に混じって微かに響く。

「えっとね、今から来るの。彼――エイザって名前。白い服を着てる、やけに軽そうな顔の男よ。昨日もここに来てたの」

「その“誰か”ってのが、例の資金流出に関係してる可能性があるんだろ?」

 レオンの言葉に、ラヴィは勢いよくうなずいた。

「そう!でも相手の顔は見えなかったの。だから今日は現場で突撃取材するのよ!」

「突撃……?」

 エルザが眉をひそめる。

「まさか直接話しかけるつもりじゃないだろうな」

「もちろんチャンスがあれば話しかけるわ。だって、見てるだけじゃ記事にならないもの!」

「……話を聞けと言っても、彼女は聞かないわよ」

 カインが淡々とつぶやく。

 セシリアは苦笑しながら紅茶を口にした。


「記者魂って、勇気と無鉄砲の境界を曖昧にするのね」

 ラヴィはそんな言葉を背に受けながら、テーブルの向こう側の人々を観察していた。その瞳は、琥珀の光を宿しながら、静かに跳ねていた。まるで、冬の光の中に差し込まれた一滴の熱。その熱が、やがてこの静かなカフェに、物語の火種を落とすことになるとも知らずに。


 昼の光が斜めに射し込み、カップの縁が微かに輝く。その光は、冬の空気を透かして、静かに店内を撫でていた。まるで、時間の流れが一度だけ緩やかに呼吸をしたかのように。

 その光の中で、扉が再び開いた。

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