ギルドの異変と魔物の暴走
ギルドの広間では、混乱が広がっていた。
レオンたちが駆けつけると、数体の魔物が暴れまわり、ギルドの職員や冒険者たちが必死に応戦している。
「クソッ、ギルドの中にまで魔物が入り込むなんて……!」
レオンは剣を抜き、リリスがすかさず短剣を構えた。カインは魔法の詠唱を始め、セシリアは即座に治癒の準備を整えていた。
ギルドの床には魔物の爪痕が残り、崩れた家具が散乱している。その中で職員たちは必死に避難し、冒険者たちは汗を滲ませながら戦っていた。
「こんなところで戦闘になるなんて、思ってもみなかったね!」
リリスが苦笑しながらも、素早い動きで魔物の懐に入り込み、短剣を振るった。だが、魔物の目が一瞬赤く輝き、動きを揃えて反撃に出た。
「おかしい……動きがバラバラだが、時々妙に統率されている……」
カインが眉をひそめながら魔法を放つ。雷の魔法が魔物を直撃し、火花と共に床が焦げる。しかし、魔物は怯むことなく再び向かってきた。
「やっぱり、これはアプリの異常と関係があるのか?」
レオンが剣を振るいながら、周囲の状況を確認する。ギルドの冒険者たちも戦っていたが、全員が苦戦している。
「くそっ……エルザがいれば、前線をもっと安定させられるのに……!」
レオンは歯を食いしばった。防御を担う存在がいないせいで、戦線が乱れがちだった。
「レオン、考えるのは後! 今はこの場を何とかしないと!」
リリスが声を張り上げる。彼女の短剣が一閃し、魔物の喉を裂いた。
そこにギルドマスターのガラハッドが、巨剣を構えて戦場に飛び込んできた。
「全員、落ち着け! 冷静に連携を取れば対処できる!」
ガラハッドは一閃で数体の魔物を薙ぎ払い、冒険者たちの中心に立った。その堂々たる姿に、冒険者たちは次第に士気を取り戻していった。
だが、レオンたちはすぐに異変に気づいた。
「魔物の一部が、まるで何かを守っているような動きをしている……?」
カインが観察しながら呟く。その視線の先には、ギルドの奥にある重厚な鉄扉——地下書庫への入口があった。鉄扉は鈍く光を反射し、周囲には異様な冷気が漂っているように感じられた。
「まさか、地下書庫に何かあるのか?」
その言葉に、ガラハッドが険しい表情を浮かべた。
「……この襲撃、ただの偶然とは思えんな。」
レオンたちは魔物を倒しつつ、地下書庫の扉へと近づく。しかし、その瞬間——
「全員伏せろ!!」
エドモンドの鋭い声が響いた。
次の瞬間、魔物の一体が爆発するように四散し、黒い霧が周囲を覆った。霧は肌にまとわりつき、視界を奪い、冒険者たちの息が荒くなっていく
「っ……なんだこれ!? 体が重い……!」
レオンが膝をつきそうになる。周囲の冒険者たちも次々と倒れ込んでいった。
「これは……瘴気の魔法!?」
カインが驚愕の表情を浮かべる。
「レオン、大丈夫ですか!? 皆さん、光の加護を——!」
セシリアが即座に浄化魔法を唱え、光が広がると、霧が次第に薄れていく。
「助かった……! だが、この魔物たち、ただの野生種じゃない。誰かが意図的に仕向けた可能性が高い。」
レオンが剣を握りしめる。
「お前たちは下がれ!」
エドモンドが前へ出た。彼は片手剣を抜くと、魔物の群れに向かって突撃した。剣は魔物の急所を正確に捉え、血飛沫が舞う中でもその動きには一切の迷いがない。無駄のない動きで敵の攻撃をかわし、鋭い一閃で次々に魔物を切り裂いていく。
「強い……!」
リリスが驚いた声を漏らす。
「こいつらは、ただの魔物ではない。何者かの手によって操られている可能性がある……ならば、迅速に片付けるまでだ!」
エドモンドは魔力を込めた剣を振り下ろし、周囲の魔物を一掃した。
「すごいな……」
レオンも息を飲む。その剣技は洗練されており、実戦経験の豊富さを感じさせた。
「いずれにせよ、地下書庫を調べる必要があるな。」
ガラハッドが扉の前に立ち、鍵を開ける。その重厚な扉が軋む音を立てて開くと、内部から冷気が漏れ、まるで何かが待ち構えているような空気が漂ってきた。
「私はここでギルドの指揮を執る。地下の調査はお前たちで行け。油断するなよ」
レオンたちは頷き、地下の暗闇へと足を踏み入れた。
地下へ降りる階段は長く、石造りの壁に魔導灯が灯る薄暗い通路が続いていた。魔導灯の青白い光が壁に影を落とし、不気味な模様を描きながら揺らめいている。
「……何か嫌な感じがするね」
リリスが周囲を警戒しながら呟く。
「この場所、ただの書庫じゃない。結界が張られている……普通の文献を保管するだけなら、ここまで厳重にする必要はないはずだ」
カインが慎重に観察しながら言う。
奥へ進むと、古代文字が刻まれた重厚な扉が彼らを待ち構えていた。その表面には鈍く光る金属が散りばめられている。
「いずれにせよ、この先に重要な情報があるはずだな。」
レオンが扉を見ながら言った。
レオンたちは準備を整え、慎重にこの謎を解く手がかりを探し始めた。
ここで何が待ち受けているのか、彼らはまだ知らなかった。