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7 料理人流剣術

 おはようございます。

 朝です。

 街の中以外で寝たことなかったから、けっこうビビって寝てたんだけど何も起きなかった。

 森の中まで入らなかったのがよかったかも。

 熊とかイノシシとかに襲われてたら危なかっただろうしね。

 魔物に遭わなかったのもよかった。

 焚き火は消して寝てたんだけど、これからも続けた方がよさそうかな。


 大きく伸びをする。

 んぐぐぐ、ふはー。

 街の石畳とは違う、なかなかいい寝心地だったねー。

 初めてのことばっかりの旅ってのもあるけど、ちょっと楽しいところもあったりなかったり。

 あ、でも、初めての外泊がコレかと思うと、なかなか複雑。

 寝心地は悪くなかったけどね。

 朝ごはん、はいいや。

 何故か知らないけどとってもお腹が膨れているのでね。

 なぜだろうなー。

 なんでこんなにお腹がぽっこりしてるのかなー。

 不思議だねー。


 軽く腕を振る。

 前世のラジオ体操をイメージしつつ、適当にストレッチ。

 朝方の運動としては最適だよね。

 適度に汗をかいたところで、ベルトポーチを巻く。

 ついでに丸い盾……円盾でいいや、を帯で腕に巻きつける。

 ベルトに吊るした長剣の鞘を持つ。

 そのまま抜刀!


 ……出来なかった。

 鞘につっかえて、剣が最後まで抜けない。

 あれ?

 おかしいな。

 やり方が違うのかな?

 もう一回。

 抜刀!

 ……抜けない。

 あれぇ……?


 いろいろ試してみたところ、多分私が日本刀をイメージしてたのが原因だったみたい。

 斜めに構えて抜刀してたせいで、抜いた瞬間に引っかかってたのだ。

 確かにこの剣、刃がまっすぐなタイプの剣だしね。

 西洋の剣に近いのかも。

 西洋の剣を見たことが無いけども。

 ちょっと注意してみれば、割とあっさり抜刀できた。


 こんな感じで、私は戦闘経験が無さ過ぎる。

 スケルトン相手にあれだけ苦戦したんだから、もっと格上の魔物が出てきたらなす術がない。

 ので、こうやって戦う練習をしようというわけなのです。


 とりあえず、適当にぶんぶん振ってみる。

 一応、目の前にスケルトンがいると仮定して、どういう攻撃がいいのか考えつつ振る。

 ただ横に振ると当てやすそうだけど、外した時の隙が大きい。

 縦に振るとそのまま切り上げたりできるけど、姿勢的には横振りよりも隙が大きいかも。

 突きは当てにくそうだけどリーチは長いし、突いてから引いたり切ったりとなかなか便利だ。

 こう考えると、地球の剣道ってあんまり実用性はないんだなー、なんて思う。

 実際に面とか籠手とか打ってもあんまり効果なさそう。

 それに、実際に真剣を持ってみると分かるけど、金属製なだけあってそこそこ重いのだ。

 軽量化されている竹刀と違って、あんなに軽く振り回せるものじゃない。

 そんでもって、予想よりぜんぜん切れない。

 私の筋力とか技能もあるんだろうけど、それを差し引いてもゲームや漫画みたいにズバズバ切れるような切れ味はないのだ。

 まぁ、大きめの剣……両手剣(ツーハンデッドソード)とかならなんでもかんでもズバズバ行けちゃう気はするけどね。

 なので、基本的には打撃、または突きをメインに戦うのが実際のところなんじゃないかな。

 となると、突きも練習したほうがいいか。


 引き続き練習。

 架空のスケルトン相手に、背骨や首元を狙って突きを繰り出す。

 見たところ骨格は普通の人間だったし、あばらで守られてないお腹の辺りが狙い目だ。

 その分他の部位よりは硬いはずだけど、思いっきり振ればヒビくらい入るでしょう。

 自分で言ってて気付いたけど、突きは力を入れるのには向いてないのか。

 どの技にも長所短所があるなー。


 後は顔面めがけて突くとか、あばらに引っ掛けて破壊するとか。

 スケルトン相手でも、意外と何とかなるかも?

 と、ふと思い出す。

 街で見たスケルトンの中には、剣や槍を持ってるやつもいた。

 一方的にこっちが剣を使えると思ってたけど、相手も武器を使うかもしれない。

 その場合はどうしよう?


 うーん……

 ファンタジーラノベの主人公とかだったら、魔法とかスキルとかで遠距離攻撃できるのになー。

 私にできるのは料理回復だけだからなー。

 んー。

 一応考えられるのは、鍔競り合いしつつ蹴る、とか?

 相手は骸骨だし、体重自体は大したことないだろう。

 武器を円盾で弾いて突撃してみたり、どちらかというとフィジカル面で戦った方が分はいいかもしれない。


 ……まぁ、これが実戦でできるかって話だよね。

 どれだけ考えても、実践するのは私だ。

 どんなに使える技を用意してても、結局実践できなきゃ意味がない。

 そんでもって、私は一般人だ。

 たかだかスケルトン一体に、恐怖して動きがガチガチになってしまう。

 そんな状態で技なんて出せない。

 だから、まずは恐怖に勝つことだ。

 スケルトン相手に、怯まず立ち向かう。

 技は、突きと振り抜きさえあればいい。

 なんだかんだ一回勝った相手だし、ビビらなければ案外サクッと勝てるかもしれない。

 そんなことを考えつつ、ひたすら剣を振り回した。




 体感一時間ほど素振りをし続けて、流石にお腹がすいてきた。

 いい汗かいた後にやることは一つ。

 メシの時間だオラァ!

 リュックの中からいくつかの保存食を取り出す。

 街を出る前にいくつか作っていた、私特製の回復保存食です!

 今回はそのうち二種類を紹介しましょう!


 まず一つ目。

 袋を縛っていた紐をほどき、中からキューブ状のモノを取り出す。

 じゃじゃーん、キューブロック魔獣肉~!

 パッと見はちょっと大きめのサイコロステーキ。

 サイコロステーキと言いつつ、ソフトボールくらいのサイズではあるけどね。

 ただのキューブ状の干し肉と侮るなかれ。

 これは魔獣肉を魔獣骨ベースのスープで煮込んでしっかり味付けし、その旨味をギュギュっと閉じ込めているのだ!

 そしてこれ、イノシシ型魔獣の肉だけではなく、トリ型魔獣の肉もミックスしているのです!

 どこぞのカップ麺のお肉みたいな?

 物理的な回復効果に加えて、気力回復の効果もある優れもの!

 もちろん美味しさは保証するぜ!


 そして二つ目!

 同じくもう一つの袋から、今度はまんまるのパンみたいなモノを取り出す。

 染み沁みコッテリバンズ~!

 ……ネーミングセンス?

 開発者にケチつけんじゃないよ!

 私が作ったオリジナル回復料理なんだから、私に命名権があるのは至極当然でしょーが!

 これもキューブロック魔獣肉と同じく、魔獣骨ベースのスープを使った一品です。

 フランスパンっぽい感じのパンを、魔獣骨スープに漬けて味付けをしたもの。

 塩を振りかけてから乾燥させているので、かなりの濃い味になっている。

 こっちは主に気力回復と気分をちょっと上げる。

 まぁ、それは回復料理の効果っていうより料理そのものの効果な気はしなくもないけど。


 さーて、それでは頂くとしようか。

 いっぱい運動したんでお腹もペコペコ。

 いっただきまーす!



「ヴァァァァァッッ!!!」



 ビクリと肩を震わせる。

 街でも聞いた、スケルトンの叫び声だ。

 声がどっから出てるのかは不明だけど。

 この辺りまで来ていたのか。

 鳴き声のした方を見て、私は慌てて駆けだした。


 緑色の少年が、スケルトンの群れに襲われていた。

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