15歳の誕生日に...
「こうしたら面白いかな~」とか
「あ、誤字った!!」等、物語が一区切りする迄は生き物の様に文章が変わります
なんて めいわくな さくしゃなんだ
(すみません、出来るだけ気を付けます...)
「ああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」
僕は、まるで夜の様に視界が暗い森の中で、脇見も振らずに全力疾走を行っていた
「ギシャアアアアア!!!」
背後よりズザザザザ!と迫り来るの、年齢からすれば小柄に見える僕の身長(160cm)程の頭を持つ大蛇「ギガノスネーク」。自身の口に収まる大きさなら家畜の牛や馬は勿論、熊や猪、それどころか高い戦闘力を持つ他種族の魔物すら餌にしようとする悪食で有名な魔物だ
「ハッ...ハッ...ハッ...!!さっき漸く、バイコーンから逃げ切ったばかりなのに、今度は大蛇とかついてなぁぁぁい!...うわ!足元から人面魚が生えて来た!?何、この森!?」
危うく躓きかけた体を何とか立て直し、文字通り足元に生えて来たおっさん顔の魚を、大蛇に向かって蹴り上げる。君、お腹が空いているのかい?なら、人面魚でお願いします!!
「1年...1年の辛抱だ...!絶対、絶対に!生きて帰ってやるからなぁぁぁぁ!!!」
生きるか死ぬか、不可解な森の中で僕の絶叫が響き渡る今日この頃
父さん、母さん、いかがお過ごしでしょうか
ぼくは (いまのところは) げんきです
...ここで、話は一週間ほど前に遡る
~~~
「「カイル!15歳の誕生日おめでとう!」」
「ありがとう!父さん、母さん!」
もうじき春を迎えるであろう、ある日の事。僕は15回目の誕生日を迎えた。父さん曰く15歳と言う年齢は人生の中で特別な意味を持つらしく、お祝いとばかりに母さんは様々な料理を作ってはテーブルに並べていき、父さんはニコニコしながら僕の顔を眺めている。...いや、ニコニコを通り越してニチャニチャしている。正直言うと、とても気持ちが悪い
「...父さん、何だか凄く嬉しそうな顔をしているけど、そんなに僕が15歳になるのが嬉しいの?」
「それはそうだろう!愛息子がいよいよ成人に一歩近づくんだ!これを喜ばない親なんていないぞ!?」
「成人かぁ」
ガハハと笑う父さんを目線から外し、僕は少し前に村の牧師さんから教わった事を思い出す。この国では16歳から成人として様々な職業への就労する権利が与えられるが、どの職業に就けるかは【15歳から16歳】までの間に積んできた経験によって選択肢が増えるとの事だ
魔物との戦闘経験が豊富であれば騎士団や冒険者に。家畜の飼育経験が豊富で有れば牧場経営者に。また、その両方の経験を十分に積む事によっては特殊職である魔物使いとして就職する事例も有るとの事だ
「...【自己分析】」
魔法があまり得意ではない両親が唯一教えてくれた基礎魔法を小声で呟くと、空中に半透明の板が現れた。唱えた術者しか認識する事が出来ないそれを見つめると、そこには僕の名前と僕が身に付けた技能の一覧が表示されている
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カイル 性別:男 年齢:15歳
適正職業:狩人、???
スキル:弓術、自己分析、???
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【自己分析】の魔法は、術者の素質や熟練度によって表示される行が追加される。今の僕では3行程度の情報しか分からないが、人によっては自分の体調変化や獲得したいスキルの取得条件等が表示されると言われており、両親から重い期待を背負わされた貴族の子供達は幼い頃から【自己分析】の熟練度を上げる練習をしているとの噂を聞いた事がある
大変だなぁ貴族って
「まぁ、僕は父さんみたいに狩人として生計を立てて、のんびり暮らして行けたら良いなって思うよ。食べ物に困る生活って一番苦労しそうだしね」
「お?嬉しい事言ってくれるじゃねぇか!俺みたいにか...ガハハハ!」
わざとらしく目の縁を指でなぞる父さんの相手をしていると、全ての準備が整ったらしい母さんが台所より帰還しパチンと両手を鳴らした
「さぁ!お話はそこまでにしてご飯にしましょう!今日はお祝いだから腕によりをかけたのよ。さぁ食べて!」
「うわ!すごい!」
僕がテーブルを見やると、そこには市場では希少とされる食材で出来た料理の数々が並べられていた
深い森の奥に生息している鹿の魔物「ディープフォレストディア」のステーキに、古くから凶悪な肉食獣すらその角で襲いかかり捕食すると伝えられる大牛「アルケータウロス」のトリッパ、更には数千メートルの高さの氷山に住むとされるホワイトフェニックスの卵で作られたオムレツなどなど、幾ら何でもお祝いにしてはオーバーすぎる料理の数々を目の当たりにした僕は、口の端から涎が出るのを止める事が出来なかった
「さぁ食え!腹いっぱいにして明日からの修行も頑張るんだぞ!」
「はい!いただきます!!」
堰を切ったように料理へと取り掛かる僕、そしてそれを微笑みを浮かべながら見守る両親。希少食材で作られた料理の数々はとても美味しく、僕は「今日はなんて幸せな日なのだろう」と心からそう思いながら食事を楽しむ事にしたのであった
~~~
「ご、ごちそうさまでした」
テーブルに並べられた料理も段々と空き皿へと変わって行き、僕が満腹となったお腹をさすりながら席を立とうとすると、満腹感の所為だろうか?目を瞑れば、立ったまま眠ってしまいそうな程の睡魔に襲われる。流石に、ちょっと食べ過ぎたかもしれない...
「ちょっと食べ過ぎたかもしれない.から、少し横になってくるね...」
「お、意外と耐えたもんだな?」
「へ?」
父さんの返事に疑問を浮かべ振り向こうとしたその瞬間、スパァン!と快音が部屋に響き渡る。下手人は母さん。右手に持った部屋履きで父さんの後頭部にクリティカルを出したらしい
「な、何?何が起こったの...?」
「気にしないでカイル。お父さんがちょっと私のお尻を触って来たから反射的に手が出ただけよ」
「えぇ...息子がいる前で止めてよ...」
「それより横になるなら、そこのソファじゃなくて部屋のベッドで寝なさいね」
「う、うん」
テーブルに頭をうずめる父親の姿を見て、こうはなるまいと考えながら僕は部屋に戻る事にした。本格的に眠くなってきたせいか、自室へと戻る足取りが妙に重く感じる
「ダメだ、眠すぎる...ちょっとだけ目を..閉じて...」
ベッドに倒れ込みと徐々に意識を手放していく僕。こうして記念すべき僕の15歳の誕生日は終わりを迎え、そしてーーー
...食器を片付ける音が響く台所にて、聴覚を強化した妻が自室へ戻った息子の寝息を感知した
「...寝たわね」
「あいたた...おい、ちょっと強く叩きすぎじゃないか?」
「アナタが不用心に口を滑らすからでしょ。ほら、早く準備して」
「はいはいっと」
俺は大きな音を出さない様に、先程まで食事をしていたテーブルを動かして絨毯を捲ると、愛息子にすら内緒にしていた地下室への扉が姿を現した
辺りを照らす魔法【灯】を唱えて、俺が真っ暗な地下室へと足を踏み入れていくと、地下室の奥には弓の様な彫刻が浮き彫りにされた黄金色の金属板が壁に貼り付けられていた
俺はそれを真正面に見据えながら墓参りの様に両手を組み、膝を付いて頭を下げる
「爺さん...いや師匠。俺の息子が、俺の様な狩人になりたいって言ってくれたよ。親として、こんなに嬉しい事は無いよなぁ」
爺さんもこんな気持ちだったのか?と心の中で呟きながら立ち上がった俺は、部屋の隅に置いてある立派な装飾が施された木箱から、古ぼけた弓を取り出して地下室を後にする。先祖代々伝わる代物の為、見た目は少々年季が入っているが、まだ中身はボケてないだろう
「もう何年世話になってるか分からないが...悪いがまた頼むよ」
布で全体を覆う様に一巻きしてから、ポンポンと弓をあやす様にしながらリビングへと戻ると、そこには片手に麻袋を持ち、最愛の息子カイルを簀巻きにし肩に担ぐ妻の姿があった
「う~ん...ムニャムニャ」
「...ふふっ、可愛い寝顔。隠し味のネムリダケ、入れ過ぎちゃったかと思ったのに、キチンとベッドまでたどり着くなんて...大きくなったわね。カイル」
「なんだか良い事を言ってるようだが、見た目のギャップが酷いな...」
俺は最後に戸棚に閉まっていた封筒を取り出し、どこからどう見ても誘拐犯としか見えない妻から麻袋を受け取るとその中へと弓と共に封筒を放り込む
「さて、準備はこんなモンか。そろそろ時間だ。外に出るぞ」
俺は玄関に向かいドアを開ける。まだまだ冬の名残りを残した冷たい風を身体に受けながら外に出ると月の光を受け巨大な影を作る一羽の大鷲が姿を現した
「よう、ハルバード。コイツは俺の息子のカイルだ、宜しくな」
「ピュイ!」
ハルバードと呼ばれた大鷲が庭へ鳴き声で返事をしながら着地すると、自分の左足を妻に向けて差し出す
「ここにカイルと荷物を巻いておけば良いのね。...うん、アナタこれで良いかしら?」
「あぁ十分だ。これなら飛んでる最中に勝手にほどけるだろう。じゃあハルバード、頼むわ」
「ピューイ!」
俺の言葉を合図に、ハルバードは両翼を強く羽ばたかせ空へ登っていく。本当は姿が見えなくなる迄、ここで見送りたい所なのだが、なにせ俺も妻も極限まで極めた狩人の目を持っている。恐らく姿が見えなくなるより先に寒さで風邪を引く方が先と判断した俺達は、カイルとハルバードに背を向けて我が家へと戻る事にした
「頑張れよ、カイル。俺みたいな...なんて小さい事は言わず、俺と母さんを超える位に成長してみせろ」
ガチャリとドアを開け、未だ背後から感じるハルバードの気配を感じながら俺は呟く
「【覇弓師】スタンリー、そしてその妻【闇梟】シノブの名に於いて...カイル、お前を16歳の誕生日まで追放とする」
「へへ…暇つぶしにはなったぜ…」という方は
ぜひ!ぜひ!!
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今後ともお付き合いの程、宜しくお願いします:;(∩´﹏`∩);: