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紅葉

やっと非日常。

「えっと、ここか…………あの〜、下に降りたいんですけど」


 そう言って警備員にプリントを見せる


「…………はい、少し待っていて下さいね」


 がちゃがちゃと、なにやらエレベーターを弄っているようだ。


「もう大丈夫だよ。…………気をつけて」


 最後の気をつけてはどういう意味だろう?そう思いつつ、エレベーターに乗る。ボタンのところを見ると、普段は隠されているのだろう、『地下』とだけ書かれたボタンがあり、それを押すと下に降りる時の僅かな浮遊感を伴いながら動き出した。


 『気をつけて』、確かにこのプリントを見るまでは学校に地下があることさえ知らなかったし、聞いたこともない。少なくとも自分にとっては未知の領域だ。…………危険があるのだろうか?学校に限ってそんな事はないと思う一方、この学校だからこそ、とも思う。詳しくは知らないが七不思議の類いが尋常じゃないくらい大量に存在するとか。つまり、何が言いたいのかと言えば、


(このエレベーターはいつまで降りるのさ?)


 微妙な浮遊感があることから、動き続けているという事はわかるのだが、それ以外の情報が自分にはない。と、その時


 チーン


 ようやく着いた様だ。ゆっくりと扉が開いていき、その向こう側が見えてくる。そこには、


 ――神社が建っていた。


「は?」


 突然のことに零れ落ちた言葉は、しかし誰にも掬われる事なく弾けて消えた。


 何故学園の下に神社が?そんな当然ともいえる疑問に答えてくれる人物はここにはいない。今の自分にとって頼りになるであろう物は手に持ったままのプリントのみ。しかし、そこには自分の欲している答えが書かれていない事は、既に一通り目を通したことから分かっている。見落としがあったことを期待するが、やはりそこには、『地下に行って倉庫から以下のものを持ってくること』と書いてあるだけであり、その下には確かに刀の写った写真があるが、それだけである。良く写真を見ると、ぼんやりと人のようなものが写っていて、


(って心霊写真かよ!)


 やはり何度プリントをながめても、自分の疑問に対する答えは得られないようだが、自分が何をするべきかという確認は出来た。先ずは倉庫を見つけなくてはならない。辺りを見回すと、エレベーターの側に何か書いてあるのを見つけた。


 案内板。…………なんだろう、ぐっと疲れた気がする。なんというか、ここが学校であると再認識させられた。



「ここか」


 案内板に書かれていた場所には蔵があり、ここが倉庫として使われているらしい。


「うわぁ」


 扉を開くと、なんというか混沌カオスだった。無造作にに物が置いてあり、探し物にはとにかく不向きな部屋だった。とりあえずスイッチを探し出して明かりをつける。今日中に探し出せる気はしないが、とりあえずやれる事はやろう。そう決意した時、


「うっ、…………うん」


 そんな声がした。そこには髪をリボンと鈴で一つに纏め、着物を着た少女が眠っていた。どうやら、先客がいたらしい。ここで寝ていると風邪をひいてしまいそうだが、気持ち良さそうに眠っているので、起こすのも何だかしのびない。とりあえず自分の上着を掛けておく事にする。



「う、うん…………ふぁ?」


 なるべく音を立てない様に作業をしていたつもりだったのだが、作業開始数分でどうやら起こしてしまったようだ。


「悪い、起こしちゃったか?」


「お主、誰じゃ?」


「あぁ、俺は生徒会の用事で探し物をしてたんだけど。」


 そう言って写真を見せる。


「うん?これは我じゃの」


「え?」


「ほら、ぼんやりとじゃが写っておろう」


「えっと、この人影って君?」


「そうじゃ。この刀が写っておるのだから、少し考えればわかろうに」


「ごめん、良くわかんない」


「本当に何も知らんのだな、お主は。そう言えば、主の名前はなんというのじゃ?」


「そう言えば、言ってなかったね。俺は、蓮水紅葉」


「そうか、我はクレハじゃ。そう言えば、紅葉。この上着を掛けてくれたのはお主かの?」


「あ、うん。あんな所で寝てたら風邪をひきそうだったから。そうだ、クレハちゃん。アメいる?」


 そう言って、先生から貰ったアメを渡す。


「ちゃんはいらん。クレハでよい。おぉ、りんご味じゃ。美味いのぉ。…………そう言えばお主、この刀を探しておったんだよな?ちょっと待って――」


 バチン!


 突然大きな音をたてて明かりが消えた。


「停電?」


「違う、これは。ここじゃ不味い!一旦外に出るぞ!」


 そう急かされる様に倉庫から出る。


「いきなりどうしたの?」


「――来るぞ」


 いつの間にかクレハの手には、探していた刀が握られており、その前には、闇でできたような狼がいた。


「な、何だよこれは…………」


「案ずるな。アメの礼じゃ、この程度の相手、我がすぐにでも蹴散らしてくれよう」


 そんなクレハの言葉に対し、狼はただ唸り目を紅く光らせる。


「何を言ってんだ!逃げ――」


 俺の言葉が終わるよりも先に、決着がついた。クレハに飛び掛かった狼は、その勢いのままに斬り伏せられ、消えた。


「だから、大丈夫だと、避けろっ!」


 どんっ


 衝撃が来て、俺は飛ばされた。――クレハによって。


 一瞬前まで俺がいた場所は大きな爪のような跡で抉られていた。それを為したのは巨大な熊。恐らく、さっきの狼と同じ様なものだろう。


 ありがとう、そう言おうとした俺の目に飛び込んで来たものは、紅。クレハの背中から流れる紅い色。


「な、んで?」


 そんな呟きに、弱々しく立ち上がろうとする。


「知らん。きっとアメが美味すぎたのじゃ。ここは我がなんとかしよう。お主は、逃げろ」


 気がつけば俺の手には刀が握られていた。


 熊がこちらを向く。


「何を、早く――」


「うるさい!」


 本当に何をやっているのだろうか?今だって震えが止まらない。身体中が逃げろと叫んでいる。それなのに、離れない。手に付いたクレハの血も、アメを食べた時の笑顔も何もかもが離れない。


「俺だってわかんねぇよ!お前が俺なんて庇わなけりゃとっくに逃げてた!アメ?それがなんだ!こっちは命もらったんだ!計算があわねぇだろ!」


 ゆっくりと熊が近づいてくる。


「ふふっ…………馬鹿者、こっちを向け」


「なん――」


 だ、とは言えなかった。口の中にりんごと血の味が広がって、はじめてキスをされたのだと理解した。


「契約は完了した。我が力を貸してやる。さっさと終わらせてしまえ」


 目の前には、クレハを成長させた様な女性がいた。


「クレ、ハ?」


「そんな事は後じゃ。今は前を向け」


 熊はあと一歩の所に近づいていた。


 震えは、止まっていた。手にした刀からは紅い光が溢れ出している。不思議と恐怖はなく、自然と足は一歩前へと踏み出していた。


「あああぁぁぁぁぁっっ!!」


 呆気ないほど簡単に熊は両断された。


「やった…………」


 手にした刀はいつの間にか消えていて、倒れそうになったところをクレハに抱き抱えられる。


「お疲れじゃ、主殿。今は休め、迎えも来たみたいじゃしの」


 そう言ってクレハが見た方向には、エレベーターから駆け出して来る、命姉さんの姿があった。


 そこで、俺の意識は途切れた。



 夢を見た。それは、神社で舞を踊っているクレハの夢。


 ――今日は良く神社と縁がある。


 なんて思ったら、目が覚めた。


「あ、…………ここは?」


「起きたか、主殿。ここは保健室じゃ」


 腹の上からそんな声がして、見ると、なんというか人形の様に小さなクレハがいた。


「…………ちっちゃい」


「ぬぅ、小さい方が効率が良いのじゃ」


「でも、前に寝てた時はもっと大きかった」


「違う、あれは我のことを見れた主殿がおかしかったのじゃ」


「?」


 何を言っているのか全くわからない。そもそも、今日起きたことで、理解できたものは一つもない。


「だから、契約もしていない状態で、まして我が意図して姿を見せていない時にも関わらず、主殿が我を認識した事が既におかしいのじゃ」


「じゃあ、なんで?それじゃあ俺がおかしいみたいだ」


「普通じゃないことは確かじゃが、仮定はある。おそらく、我と主殿の名前が同じだったからじゃ」


「名前?」


 俺の名前は紅葉。あいつはクレハ。紅葉とクレハ。クレ、ハ。あっ、もしかして、


「そうじゃ。我の名前はクレハ。漢字だと紅の葉で、紅葉じゃ!」


 なんと、まぁ変な偶然があったものだ。母さんが違う名前をつけていたら死んでいたかもしれないらしい。


「ははっ、とにかく助けてくれてありがとう、クレハ」


「お互い様じゃ、主殿」


 とにかくこの時、俺の世界は変わったのだろう。良くも悪くも騒がしい方に――。


何とかファンタジーっぽくなった。(と思う)



最初だけだと何だこれ?って感じだけど、これで何とかカタチの様なものが見えて頂けたならば幸いです。




頑張っていきたいと思います。




ではでは





あと、前回のあとがき、予定に嘘はないのです。ちゃんと紅葉クレハちゃんが活躍しました。



いつか、必ず紅葉もみじちゃんも出しますよ。

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