第二話 急変
「ハッ!!!」
目を覚ますと真っ暗で遂にこの世界の暗黒時代が訪れたかと思ったが、直ぐにトラオムのゴーグルを付けて寝た事を思い出し取り外して身体を起こす。すると生暖かい液体がポロリと頬を伝うのがわかった。
「あれ……なんで泣いてんだ……?」
きっと悪い夢でも見たのだろう……っといっても夢の内容は全く覚えていないのだが……しかしその為のトラオムだ!今日はせっかくの休みだしこのトラオムでエンジョイするぞ。
トラオムの母機をモニターにつないでっと……おっとその前に色々とさっぱりしてからにするかぁー朝飯も食わないとだしな
そそくさと僕は朝支度をして朝食の準備をする……が冷蔵庫の中がすっからかんな事に気が付く。
そういえば今週は忙しくてコンビニ飯ばっかだったなぁ……参ったなぁ……休日くらいは自炊をと思うんだけれど―……めんどくさいなぁ……まぁ外の空気吸うついでに食材買ってくるかぁ……
近所のスーパーでいいだろう。なにつくろっかなぁ~~……ちゃんと戸締りをしてっと。
「踊ってない朝を知ってる~~♪踊ってない朝を知ってる~♪」
「おはようございます」
「!?!!……あオハヨウスゥ……」
同じ階の人に歌ってるとこ見られたッ!!!超恥ずかしい!!!もうおうちカエル!!まだ出て数メートルだけども!!
「ごきげんですね!何か良いことでもあったんですか?」
めっちゃがつがつくるな……この人……まぁでも日頃ご近所さんとあまり話す機会無いしな……
「いや、実はトラオムを買いまして~……恥ずかしながらその夢を見るのが楽しみなんです」
「へぇー!!良い夢を見れたんですか?」
「いや、内容を覚えて無くって。。。だからこそどんな夢を見れたのかなって」
「楽しい夢だといいですねー!!それじゃあ私はこれで~」
あんな若い女の人同じ階に住んでたんだなぁ~朝は早く夜は遅くな極端な生活だから知らなかった。しかも今時自分から見ず知らずの男に話しかけるなんて特にエレベーターの様な密室だと警戒されるもんだと思うけど……また会えるかな……なんてw
ささっ買い出し買い出しだ
自宅を後にした俺は自転車に乗り自宅から10分程度かけてスーパーへと向かった。
スーパーに着くとやはり休日という事もあり、人の出入りが多くレジには長蛇の列が出来ている。
まぁそうだよね~……早く帰りたいんだけれどまぁ気長に買うもの選んでれば空いてくるかな~……まずはやっぱり酒だよな……朝っぱらから飲むほろっと酔いは最高なんだよなぁ~……俺にはガチ酔いだけども。
ーーーテンテテロテロテロリン
突然普段あまり鳴らない携帯が鳴り、思わず飛び上がった。
画面には昨日電話した山田からと表示されていて場所が場所なので僕はあえて出ずにまた家に帰って折り返そうとマナーモードにして買い物を続けるのだった。
……あいつ今日は仕事のはずだけどこんな時間に珍しいよな~……おっ生ハムは外せないよね~!
その後僕はレジの混雑状況を確認しながらお酒コーナーから生鮮食品へとあえて時間の掛かる様に巡り、チャンスだと思うタイミングでレジへと入り会計を済ませる。
再び自転車に荷物を積み帰路に着く前に携帯で時間を確認すると着信履歴が山田から10件以上入っていた。何より僕が目を疑ったのは着信と共に来ていたメッセージでその内容とは………。
【今どこだ】【家なら鍵を閉めろ】【俺が行くまで出るな】【俺が迎えに行く】【外なら絶対一人になるな】等まるで僕が誰かに命を狙われているかの様なメッセージが大量に送られて来ていた。
ただ事ではないと僕も慌てて山田に電話をすると待っていたと言わんばかりにすぐに彼は出た。
『大丈夫か!?!』
『どうしたのさ!そんなに慌てて』
『お前夢はどうだった!?!』
『ええぇ……そんなにトラオムの結果が聞きたかったの?……』
『いいからッ!!!!答えろ!!!』
普段の気だるげな様子と違い、まるで怒鳴るかのように夢を話すようまくしたてるので俺はありのままを話し、今から自宅へ帰る所であると伝えた。
『絶対に帰るな。俺がそのスーパーまで迎えに行ってやるから』
『なんでさ。そんなリッチ待遇いらないよwww』
『ふざけて言ってるように聞こえるかッ!??絶対に一人になるな。トイレとかも行くなよ!!』
『……わかったよ!スーパーの休憩コーナーでじっとしとくよ。』
めっちゃ怒ってるな……なんかドッキリ企画かなんかか……でも普段の山田と様子が全然違ったからなぁ……大人しく彼の言う事を聞いておいた方が良さそうだ……