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競技会開始

 騎士学校は3年制で、スペリアム王国を構成する6つの領地に1つずつあり、各騎士学校には、原則としてそれぞれの領地の住民が入学するという制度になっていた。

 バルト領の騎士学校は、各学年120名が在籍しており、王都の騎士学校に次ぐ生徒の多さであった。なお、騎士学校を卒業した生徒は、王都の騎士団本部において、全ての騎士学校の卒業者を集めた半年間の合同研修を経て、13ある騎士団のいずれかに配属される。配属先は卒業した騎士学校は関係ないため、クロエなどは王都の騎士学校を卒業して、バルト領に駐留する第13騎士団に配属されていた。

 騎士学校に入学する者は、貴族の子弟が約2割、騎士の子弟が約5割、平民の子弟は約3割となっていた。そのため、生徒の間でも暗黙の階級が存在し、平民の子弟は最底辺、騎士と貴族の子弟が上位。貴族と騎士の場合は、さらに親の役職で階級が分かれていた。


 今日開催される騎士学校競技会は、観客を入れて、騎士学校の生徒が学年ごとに決められた競技を行い、日ごろの訓練の成果を披露する場であり、成績優秀者は卒業後の待遇にも影響するということもあって、ほとんどの生徒がやる気に満ちていた。

 バルト領に限らず、各騎士学校のある街においては、騎士学校の競技会は一大イベントであり、市民はもちろん領内からもたくさんの人々が見物に訪れ、約4万人が収容できる観客席は満席で立ち見が出る程であり、それでも入りきれない人々のために、屋外競技場の外には魔法で空中に会場内の映像を投影していた。

 そのような多くの人が訪れる大イベントということもあって、毎年何らかのトラブルが発生しており、数年前にはとある騎士学校で領主の暗殺を企てた者もいた。そのため、騎士団の騎士たちは、非常に神経を尖らせて警備に当たっており、来賓を含む入場者の事務的な受付や案内、生徒の誘導、会場整理などの事務的な業務は下級官吏のスタッフの役割となっていた。




 午前10時、屋外競技場に整列した360人の生徒たちを前に、学校長と来賓のバルト領主ランティスが挨拶し、ランティスの娘カナリアの開会宣言をもって、ついに競技会が始まった。


 まずは屋外競技場で、第1学年によるボールを相手のゴールに入れて点数を競い合うスポーツ競技が始まった。ルールは、武器を使用しなければ相手を故意に傷つけない限り何でもあり。いかに魔法を駆使して、相手のゴールを奪うかという競技である。

 その第1学年の競技の途中から第2学年の競技が始まる。第二学年の競技の会場は、屋内競技場の外。ベルディの町の東に向かって約30キロのコースを走るレースである。だが、もちろんただのマラソンではない。ベルディの町の東は深い森と険しい山が広がり、凶暴なモンスターも多数生息している。それに加え、レース用のトラップなどもあり、重症者も出る危険な競技であった。

 そして、第2学年のレースと並行し、第1学年の競技の終了後、屋外競技場で第3学年の競技――実戦形式の試合が始まる。競技は個人戦とチーム戦があり、それぞれトーナメント形式で優勝者を決め、競技会で最も盛り上がる競技であった。


 さて、アルトは何の係かと言えば、非正規の下級官吏で、しかも年若くまだ職に就いて1年どころか半年も経っていない者に任せられる仕事など限られている。第2学年の競技のコースの途中に立って、生徒が道に迷わないように誘導したり、怪我をした生徒がいれば救護班に連絡したりする係であった。

 アルトが指示された配置は、山奥の峠道。道は獣道というほどではなく、幾分か人の行き来もあるようで道は分かりやすく、別段誰かの誘導が必要な場所ではない。ただ3キロメートル間隔でスタッフを配置するという決まりで配置されているだけであり、つまり立っているだけで特にすることはない。

 空は晴れ晴れと広がり、小さな雲と、大きな鳥が気持ち良さそうに空を飛んでいる。ただ、平地と違い今日の峠道は風が強く、東から西に向かって時折強い風が吹き、辺りの梢がザーッという音を立てて揺れ、1人で立っていると、何となく寂しさが湧き上がって来る。


 アルトはふと東の方向を仰ぎ見た。

 その方角には、町や村など人の集落はなく、果てしなく山と森が広がり、約250キロメート先には魔族の領域がある。目視することは決してできないが、アルトは遥か遠くの故郷を思った。1つ断っておくが、それは郷愁ではない。アルトは、自らを追放したオルレウス魔王国に何の未練もなかった。ただ、「鍵」を巡る戦いが今後激しさを増すであろうとアルトは予想しており、巻き込まれている弟・ザレスの行く末を案じていた。


 ザレスは努力家で真面目で家族思いの男である。幼いころから腹違いのアルトを慕い、アルトもいつも後ろをついて回るザレスをかわいがっていた。

 アルトが2年の放浪の旅に出ていたことのことは知らないが、聞くところによれば、ザレスはアルトに代わって当時の魔王――父・ペイルワルスをよく支えていたという。

 アルトが旅に出たのは気紛れではなく、ある信念と重要な目的を持ってのことであったが、アルトは何となくザレスに申し訳なさを感じており、自分が魔王となった暁にはザレスによくしてやろうと思っていたところ、まさか自分が追放されてザレスが魔王となってしまい、それがアルトにとっては心残りであった。

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