↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/75

2つ目の「鍵」発見

 翌日、魔動車に落とした財布が届くまで時間があるため、アルトはメグとマリーとともに、力自慢大会の会場を見物しに行った。


 1辺10メートル弱ほどの木の柵に囲まれた試合場では、既に何人かの出場者がウォーミング・アップをしている。


「ここで、ユーリさんが戦うんだな」


 アルトが言うと、


「大丈夫かな、お父さん……」


 マリーが心配そうに呟いた。


 今、試合場でウォーミング・アップをしている連中は、アルトから見て素人同然、ユーリが力押しで勝つことも有り得ると見ていた。


「あ、あそこに、賞品があるよ」


 そう言ってメグが指を差した先に視線を移すと、鉄の柵に囲まれ、2頭の牛がのん気に餌を食べていた。おそらく優勝賞品の牛であろう。まだ若い牛で、体躯も良い。マリーが言うには、ハルエスト教会に寄附した牛よりも立派な牛なので、これなら畑仕事が助かるという。

 ふと、アルトは、牛を囲む鉄柵の前に長机が1つあり、その上に何やら見慣れない物が置かれていることに気付いた。


「ああ、あれは副賞だね、今年の副賞は何だろう」


 マリーが興味深そうに言ったので、アルトは2人を連れて副賞を見に行った。


 机の上に乗っていたのは、モンスターの革をなめして作られたチャンピオンベルト。デザインは安っぽいが、キラキラと宝石、のように見えるガラス玉が散りばめられ、一見すると豪華に見える。


「うわあ、キラキラして綺麗だね」


 メグが陽の光を反射して煌めくチャンピオンベルトを見て目を輝かせていたが、マリーは、


「うわあ、悪趣味……」


 と顔をしかめた。

 一方アルトは、チャンピオンベルトに装飾された1番大きいガラス玉に注目した。このガラス玉だけ違和感がある。その違和感の正体は直ぐに分かった。


 微かに帯びる魔力。これは『鍵』だ。


 なぜ、こんな田舎町の、ローカルな祭りの賞品になっているのか。有り得ない状況にアルトは混乱しながら、透明な『鍵』を見つめていたが、一番強く考えていたのは――


 こんな玩具みたいなベルトの装飾に「鍵」を使うとは、人間はなんとくだらないことをするのか。


 ――ということであった。


 アルトが食い入るように「鍵」を見つめるので、


「キラキラしてかっこいいよね、アルトくんも欲しい?」


 とメグはアルトが自分と同じ感想を抱いていると思い、一層喜んだ。


 と、そのとき、アルトとメグの間に1人の女性が割って入り、アルトと同じようにチャンピオンベルトに装飾された「鍵」をまじまじと見つめ始めた。


「へえ、なんだいこりゃあ、珍しい代物だねぇ……あんた、こいつの価値が分かるのかい?」


 そう言って女はアルトを見て笑った。


 女は、年齢は20代くらい、茶色いショートボブで、背中には木箱を背負い、長い旅をしてきたと思われる旅装であった。


 もしや「鍵」の存在を知っているのかとアルトは訝しみ、眼鏡の奥の眼を少し細めて女を見返した。


「あなたは、これが何か知っているんですか?」


 しかし、意外にも女は肩を竦める。


「いや? だけどね、見たところダイアモンドでもないし、水晶でもない。私が知るどんな宝石とも違う。だとしたら、未知のお宝に決まってんでしょ」


 「鍵」の存在を知らないにもかかわらず、見ただけで「鍵」の価値を鑑定したというのか。アルトは、思わず、


「凄いな……」


 と呟いた。


「さっきちょっと聞いたんだけどね、この宝石、町長が旅の商人からダイアモンドって言われて買ったらしいんだけど――まあ、それもダサいけど――後で奥さんの持っているダイアモンドとなんか違うなー、って思って、これまた別の旅の商人に鑑定してもらったらダイアモンドどころか宝石の類じゃないって言われて、ガラス玉みたいに価値のないものだって思ったらしいんだよね。これだから素人って嫌よね、自分の知識の範囲を超えたものは全て無用の物だと思い込む。その点お兄さんは見込みある……って何その眼鏡!」


 長々と語りながら、女は突然アルトの眼鏡をまじまじと見始めた。


「凄いわねそれ、魔力を抑制するの? いや、それだけじゃなさそう……ちょっと、どこで買ったの? 見せて」


 女がアルトの眼鏡に触れようとしたので、アルトを眼鏡を両手で押さえつつ身体を引いた。


「ちょっ、……やめてください、壊れやすいんですから」

「そう? 結構、かなり、いや、半端なく丈夫そうに見えるけど」


 女はうずうずして手を握ったり開いたりしながら、舌なめずりをした。


 アルトの眼鏡は特注性。魔力を抑制し、しかも魔族の魔力を人間の魔力に変換する代物。しかも、仮に白蛇のガネッサの渾身の1撃や、神の使いの光線が直撃したところで破壊されない、変態的な強度がある。もちろん、市販などされていない。


 この女は、それを触れることなく見ただけで気付いたのだ。やはり、恐ろしい鑑定眼である。

 アルトはここで初めてこの女を警戒するとともに、何者であるのか興味を抱いた。


「……あなたは、誰ですか?」

「私? 私はレイチェル、いわゆる旅の商人ってやつさ」


 そう言ってレイチェルはアルトに向かって紙片を投げた。アルトは指でキャッチして紙片を見ると、それは名刺であった。


「その眼鏡に興味がある。もしも売る気になったり、売っている所を教えてくれるなら連絡して。情報料だけでもそれなりに出すよ。 ……さて、そろそろ場所取りするから、私は行くわ」

「場所取り?」

「ああ、優勝者からそのお宝だけ買い取るのさ。試合をしっかり見た方が、そいつの人となりが分かって交渉しやすくなるだろう?」


 そう言ってレイチェルは笑って手を振りながら人混みに消えた。


 アルトは、もう1度チャンピオンベルトに装飾された「鍵」を見た。ユーリが優勝すれば、ユーリに頼み込んで譲ってもらえば良い。だが、もしもユーリ以外の者が優勝した場合はどうするか。

 と考えていると、


「マリー、メグ!」


 とミレーヌが慌てた様子で2人を探しに来た。


「どうしたの?」


 マリーが聞くと、ミレーヌは息を整える間もなくマリーの手を取った。


「お、お父さんが……!」

「面白い」、「続きが気になる」と思った方は、ブックマークと評価をしていただけると嬉しいです。とても励みになりますので、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。