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56 傭兵は闘う。愛する者を守るために。(前編)


 プラトーは走った。


(頼む。間に合ってくれ)


 ピンク色の髪をしたミントの姿が脳裏に浮かぶ。


 ミントには自分の気持ちを伝えられないでいた。


(ミント……)


 シンジゲートと魔王が手を組んだ。巨大な犯罪組織と人類最大の敵との連合だ。


 それを自分がたった1人で討てるとは思っていなかった。


 だが、ミントや子供たちが襲われているのを知っていて、駐屯地で待機していられるわけがない。


 プラトーは我が身を犠牲にして1人でも多くの子供を逃がすつもりだった。


(これが最後の戦いになる。明日は自分は生きていないだろう)


 プラトーは覚悟を決めた。


 すると、足が軽くなり、さらに速く走れている気がした。


 子供食堂にしている自分の家が見えてきた。


 隣の空き地に、子供たちとミントが連れ出されて、その周りを大勢の黒い服を着た武装集団が取り囲んでいる。


 その向こうにはこの前戦った巨大なゴブリンがハルバートを手にして立っていた。その横にはローブに身をつつみ不気味な仮面をつけた者がいる。


(あれが魔王か?)


「お前は!」


 黒い服の盗賊のような男がプラトーを見つけると、剣を振りかぶった。


 刀の柄に手をかけ、そのまま鞘から刀を抜き放ち、抜き打ちで相手を斬った。


 胴から真っ二つになり、黒服の盗賊が崩れ落ちた。


「今、助けるぞ!」


 プラトーはミントと魔王の間に躍り出た。


 魔王は1人で攻め込んできたプラトーを嘲笑した。


「威勢はいいな。だが、それもあとわずかだ。お前は死ぬ」


(そうだ。俺はここで死ぬ)


 頭の中に、少年のプラトーに剣術を指南してくれた旅人の言葉が蘇った。


「いいか。武術とは死ぬことだ」


「死ぬこと? 殺すことの間違いではないのですか」


 旅人はゆっくりと首を振った。


「死ぬことだ」


「言われていることの意味が分かりません」


「ハアッッ」


 いきなり真剣が突き出された。


 思わず尻もちをついて倒れた。


「さっき、教えた技はどうなった。素人同然じゃないか」


「それは……」


「人は死を恐れ、本能的に命を守ろうとする。だが、武術的にはそれは動きを硬直化させて逆に死を招く。いいか、自分はこの戦いで死ぬと覚悟することだ。死を恐れないことだ。そうすれば自由を得る」


「愛だと? とんだ茶番だ。死ね」


 魔王の言葉に追想が中断された。


 ミントを見た。


 泣きそうな顔をしていた。


(自分の気持ちを伝えられるチャンスは今しか無い)


「ミント、ずっと君のことが好きだった。愛している」


 思い切って言ってしまった。


 こんな状況で大勢の前で、こんなことを言うなんて、本当に死ぬよりも恥ずかしいことだった。


 でも、それで、何か吹っ切れた。


 もう思い残すことは無い。


 愛する者を守るために死ぬだけだ。


 旅人の剣の師匠はこうも言った。


「自分のために戦う者よりも、愛する者のために戦う者の方が数倍強い」


 プラトーは息を吐いた。


 肩の力みが抜けていく。


「あいつをぶち殺せ」


 左から来る。


 足を半歩後ろに引き、ギリギリで剣をかわすと、刀を舞わせた。


 血しぶきが噴水のように吹き出して相手が倒れた。


 プラトーは構え直した。


 まるで自分が池の水面の上に立っているような気がした。


 後ろ、斜め横、迫ってくる敵の様子が池に落ちた小石の波紋のように伝わってくる。


 右、左、そして斜め右。


 自然に身体が動き、相手の刃先をよけ、自分の刀が相手の頸動脈や手首を撫でるように斬ってゆく。


「ゴブオ! 行け!」


「オオオオオオオアアアアア」


 獰猛な叫びを上げて巨大ゴブリンが、先端がバトルアックスになっている長槍を繰り出してきた。


 初見の時は、突然出現した魔物に対する恐怖心で相手の動きをちゃんと見ることができなかった。


 だが、今のプラトーは、不思議なことに恐怖心が消えていた。


 ハルバートが伸びてくる。


 それを刀身で撫でるようにそらした。


(こんなに雑な攻撃だったのか――)


 力任せの単調な直線の攻撃だった。


 円で受ければ攻撃が当たることはない。


 舞うような円の動きで繰り出されるハルバートをいなした。


「ゴブオ! 何をやっている」


 魔王がじれたように言った。


「そうだ女だ。あの女を刺せ」


 魔王がそう指示した。


(えっ!?)


 プラトーの気が乱れた。


 思わずミントの方を振り返った。


「うああ」


 その一瞬のスキに、ハルバートの穂先がプラトーの左肩に刺さった。


「思ったとおりだ。あいつの弱点は女だ。女をいたぶれ。そうすれば、奴は戦いに集中できなくなる」


 魔王が勝ち誇ったように言った。


「分かりやした」


 ミントを捕まえていた男がミントの服を切り裂いた。


「いやあああああああああ」


 ミントの白い肌が露わになった。


「その手をどけろ」


 ミントが胸を隠している手を引き剥がした。


「おお、いい乳をしているじゃないか」


「やめて――」


「そのピンク色の乳首をまずこのナイフで切り落とすとするか」


「いやあ――」


「やめろ!!」


 その時、激痛が右腿に走った。


(しまった)


 腿をハルバードで斬られた。


 アックスが骨まで到達していた。


「これまでだな。お前の女をお前の面前でたっぷりと陵辱してから2人仲良く死なせてやる」


 ミントの乳首にナイフを当てている男が笑いながら言った。


「させるか!!!」


 ミントをつかんでいた男が縦に2つになった。


 その後ろからツーハンドソードを両手持ちしたジョーが姿を現した。


「待たせたな」


 ジョーの後ろから続々と仲間の傭兵たちが出てきた。


「さあ、プラトー、悪い奴らを成敗しようぜ」



アレク爆発までの充填率75%


(100%になると大爆発します)



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