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38 アレクとレイラ(2)


 アレクはレイラを連れてファーザーのところに行った。


「ティムの部屋を見せて下さい」


 レイラはアレクの顔を心配そうに見上げた。


「手がかりは必要だろう。僕がまだ会ったことも無い相手を探すんだから」


 ファーザーは教会の横に建っているホームに案内してくれた。


「ここがティムの寝台です。ティムは猫と一緒に寝ていました」


 アレクは注意深く寝台を調べた。


 猫の毛が落ちていた。


 【鑑定】スキルを使い、ティムと猫の痕跡を鑑定した。そして、その情報をもとに【索敵】モードで狩りの対象として設定した。


 ハンターモードの【索敵】で獲物を探す。


(いたぞ)


 町外れに赤い点が点滅していた。猫も一緒のようだ。


 【追跡】モードの発動だ。


「行くぞ」


「どこに?」


「ティムのところさ」


 アレクはレイラの手を引いて駆け出した。



「この辺りだな」


 アレクたちは町外れの廃屋の前に来ていた。


「ここにティムがいるの?」


「おそらくな」


 すると廃屋の中から猫の鳴き声がした。


「ティム!」


 駆け出して中に飛び込もうとするレイラをアレクは止めた。


「待て」


「どうしたの」


「中にティムがいて、外に出て来られないというのなら、何かあるはずだ。危険だからレイラは外で待っているんだ」


「でも……」


「大丈夫。僕1人でやれるから」


 アレクは廃屋に入った。


 大きな建物だった。昔はここは何かの施設だったのだろう。それが放棄されて、何年も経ち、中はボロボロに朽ちていた。


 【索敵】でとらえた赤い点が近くなる。


(この向こうの部屋だ)


 床板は腐っていて、注意しないと踏み抜いて床下に落ちそうだった。


(ここだ)


 中に入ると少年が倒れていた。


 足の上に朽ちた梁が落ちていてそれに挟まれていた。


「大丈夫か」


 少年が顔を向けた。


「君がティムか?」


「うん。お兄さんは?」


「レイラの友達だ」


「レイラ? レイラお姉ちゃんが来ているの?」


「ああ、そうだ。外で待っている」


 アレクは少年の上の梁を風の力で浮かせ、少年を引きずり出した。


「大丈夫か」


 足をチェックした。骨が砕けてはいないようだった。


「どうしてこんなことになった」


「ミケを探してここに来たんだ」


「どうしてここと分かった」


「ミケとよくここで遊んでいたから」


「それで落ちてきた梁に挟まれたのか?」


「うん」


「これを噛め」


 アレクはリゲイン草を【食料庫】から取り出してティムに渡した。


「これは?」


「いいから噛め。足の痛みが引くし、元気になるぞ」


「分かった」


 ミケがティムに寄ってきた。ティムはミケを抱きしめた。


「どうだ。歩けるか」


「うん、すごい。足の痛みが無くなってきた」


「どうやら骨折はしていなかったようだな」


 アレクの【索敵】に血の塊のような暗赤色の点が点滅した。その暗赤色の点が近づいてくる。


(まずい。魔物が現れた)


「ティム。その猫をしっかりと抱いて、目をつむれ」


「どうしたの」


「いいから言われた通りにしろ」


 廃屋の壁が崩れた。


 魔物が部屋に入ってきた。


 アレクはティムを抱きかかえると、片手を上にかざし屋根を吹き飛ばした。


 そのまま飛躍した。


 外に着地すると、ティムを抱えたままレイラのところに駆けた。


「アレク!」


 ティムを抱えているのを見て、レイラが喜びの表情でアレクを迎えた。


「逃げろ!」


「えっ!?」


「いいから逃げるんだ」


 レイラの笑顔が驚愕した表情に変わった。


 そしてレイラは糸が切れたマリオネットのように倒れた。


(魔物を見て恐怖で気を失ってしまったか)


 アレクはレイラの横にティムを下ろした。


「いいか、レイラのそばで、目を閉じて、耳をふさいでいろ」


「お兄ちゃんはどうするの」


「あれを引きつけて、追っ払う。君はここにいるんだ」


「怖いよ」


「レイラを守るのは君だ。ここを動くな」


「分かったよ」


 クワアアアア


 かん高い鳴き声がした。


 魔物の叫びだ。


 アレクは石を拾うと魔物の方を向いた。


 廃屋から出てきたのはカマキリの化け物だった。


 石を目に向けて投げた。


 そして、レイラたちから離れて横に移動した。


「バカ―」


 試しに挑発してみた。


「人間の分際で何をする」


 魔物は怒ってアレクを追いかけて来た。


 アレクは【索敵】を開いた。魔物は周囲にこの一体だけだった。


 【鑑定】を開いた。


【マンティスロード:カマキリが魔物化したもの。肉食性で人間を捕食する。人間以外でも生き物なら何でも食べるが、死んで動かないものは食べない。前肢が鎌のような刃になっており、接近戦では強い。反面、遠距離攻撃には弱い。大きな目も弱点。食用には向かない】


(なるほど、離れた場所から目を狙えばいいんだな)


 アレクが駆けると、その後を追ってきた。


(この辺までくればいいだろう)


 アレクはスキルを使って魔物を倒すところをレイラたちに見られたくなかった。レイラたちの死角になる場所に移動できたので、立ち止まってマンティスロードの方を向いた。


「人間の言葉を話せるようだな」


「馬鹿にするな。我々魔物の方が人間よりはるかに高等な存在なのだ。お前らの原始的な言葉を話すことなど造作ない」


「そうかい。それでお前も70年ぶりに復活したのか」


「違う。70年前の大戦の生き残りだ」


「なんだ。爺さんなのか」


「ははははは。我々魔物の寿命は長い。人間で言えばまだ青年だ」


「そうなのか。でも、もう終わりだ。ここで死んでもらう。見逃してやると、また子供を食べようとするだろうからな」


「何をいう。1人で、しかも何の武装もしていないのに、どうやってオレを倒す。言っておくが貴様が魔法使いだとしても、詠唱が終わるのを待ってやるほどお人好しではない」


 マンティスロードは鎌のような前肢を振りかざすと迫ってきた。


「思ったより速いな」


 アレクは後ろに飛び去りながら言った。


「だが、終わりだ」


 アレクは手から氷結の矢をマンティスロードの大きな眼球に向けて連射した。


 マンティスロードは避けたり、鎌のような前肢で払ったりしたが、アレクは構わず連射した。


 百本くらい氷結の矢を連射したところでマンティスロードは動かなくなった。


 目には数十本の矢が刺さっていた。


「このままにしておくと騒ぎになるし、お前が腐って変な疫病でも発生したら困るから始末するか」


 ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ


 地獄の炎のような火炎にマンティスロードが包まれた。


 アレクはマンティスロードが原形を留めなくなるまで火炎を出した。


 アレクはレイラとティムのところに戻った。


 ティムは倒れているレイラの横で、目を閉じ、耳の穴に指を突っ込み、その指を振動させながら精霊神に助けを求めていた。


 その肩を軽く叩いた。


「ひいいいい」


 ティムが目を開き、叫んだ。


「僕だよ」


「あっ、お兄ちゃん」


「怖い獣はどこかに行った」


「あれは獣だったの?」


「そうだ。だけど追い払った」


「よかった」


 アレクはレイラを抱き起こすと、リゲイン葉を少しだけ口に差しいれた。


「うーん」


 レイラが目を開いた。


「あの化け物は?」


「化け物はいない。廃屋に潜んでいた獣だ。だけど僕が追い払ったからもう大丈夫だ」


「そ、そうなの……」


 アレクとレイラは、ホームにティムを連れて帰った。ファーザーは涙を流してティムが無事だったことを喜んでくれた。


 屋敷に帰ると、アレクとレイラは執事のアーノルドに呼ばれた。


「君たちは何をしていたんだ。この忙しいさなかに何をしてサボっていたのか?」


 レイラが孤児院の子を探していたと説明した。


「迷子の孤児探しだと。そんなくだらないことをしていたのか。孤児の1人や2人、どうなろうと関係ない。それをこの大事な時期に、お前たちは全く――」


 その後、アレクとレイラはアーノルドにこっぴどく怒られて、説教された。


 やっとアーノルドから開放され、厨房や使用人の居住スペースのある別棟に戻った。


「あいつはクソだな」


 アレクは笑いながら言った。


「ほんと。クソ野郎よ」


 レイラも言った。


「めずらしく意見が一致したな」


「アレク。本当に、何から何までありがとう。それにすごい迷惑までかけてしまって」


「構わないさ。それよりまかないの夕食を作ってあげるよ。何が食べたい?」


「いいの? 私たちで決めても」


「別にいいさ。あのクソ野郎にいちいちお伺いをたてる必要もないさ」


「アレクって真面目人間かと思ったら、意外にやるのね」


「だめかい?」


「うんうん。そういうの好きよ」


「よかった。じゃあ美味いものを作るよ」


「なら、ラウ麺がいい」


「よし」


 そうしてアレクはラウ麺を作って二人で食べた。今度のラウ麺は同じく塩味だが、海鮮系の具材を野菜と炒めた具をのせたものだった。


「おいしい」


「この国は小麦がいい。それにこの塩に、新鮮な魚介類だ。美味しくないわけがない」


 アレクはレイラに笑顔が戻ってよかったと思った。




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