27 空中戦 ワレ撃墜に成功セリ
上空を旋回していたミツメ火炎ガラスが降下して来た。
(まずい)
絶壁の山肌にしがみついている状態だ。横にも縦にも移動できない。
アクレと同じ高さを旋回して、アレクのそばに来る時に火炎を口から吹いた。
片手をかざすと風を出して火炎をちらした。
熱風がアレクの顔を襲うが、黒焦げになるのは避けることができた。
一方、ミツメ火炎ガラスもアレクが山肌の中腹にしがみついているので、飛行できる範囲が限られ、旋回しながら火炎を吹き当てるだけだった。
(一箇所にホバーリングして火炎放射をし続けないで旋回してくれているのが唯一の救いだな)
アレクは両手で下に向けて風を出し、飛び降りようかと思った。
するとミツメ火炎ガラスがあらたに2体飛んできた。
(相手は3体か。困ったな)
飛び降りて降下中は両手で下に向けて全開で風を出して、落下速度を落とさないとならないから空中戦は不利だった。特に3対1なので空中で上下左右から同時に火炎攻撃を受けたら防ぐことができない。
交互に旋回して火炎を吐くミツメ火炎ガラスに手をかざして炎を吹き飛ばして、なんとかしのいだ。
(これではきりがない。ここから動くことができないし、どうしよう)
アレクはミツメ火炎ガラスを鑑定してみた。
事前に聞いていた通り氷結魔法による攻撃に弱いようだった。
(でも、氷結魔法なんて使えないしな……。まてよ、さっき取得した冷凍保存のスキルを使えないか?)
ミツメ火炎ガラスの火炎に向けて冷気を放った。
火炎で焼かれることは防ぐことができた。
だが、火炎を防ぐ盾を使ったのと同じで、攻撃にはならなかった。
(これでは風で火を散らすのと変わらない)
ミツメ火炎ガラスは左右から同時に攻撃してきた。
手を左右にかざし、両手から冷気を出して防いだ。だが体のバランスを失い崖から落ちた。
とっさに風を下に吹き出して落下を防ぎ、もう一度崖にしがみついた。
それを旋回しながらミツメ火炎ガラスは見ていた。
(マズイ! 今のを見られた。今度、3体で同時に攻撃を受けたら防ぎきれない)
コンビネーションのタイミングを調整するかのように、3体のミツメ火炎ガラスは旋回していて、まだ攻撃はしてこない。
(やばい、やばい。なんとかしないと)
アレクは焦った。
(そうだ。水をかけたらどうなるだろう)
アレクは3体同時攻撃が来る前に放水した。
水をかけられるとミツメ火炎ガラスは明らかに嫌がった。
(これだ)
勢いよく放水すると、ミツメ火炎ガラスは距離を置くようになった。
だが、水をかけても魔物のカラスを倒すことはできない。所詮は時間稼ぎにすぎない。
(まてよ。水、冷凍保存、風を組み合わせたらどうなるだろう。というより、3つのスキルの同時使用はできるのだろうか)
試しに右手を伸ばして、同時に3つを念じた。
すると小さい氷の塊が掌から飛んで行った。
(これだ!)
アレクは細く放水した水が矢のように凍るのをイメージした。そして風を最大瞬速で放射した。
氷の矢が高速で射出された。
(やった!)
アレクの手から次々と氷の矢が連射された。
(よし、こい!)
アレクは旋回しているミツメ火炎ガラスに手を向けた。
氷の矢はミツメ火炎ガラスを襲う。
ミツメ火炎ガラスはそれを避けようとして高度を上げた。それを追いかけて氷結の矢を連射する。
矢がターゲットを捉えた。
ミツメ火炎ガラスの黒い羽が飛び散る。
アレクはさらに集中してより硬く鋭く氷の矢を射出した。
ミツメ火炎ガラスの胴体に矢が刺さり、墜落してゆく。
横から熱風が来る。
アレクは飛び降りて火をかわした。
そして火炎放射したミツメ火炎ガラスに片手をかざし氷の矢を打ち込んでいく。接近しているので、全部命中し、しかも体を突き抜けてゆく。
2体目のミツメ火炎ガラスも撃墜した。
アレクは両手を下にして風を噴射して、空中で止まった。
(もう一体はどこにいる)
索敵を発動した。
(真上だ)
アレクは両手を上にかざした。
体は落下している。
落下しながら上にいるミツメ火炎ガラスに氷結の矢を掃射した。
みるみるうちにミツメ火炎ガラスの翼がボロボロになる。
アレクはすごい速度で落下し続けた。
最後のミツメ火炎ガラスを殺ったのを確認すると、両手を下に向けた。
地面が近くなってきていた。
全力で風を噴射した。
それでも体は強く地面に叩きつけられた。
衝撃で息ができなかった。
地面を転がるようにして、ダメージをこらえた。
アレクは【食料庫】からリゲインを取り出すと口に入れて噛んだ。骨折や内臓の破裂までは治せないだろうが、打撲程度ならこれでなんとかなるはずだった。
少しずつ痛みが引いてきた。
手にしたリゲインを全部口に入れて噛んで飲み込んだ。
体の感覚が戻ってきた。
骨や内蔵は大丈夫だったようだ。
アレクは立ち上がると、町に戻った。
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