26 新スキル発動
アレクには勝算があった。デューサイルの話では山頂からロープを下ろして、ロープ伝いに東壁に張り付くようにして、中腹に生えているバラデロ草を採取しようとしてミツメ火炎ガラスに見つかったという。そのやり方では見つかる可能性が高い。
だが、アレクは風のスキルを使い、直接東壁をジャンプするようにして垂直上昇して、さらにスキルでバラデロ草をサーチして見つけ、採取したら、即下山する計画を立てた。
これならミツメ火炎ガラスに見つかる可能性は低い。
それに薬草さえ採取できれば、山頂から飛び降りて、風を噴射して落下速度を殺して、そのまま地表に着地すればいい。地表に戻れば、空中からの攻撃をかわして、隠れる場所もあるだろうと思った。
風の噴射をマックスにして、東壁を飛び石を飛んで池を渡るように、崖の岩に足をかけては上にジャンプして行った。
索敵モードで魔物を探索した。
(今のところ、魔物は近くにいない)
索敵モードの視野に緑色に点滅する点が見えてきた。
(あれだな)
アレクはその緑の点のそばに飛んだ。ターゲットのそばに着くと岸壁のくぼみに足をかけて体を固定した。
緑色に光る植物を鑑定した。
【バラデロ草 筋肉や消化器を弛緩させる奇病を治癒する効果がある。ただし、摘むとだだちに劣化して枯れて腐ってしまう。枯れると治癒効果はゼロになる。ただし採取前に冷凍してから摘むことで腐敗を避けることができる】
(後半に書いてあることは何だ? そう言えばギルド長もバラデロ草は枯れやすいと言っていたな)
ミツメ火炎ガラスに見つかる前に、とにかく薬草を採取しようと思い、アレクはバラデロ草に手をかけた。
(腐りやすいものでも、僕の【食料庫】に入れれば平気だろう)
バラデロ草を抜いた。
(思ったより簡単だったな)
ところが【食料庫】に入れる前にアレクの手の中でバラデロ草はみるみるうちに茶色くなり、しぼんでしまった。
(まずい)
アレクは鑑定をしてみた。
【腐ったバラデロ草 治癒効果なし】
(えええっ。もう使えなくなるのか)
アレクはもう一度別のバラデロ草を摘み、すぐに【食料庫】に入れた。だが、だめだった。食料庫の中で枯れてしまった。
(どうしよう)
すると、その時、頭の中でファンファーレのような音楽が鳴った。
「人助けの経験を積んだので、新たなスキルを取得しました」
暗黒の森で餓死しかけた時にスキルが発動した時と同じ声だった。
「スキル『冷凍保存』を取得しました」
(冷凍保存だと?)
アレクは他のスキルを得た時のことを思い出してみた。
(心で念じて、手をかざすとこれまでのスキルは発動した。これも同じかな)
アレクはそばの岩に向かい手を向けた。
「冷凍保存!」
すると冷気がアレクの手から出て岩が凍って白くなった。
(すごい! ものを凍らせることができるのか)
アレクは、バラデロ草に向いた。
手をかざした。
冷気をあてた。
バラデロ草は真っ白になり凍った。
慎重にそれを摘むと、【食料庫】に入れた。
おそるおそる鑑定してみた。
(やった! 大丈夫だ。枯れていない)
アレクは安堵した。
これでサラの命を救うことができる。
頬に風があたった。
嫌な予感がした。
索敵を開くと禍々しい血痕のような赤い点が急速にアレクの方に接近してくる。
(まずい! ミツメ火炎ガラスに見つかった)
アレクは肉を捌くための狩猟用のナイフしか武器を持っていなかった。
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