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23 冒険者ギルト長との料理対決


「ですから、冒険者でも無い方にクエストの内容をお教えすることはできません」


「別にクエストをしようというつもりじゃない。ただバラデロ草について教えてもらいたいだけだ」


「でもバラデロ草採取はS級のクエストとしてこのギルドにも依頼が来ている案件です。そんなクエストの内容を軽々しく部外者に教えることはできません」


「だからクエストをするんじゃなくて情報を知りたいだけなんだってば」


「どうした」


 右目に黒い眼帯をし、濃い口ひげをはやした大柄な男が奥から出てきた。


「何かもめごとか?」


「これはギルド長様」


 受付の女の子がかしこまった。


「僕は薬草のことを教えて欲しいだけです。別に冒険者のクエストをこなそうというつもりはありません」


「まて、まて、順を追って話せ」


 アレクは、バラデロ草のこと調べたら、冒険者ギルドに訊けば一番早いと教えられて来たこと、情報を知りたいだけだということを説明した。


「それを聞いてどうする」


「それを言う必要がありますか」


「まあ、お前が勝手に何をしようが自由だ。だが一応ギルドのクエストとなると部外者には話せないな」


「なら冒険者になればどうですか」


「まずはFランクからのスタートだ。Fランクの冒険者にS級のクエストの内容は話せない」


 アレクはふと思いついた。


「じゃあ、ギルド長さんのおかかえ料理人ならどうですか? 食事中になされた業務の話を、料理の盛り付けをしながら聞いてしまうこともありますよね」


「うーん。まあ、俺のお抱え料理人なら、まあ身内も同然ということになるから、クエストの情報くらいなら小耳にはさんでもいいかな」


 アレクはそれを聞いてにやりと笑った。


「だが、残念だな。お前は俺の料理人ではない。さあ、帰れ!」


「待って下さい。僕は料理人のスキル持ちです。それに料理人ギルドの会員です」


 アレクはそう言うとギルドの金色に輝く会員証をかざした。


「なんだと! スキル持ちで、ギルドの会員だと!」


 ギルド長はしげしげと会員証を眺めた。


「ひとつ勝負をしませんか」


「勝負だと?」


「僕がこれからギルド長さんのお昼ご飯を作り、ギルド長さんに『うまい』と言わせたら僕の勝ち、『うまい』と言ってももらえなかったらギルド長さんの勝ちというのはどうでしょう」


「ははははは。それなら結果は決まっている」


「僕が勝ったら、ギルド長さんの料理人ということで情報を教えてもらえますね」


「よかろう」


 アレクはギルド長に鑑定スキルを発動させた。


【ウェーイー 冒険者ギルド・イブレスカ支部長 スキル:鋼鉄剣士 帝国中部地方出身者で帝国軍人から冒険者になる。肉と炭水化物が大好き。大食漢】


(なるほど、帝国軍出身の人で、肉と炭水化物が大好きなんだな。よし、じゃあ、メニューはあれだ!)


「では厨房に案内する。やってもどうせ無駄だと思うが、せいぜい健闘したまえ」


 ウェーイーは豪快に笑った。


 アレクは厨房に案内されると食材をチェックした。


(よし、牛肉、じゃがいも、ニンニク、米、全部揃っている)


 まず大きな牛肉の塊をまな板に置いた。解体スキルで脂と赤身に分けた。


 赤身の塊は、ギルドの入会試験で出た『至高のステーキ』にした。


(帝国出身で肉好きなら『至高のステーキ』が嫌いなわけはない)


 もちろんギルドの厨房のコンロも微妙な火加減はできない旧式のものだった。そこで火炎のスキルで丁寧に火入れをして、外はカリッとして中はしっとりとしたミディアムレアの焼き加減にした。


 次に大量の牛脂を火にかけて油をとった。その油でじゃがいもを揚げた。


 最後に牛脂の油かすと揚げニンニクを細かく包丁でたたき、それでガーリックライスを作った。


 アレクは『至高のステーキ』と牛脂で揚げたフライドポテト、そして油かすをまぜたガーリックライスを山盛りにして、ウェーイーの待つ食卓に行った。


「ギルド長。できました」


 牛の油の甘い香りと焦げたニンニクの香ばしいにおいが部屋に広がった。


 ギルド長のウェーイーが鼻をひくひくさせながら、至高のステーキを睨んでいた。


「どうぞ」


 皿を置くや、ウェーイーは切り分けた肉にフォークを突き立てて口に放り込んだ。


 そして、次に揚げたてのじゃがいもを口にした。


 また、肉。


 今度はガーリックライス。

 

 ギルド長の手と口は止まらなかった。


 あっという間にステーキをひと皿平らげた。


「おかわりをお持ちしますか?」


「あるのか」


「もちろんです」


「頼む」


 それからウェーイーは「うまい」「うまい」を連発しながら食べた。ステーキだけでなく、ガーリックライスも3回もおかわりをした。


「ふう」


 ウェーイーは口の周りについた牛の脂をナプキンで拭くと、ズボンのベルトを緩めながら、満足げな吐息をもらした。


「いかがでしたか」


「いやうまかった。ワシの完敗じゃ。だが大満足だ。まさかこの国で、あの至高のステーキを食えるとは思わなかった。いや、本家よりも美味かった。それにポテトとライスじゃ。ステーキと実によく合う」


「同じ牛の脂で揚げましたから。それにニンニクとスパイスを効かせてます」


「うむ」


 ウェーイーは分かっているという風に大きく頷いた。


「では、コックとして採用していただけますか」


「もちろんだ」


「これでもう身内も同然ですね」


 アレクが笑って言った。




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