17 イブレスカに到着する
「ようこそ、ここは国境の町、イブレスカ!」
町の入口のゲートの横のとまり木にとまっている派手な色の鳥が喋った。
「と、鳥が喋った。まさか、魔物か」
思わずアレクは独り言を叫んでしまった。
「ハハハハハ。あんちゃん、どこの田舎から来た」
ゲートの横でタバコを吸っていた日焼けした老人が笑い顔で言った。
「それは……」
「この国は初めてか?」
「はい」
「あれはオウムという鳥だ。魔物じゃない。訓練すると人間が教えたとおりに言葉を発するんだ」
「そうですか」
「今日来たばかりかい?」
「ええ」
「それなら、あそこに案内所があるから、いろいろ訊きたいならあそこに行けばいい。料金は取られないから安心しろ」
老人は『無料案内所』というピンク色の看板がある小屋を指し示した。
「ご親切にありがとうございます」
アレクは山を駆け下りた後、迂回した渓谷の反対側にある町に来ていた。山を越えないで入国できるルートの先にあり、アメリア共和国に入国して最初に出くわす町だ。
「すみません」
アレクは無料案内所の人に声をかけた。
「今日、初めて入国しました。なにも分からないなら、ここで話を聞いたらよいと教えてもらいました」
「そうですか。よくいらっしゃいました」
「それで、まず――」
「ここは話をすることができる店を紹介しています。お店に入店するのは有料になりますがよろしいでしょうか」
案内の人は、アレクの言葉を遮るように早口で言った。
(ここは情報を得ることのできる店を紹介する所なのか……)
確かに看板を見ると「無料案内所」とだけあり、無料でこの国の情報を教えてくれるとは書いていない。
「いくらくらいですか」
回答は安宿一泊分くらいの値段だった。
(やっぱり情報料は安くないな。どうしよう)
迷うアレクを見て案内所の人は続けて言った。
「今なら2割引にします。しかも2時間です」
「えっ、2時間も話ができるんですか」
「はい」
(2時間も話ができて、しかも2割引きなら、安いんじゃないか)
「分かりました。お願いします」
「はい! こちらのお兄さん、ご案内!」
裏に声をかけた。
「じゃあ、案内するよ」
裏から少年が出てきた。
アレクはその少年の後をついて行った。
案内してくれた店は、ケバケバしい装飾がなされた店だった。看板には『グランドキャバレー・青い百合』とあった。
「これがそうなの?」
「ああ」
「話を聞けるんだよね」
「そう、話ができる店だよ。でも、おさわりは無しだからね」
「おさわり?」
「大丈夫だって、『案内所』の紹介の店だからぼったくったりしないよ。良心的な優良店だ」
「僕は話がしたいだけだ」
「だから話をする店だよ。女の子と2時間も話せる」
(女の子? この国の情報屋は女子が多いのか?)
「どうするの? 入るの入らないの?」
すると中から体格のよい黒い服を来た男が出てきた。
「おお、ジェシー、お客さんか?」
「ああ、案内所の客だ」
「どうぞ、こちらへ」
アレクはその黒い服の男に押し込まれるようにして店に入った。
「ご指名はありますか?」
「指名? それは何ですか」
「指名はなしということですね」
よくわからないがアレクは頷いた。
「はい、新規のお客様、6卓にご案内!」
中で給仕の青年がアレクを案内した。
「こちらです。ご指名が無いということなので、今空いている子が付きますからお待ちください」
店の中は薄暗くて、椅子とテーブルが何組も置いてある。奥には舞台のようなものもあった。
すぐに栗色の長い髪の女性が来た。スカイブルーのドレスを着ていたて華やかな雰囲気をしていた。
「イザベルといいます」
そう言うとアレクの隣に座った。
(いったいこの店は何なんだ?!)
アレクは何がどうなっているのか全く分からなかった。
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