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ハズレスキル【究極の料理人】を引き公爵家を追放されたが、それは最強スキルだった。  作者: サエキ タケヒコ
第11章 大戦後ーそれぞれの思いー
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171 エピローグ



「外で遊んでくるね」


 ミカエルとマリアはそう言って店から駆け出して行った。


 アレクは、それを見送りながら、ディナータイムの料理の仕込みを始めた。


 牛肉の筋を切り、下茹でして、次の工程の準備に取り掛かったときに【索敵】に赤黒い斑点が点滅した。


(はぐれ魔物か!)


 点滅している場所の近くにはライザとの間に生まれた双子のミカエルとマリアがいた。


 アレクは店を飛び出すと翼を広げた。


 すぐに子供たちの姿が見えた。


 キラーアントが3体いた。子供たちを襲おうとしてるところだった。


 氷結の矢を撃とうとしたところ、それより早く手前のキラーアントが爆発した。


 黒い影がミカエルの前に立ちはだかると、キラーアントの四肢をバラバラに斬った。


 残ったキラーアントが逃げようとすると上空から魔弾が落雷のように落ちて、キラーアントは灰になった。


 アレクは子供たちの手前で着地すると、様子をみた。


「匕ヒヒヒ。いい爆発だった」


 車椅子の男が笑いながら出てきた。


 全身黒ずくめの服で片目には黒い眼帯をしている男が剣をしまった。


 上空から片手が金属のフックになっている義手をした男が降りてきた。


 爆弾ピエロとキルゾとフック船長だった。


「子供たち、大丈夫だったか」


「うん」


「怪我はないか」


「ええ、平気よ」


 アレクは3人のところに行った。


「子供たちの父です。子供たちが危ないところを助けていただきありがとうございました」


「なあにどってことない」


「お名前を聞かせていただけますか」


「俺達は『名も無き者』という冒険者パーティだ」


「お礼をしたいのですが」


「そんなものいらん。はぐれ魔物や盗賊から子どもたちを守るのが俺達のミッションだ」


「実は私は小さなレストランをやってます。せめてお礼に食事を提供させていただけないでしょうか」


「ちょうど腹が減っていたところだ。そういうことならご馳走になろう。おい、お前たちもいいな」


 フック船長がキルゾたちに言った。


「いいですよ」


 アレクは子供たちを連れて店に3人を案内した。


「あなた。どうしたの」


 ライザが心配そうに出てきた。


「子供たちがはぐれ魔物に襲われそうになった。それをこの3人の方が助けてくださったのだ」


「まあ、それは本当にありがとうございます」


 3人はライザの顔を見て驚いた顔をした。


「「「ライザ!」」」


「なんのことでしょう?」


「ライザじゃないのか?」


「私はライラです」


「そうか……」


「せっかくですから、おかけになって下さい。すぐに料理を作ります」


 アレクはそう言うと厨房に入った。


 まず、爆弾ピエロの母親のレシピのホットケーキを焼き、シロップをたくさんかけた。そして海賊焼きを作り、さらにナッツや砂糖を固めたクッキーのような保存食を作った。


「お待たせしました」


 爆弾ピエロにホットケーキを出した。


「思い切り、甘くしました」


 フック船長には海賊焼きを出した。


「リゲロは入っていませんから安心して下さい」


 キルゾの前には保存食を出した。


「あなたは毒殺を恐れて自分で作ったこういうものしか食べませんでしたよね」


 3人は驚いた顔をしてアレクをみつめた。


「お前、まさか、アレク、アレクなのか」


「その料理を食べてみて下さい。それが答えです」


 爆弾ピエロがホットケーキを一切れ口に入れた。


「ママンのホットケーキだ」


 キルゾが保存食をかじった。


「俺が持ち歩いていたものと同じ味だ」


 フック船長が大笑いした。


「そうか。そうか。そういうことか。2人とも生きていたんだな」


「そういうことです」


「これはめでたい。アレク、酒はあるか」


「もちろん、うちはレストランですからいいワインとエールは欠かしません」


「じゃあ、乾杯だ」


「いいですね」


 アレクはライザに今日は臨時休業するから、店の入口を閉めるように言った。


「あと、子供たちのことを頼む。実はこの3人は古くからの知り合いなんだ」


「分かったわ」


 ライザが子どもたちを連れて奥の住居スペースに消えた。


「まさか。こうして再会できるとはな」


 アレクは3人と乾杯した。


 フック船長はあれから、キルゾのいる階層までなんとかたどり着き、そこでアサシンスライムを食べ、少しだけ魔力を回復すると、2人で広間のあった下の階層に行き、気絶していた爆弾ピエロを回収して、残った魔力をすべて使い天空の魔王城から飛行魔法で脱出し、その後、冒険者になって放浪しているのだと語った。


「どうして司令部に戻らなかったのですか。魔王は討伐したのですから、報奨金をもらえるし、その体を元通りにしてもらえたんじゃないですか」


「お前と同じだよ。静かに自由に生きたいのさ。それにこれまで海賊として迷惑をかけてきたことへの贖罪の気持ちもある」


「そうですか……」


 そのあと、日が暮れるまで楽しく語り合った。


 夕方になると3人は出発すると言った。


「泊まっていってもいいですよ」


「いや。それには及ばない」


 爆弾ピエロの車椅子をキルゾが押し、そのあとをフック船長が歩いて行った。


「元気でな」


「ああ、お前もな」


 彼らは去って行った。




♦♦♦♦♦♦♦♦ ミカエル視点



「ねぇ、パパ、あのおじさんたちはパパのお友達?」


 ミカエルが訊いた。


「そうだよ」


「あのおじさんが、パパは世界一強いって言っていたよ」


「そんなことないさ」


 父はいつものようにはぐらかした。


「でも、あの魔物を一撃で倒したおじさんが、パパにだけはかなわないって」


「それはきっと冗談だよ」


 だが、ミカエルは父が本当のことを言っていないと思った。


(僕も、大きくなったらパパのような世界一強い料理人になるんだ)


「ミカエル、何を考えているの?」


 マリアが訊いた。


「秘密だよ」


 ミカエルは家を抜け出した。


(本当はあのおじさんたちがいなくても、あの程度の魔物なら僕一人でやっつけることができたのに)


 ミカエルはいつもの森の練習場所に着いた。


 手から火炎弾を射出すると岩に当てた。


 そのあと、森林火災が起きないように手から放水した。


 暗闇から赤い目が光った。


 素早く風を起こすとミカエルは空中に舞った。


 そして、氷の槍を、猫系の魔物に突き刺した。


 ミカエルはそのまま月に向かい夜空を飛び続けた。


(いつか、パパを超える料理人になってみせるぞ)


 そう月に誓うのであった。

 


 ここまでご愛読をありがとうございました。


 これでアレクの物語は終わりです。


 このあと、大統領からのホットラインで、アレクが昔の仲間とまた世界の危機を回避するために力をあわせたり、アレクの血を受け継いだミカエルが冒険者として活躍したり、ライザの生き写しのマリアが不思議な冒険をしたりするのですが、それはまた別のお話。


40万字超えの長編になりましたが、書いていて楽しいお話でした。


 なお、『ハズレジョブ【治安部隊員】になった天才暗殺者』の新連載を始めました。

 最強の暗殺者になるために育てられた孤児が成人しますが、初ミッションをこなすまえに依頼主である国王が殺されて、国王勅命の秘密組織であった暗殺者集団は解散することになり、育ての親である暗殺者たちは、自分たちの最高傑作である生ける最強兵器である青年に、普通の人生を歩み幸せになれと告げます。

 暗殺術しか知らない青年は、育ての親である暗殺者たちの言いつけどおりに隣国の王都をめざしハズレの仕事と馬鹿にされている治安部隊の隊員になり活躍するお話です。


 ぜひこちらの作品もよろしくお願いいたします!



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 作者の励みとなり、次の作品作りへのモチベーションに繋がります。



 ありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 結構楽しく読ませていただきました。 有難うございました。
[良い点] 海賊3人組が生きてて本当に良かった! [一言] ミカエルとマリアの物語も凄く気になる!
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