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ハズレスキル【究極の料理人】を引き公爵家を追放されたが、それは最強スキルだった。  作者: サエキ タケヒコ
第1章 出立(王国と帝国)
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16 新世界へいざ出立



 ドンドンドン。


 激しくドアが叩かれた。


「そこにいるのだろう! 開けろ」


 ライザの声だった。


(いったい何だ)


 アレクは驚いて索敵を使った。


 部屋の前には5人いる。それだけではない。廊下、階段、そして宿の周りが包囲されている。


(どういういうことだ)


 わけが分からないが、このまま捕まればマズイことになることだけは明白だった。


 アレクはさっきバルダシムの家から戻ってきたばかりだ。


 料理人ギルドの入会審査に通り、晴れてギルド会員になったことへのお祝いだった。


 ジャンが一番喜んでくれて、新作料理をふるまってくれた。ジャスミンさんもお祝いに駆け付けてくれた。


 本当に楽しい時間だった。


 それがわずか1時間も経っていないというのに、犯罪者のように特務調査隊に囲まれていた。


 ギルドの会員証をアレクは大事に懐にしまった。


(どうやって逃げよう)


 索敵で調べても完全に包囲されていて逃げ道はないようだった。


 ドアがバリバリと音を立てて裂かれてゆく。


(あの女隊長、どんだけ無茶するつもりだよ)


 逃げ道は窓しか無かった。


 だがこの部屋は最上階の5階だった。普通は5階から飛び降りたらただじゃすまいない。命が助かればいい方だ。


 ドアが破られた。


 剣を片手に恐ろしい顔をしたライザが入ってきた。


(あんなに怒った顔をしなければ、長い銀髪に碧眼の目をしていて可愛いのに……。やっぱり窓から逃げるしかないか)


「貴様、嘘をついていたな」


 アレクは窓枠に手をかけた。


「待て!」


 ライザの叫び声を無視して飛び降りた。


(やれるはずだ)


 アレクは手を下に向けて風を起こした。


 風力を全開にした。


 迫りくるはずの地面が止まって見えた。


(やった浮いている!)


 アレクはそのまま慎重に地上に下りた。


「対象者は下に下りたぞ、捕まえろ!」


 ライザが窓から身を乗り出して叫んだ。


「捕まるか」


 アレクはハンターモードで駆けた。


 前に隊員たちが剣や槍で垣根を作った。


「えい!!!」


 風を噴射して、体を浮かせた。


 アレクは通せんぼをする兵士たちの上を飛び越えた。


 そして向こう側に着地すると、風を推進力に使い全力で駆けた。


「追え!」


「待て!」


 後ろからそんな声がしたが、その声もすぐに聞こえなくなった。



 それから数日間、アレクは人里から離れた野や山や森伝いに帝国を横断した。


 そしてアメリア共和国の国境近くに来た。


 サマール帝国とアメリア共和国の間には険しい山脈がある。ちょうど中央部分には渓谷のような狭い谷があり、そこを経由すれば、山を越えなくてもアメリア共和国に渡れた。だが、国境付近には巨大な壁と要塞が築かれていて出国と入国を見張っていた。


 アレクはその要塞の出国ゲートに近づいた。


 帝国特務調査隊の制服を着た隊員の姿が見えた。


 ライザと一緒にいて、アレクが作った料理をうまいうまいと食べてくれたハルト副隊長の姿があった。


(まずい。奴には面が割れている)


 アレクは顔を隠して元きた道を引き返した。


(どうする。中央の渓谷を通れないとなると、あの山を越えなくてはならない)


 アレクは山を眺めた。


(ここもスキルの力でやってみるか)


 アレクは山辺の道を下り、人気の無いところに行くと、両手から風を噴射した。そして、山を登った。さすがに風を出して飛んで、そのまま高い山々を飛び越えることはできない。だが、少しずつジャンプするようにして、登ってゆくことはできた。

 

 1日ががりで、アレクはついに山頂に着いた。


「これがアメリア共和国!」


 眼下には肥沃な緑に輝く平野が果てしなく広がっていた。


 そしてその先には、青く輝くものがあった。


(あれが海なのか)


 生まれ育った国には海が無く、まだ海というものを見たことがなかった。


 アレクの背中を押すように風が吹いてきた。


 その風に乗り、斜面を飛ぶように走り下りた。


(ここで新しい生活を始めるぞ)


 太陽が溶け込み輝く海はアレクに希望の光を与えてくれた。



 第1章はこれで完結です。


 


【作者からのお願い】


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