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「ご飯も美味しかったし今日も良かったわー、さすがアミちゃん」
ベットの上で何戦か交えた後、満足そうに男は言う。
痩身痩躯、でも筋肉はあるほうだろう、背は180くらいはある事をこの間教えてもらった。曰く、俺足が長すぎて学生の時机と椅子に苦労したよ、なんていうくらいには足が長く、黒い髪の毛は相変わらず少し長い、今は少し汗ばんでおり、耳には赤いピアス、目は大きく鼻筋が通っている。
ちくしょう、カッコいいな遺伝子大勝利だなコイツと思いながら、でしょー?、なんて嘯く。
「顔はそこまでだけど身体は本当にいいよね。相性も含めて」
「ほんと余計だわその一言」
ムカつきすぎて裸のまま背中にのし掛かって抗議する。当の男は重い、なんていいながら意に返さず枕に顎を乗せている。
相変わらず酷い男だ。
いきなりほぼアポ無しで家に来て手土産なしに飯食ってベットで戦を始めるような酷い男を家に招いて飯を食わせているのは自分だから文句を言うのは間違っているがなんだか釈然としない。
表札には【森下 亜澄】と書いてあるし、名前も教えているのに頑なにオレンジで知り合った時の名前で呼び続けるこの男の名前を私は知らない。
なのでオレンジで名乗った名前、ハヤトと呼んでいる。せめて下の名前くらいは教えてほしいもんだ、と思いながらいつもと同じ答えが返ってくるとわかりつつもある質問をする。
「次はいつ会えるの?」
「俺の下半身と仕事次第。人間は無力なの」
この男の人間的価値とゴミ箱に捨てられた白濁の欲望の入ったゴム、どちらが価値ある存在なのだろうといつも真剣に考えてしまうのである。
まあそんな男と次会えるのはいつだろう、と心待ちにしてしまう私はそれ以下の存在である事は間違いがない事は確かである。