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後編

 放課後、水果はふとくつ箱の前で足を止めた。

 辺りを見回す。

 最近は待ち合わせせずとも奏介と遭遇していたので、微妙な違和感が。

「まぁ、菅谷にも色々あるだろうし、ね」

 連続で会っていたせいか、少しの寂しさがある。

 靴を履き替え、歩き出そうとした時である。

「椿」

「!」

 振り返ると、奏介が立っていた。

「あ……あぁ、また会ったね」

 奏介は少し不思議そうな顔をする。

「何か良いことでもあった? 嬉しそうだけど」

 顔に出ているらしい。

「いやまぁ。最近菅谷と一緒に帰ってたからさ。今日は寂しいと思ってたところだったんだ」

 誤魔化しても仕方ないので素直に言う。

「ああ、ていうか俺も、椿が帰ろうとしてるの見かけて慌てて声かけたから一緒だな」

「そうなのかい?」

 その流れでいつものように一緒に帰ることにした。

「そういえば、菅谷と詩音が第一志望に受かれば、また三人同じ学校だね」

「あぁ、確かに」

「針ケ谷は短大希望だっけ」

「ああ、いや。俺達と同じところにしたらしい」

「へぇ、そうなのかい。あの三人も地元を離れるわけじゃ無さそうだし、 頻繁に集まれるかもしれないね」

 奏介は苦笑を浮かべる。

「いや、まだ試験前だし」

「あ、悪いね。やっぱりわたしだけ意識が別のところへ行ってるみたいだ」

「いや、良いけど。……そうなると良いな」

「ほんとにね」

 


 大学入学共通テスト(旧センター試験)の前日のこと、三年生は自由登校になっているが、水果は用事があって登校していた。

 帰りに靴箱で靴を履き替えながら、辺りを見回す。

 今日は絶対にいない。奏介が現れることはないだろう。

 そう思うと、やはり少し寂しくなった。試験が終われば詩音や女子メンバーと帰宅することが多くなるだろう。奏介も真崎がいるし、七人でわいわいするのは好きだが、二人で帰るという状況は二度とないかもしれない。

「……皆、頑張るんだよ?」

 共有は出来ない。祈るしかないだろう。



 後日。

 いつものメンバーで集まったのは駅近くのファミレスだった。

 たった今乾杯したわけだが、

「奇跡だね! 皆志望通りの大学にいけるなんて」

「奇跡?」

 水果が苦笑気味に聞くと、詩音は力強く頷いた。

「主にわたしね」

「いや、詩音よりあたしが危なかったわよ」

 わかばが青い顔でいう。

「まあまあ、今日は憂いなくお祝いできるんだし」

 ヒナが言うと、モモも頷く。

「そうね」

「まじでもうすぐ卒業か。このメンバーは長い付き合いになりそうだよな」

「うんうん、ボクもそう思う」

「いいんじゃない? このメンバー落ち着くし。てか、早く乾杯のあいさつでもしなさいよ。菅谷」

「ん? なんで俺が?」

「なんか、あんたがリーダーみたいなとこあるでしょ?」

「いや、ないよ」

「リーダーかはともかく、菅谷に一言ほしいところだね」

 水果もわかばに加勢することにした。

 期待の眼差しをむけられ、奏介はため息を一つ。

「じゃあ、そうだな。皆受験お疲れ。卒業まで、またよろしく」

 そこでドリンクバーで乾杯した。

 グラスを鳴らしながら、水果は奏介の横顔を見る。

 もう二人で話すこともないだろう。やはり、少しだけ寂しいと思った。




 卒業式前日。

 用事があって登校していた水果は昼過ぎ頃、帰宅するために靴箱へとやって来た。靴を履き替え、辺りを見回す。

 明日でこの学校を去る。皆と一緒なので寂しいとは思わないが、やはり思い出の場所であり、小学校や中学校より断然楽しかった。

 そして中心にいた彼を見ているのは退屈しなかった。

(菅谷には詩音がいるし、なんならわかばやヒナやモモもいるし)

 水果はふっと笑って、歩き出した。

(学校は同じだしね)

 と、声をかけられた。

「偶然だな、椿」

「す、菅谷?」

 驚き過ぎて目の前がぱちぱちした。ぼんやりしていたせいで、この予想外の登場は中々に驚いた。

「いや、何その驚き方」

「ああ、ごめん。もう会えないと思ってたからさ」

「……え? 明日打ち上げするし、大学同じだよね」

「あー……。そうだったね」

 二人ではもう会えない。そういう意味だったのだが。

「でも、俺もこうやって椿と二人でゆっくり話すことはないかもって思ってたんだ」

「! そ、そうなのかい?」

「いや、椿に愚痴を聞いてもらうとすっきりしてたから」

 水果はぽかんとした後、苦笑を浮かべた。

「なるほど。じゃあ、今日で最後だね」

「ああ、明日からは」

「でも、わたしは菅谷とこうして話すのが好きだから、最後にはしたくないね。今、思ったよ」

「ん?」

「わたしは思った以上に菅谷が好きなのかもしれない」

「……それ、告白にならないか?」

「かもね。どう受け取るかは菅谷に任せるよ」

「いやいや、あっさりし過ぎじゃない?」

「ふふ。そうかい?」

 奏介は少し照れているようだ。自分も赤面していることに気づいた。

「でも、俺も、椿と二人で話すのを今日で最後にするのは嫌だな」

 水果は奏介の横顔から視線をそらし、

「ああ、うれしいよ」

 並んで歩く彼の肩に少しだけ体を寄せた。


ラブコメ……? 彼女の性格なんです。あと、上手く書けなくてすみません(笑


企画が終わったら続編募集とかするかもです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] これは仕方ない!この人と恋愛させるのは難しい!でも1番いいとこに落とし込んでるとおもいます!
[一言] 不器用な二人ですなぁw
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